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100本以上ゲームを遊んだJiniが選ぶ、2023年のゲームランキングTop10

2023年は21世紀のゲーム史においても2004年、2007年、2017年に匹敵する豊作の一年であったことは記憶に新しい。数々の話題作が発売され、一本がソーシャルメディアでバズっては、また別のゲームがその話題を塗り替え、そして忘れられていくサイクルを何度も目にした。

そうした一年の中で、私はのべ100本以上のゲームをプレイした。そしてこれほど遊んでいると、その中には言葉に窮する平凡な作品も多々あったのだが、ごく一部、こうした「バズ」の如何に関わらず、純粋に今も記憶に留まるゲーム、それどころか今も思い返しては遊ぶ名作も出会った。そういう作品に出会う瞬間、私は心底ゲームが好きで仕方ないのだと自覚する。

基本的に、私は普段ランキングや数値の評価は好まない。だが、2023年の最高傑作を振りかえる本稿に限れば、例年通り、私のエゴをありったけぶつけて、私が素晴らしい、美しい、好ましいと思うものを、狂気的な熱狂と持ちうる理論で述べた。それゆえ、(仮に同じような作品だったとしても)この1万字を超える選評まで、他の同じような企画には負けない情熱と理屈があると考えている。

そんなわけで、本稿を通じて2023年遊び損ねた名作を発見したり、一度遊んだ名作を再発見するのに、少しでも役立てていただけると幸いである。


10位:Last Train Home

「重荷が重ければ重いほど、われわれの人生は地面に近くなり、いっそう現実的となり、より真実味を帯びてくる」

既に筆者が何度か記事で述べてきたように、紛争にかんして、ビデオゲームはどのアートよりも鈍感かつ搾取的であった。

特にシュータージャンルにおいて、無痛のまま効率的にアドレナリンを放出し、ミリタリー的なフェティッシュのみを収奪する都合のいいテーマとして、紛争は描かれてきた。その結果、ますます紛争やその当事者に対する偏見を深め──それどころか、むしろ既存の偏見や陰謀に乗じる形で利益を追及した疑いすら、昨今の作品にはある。

しかし、ビデオゲームでありながら紛争に関して(比較的)真摯に向き合ってきたジャンルが存在する。それはストラテジーゲーム、あるいはSRPGと呼ばれるジャンルだ。日本では1990年代からヒロイックな紛争に対しては懐疑的で、「ファイアーエムブレム」シリーズ、特に「トラキア776」で紛争における喪失を描き、『タクティクスオウガ』はユーゴスラヴィアをフィクショナライズした世界で民族紛争を描いた。

さらに2000年代頃からは、インディーゲームブームの中で(その外縁を含め)このテーマは欧米圏でも深化していく。例としては、ノルマンディー上陸作戦の英雄譚を脱構築していた「Brothers in Arms」シリーズ、ドバイを舞台に「地獄の黙示録」を展開する『Spec Ops: The Line』、偏見が含まれているもののソ連軍の「227号」の描写を試みた『Company of Heroes 2』、そして限りある資源の分配を強要する『Frostpunk』などが挙げられる。興味深いことにこれらはストラテジー/タクティクスゲームの性質、つまり指揮官の俯瞰的立場から部下に犠牲を強いる構造を活かし、紛争を批評的に捉えている。

2023年の『Last Train Home』のエポックな点は、この2010年代ごろのストラテジーゲームの性質を逆算した文脈を継承しつつも、終戦後のチェコスロバキア軍団の帰郷というテーマのピックアップに加え、さらには装甲列車に登場する個々の兵士のパーソナリティを組み込んだ日本的なSRPG文化との融合も図っている点であろう。そして「偶然」にも現代の時勢に対する痛烈なアンチテーゼとなってしまったことも含めれば、2023年マストプレイの一本に数えるのは必然だ。


9位:ブルーアーカイブ

「あなたがたの誰も「先生」と呼ばれてはいけない。あなたがたにとっての「先生」はただ一人であり、あなたがたはみな兄弟である。」

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