じょたろ

京大短歌会(18)

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青松輝コンプレックス

最初に、退屈だと思うが、俺の半生をすこしだけ書いておくことにする。 小学生の頃、将来の夢は小説家だった。当時の友人と、「ハリーポッター」みたいなファンタジーな物語をノートに書いていた。 中学生になった頃、その友人とは疎遠になってしまい、その夢もどこかへ行ってしまって、スポーツに明け暮れた。読書を頻繁にするわけではなかったが、太宰治とか夏目漱石とか、いわゆる文豪の作品をちょいちょい読んでいた。このまま、「小説家になりたい」って夢を思い出したりしそうだが、どこでひねくれてしま

    • お気に入りの短歌4

      青松輝の第一歌集『4』の表題歌にもなった、言わずと知れた名歌。巷では「4」の意味を巡って色々な考察が飛び交っている。「好きだよ」の文字数が4で、恋人はその文字「数」しか分かっていないとする説。four → for でこの作品の主体が「恋人」のことをずっと想っているという考察も見たことがある。ひとつメタ的な視点で言うと、「4」という数字は極限まで情報量が少なく、青松はそれを狙ったのだと思う。「好きだよ」=「4」という、ある種の言語的な約束は主体と「恋人」の間にしかなく、僕たちは

      • お気に入りの短歌3

        メタファーとしての誘蛾灯をシンボリックに三句に持ってくる構造。「教えてほしい」で〈あなた〉が浮かび上がる。その〈あなた〉に「僕」の「嘘」を見破られてしまった。ふたりの間を流れる不穏な空気を読み手も感じることができる。 都々逸の韻律。7・6・7・7・5で、モチーフがどんどんズームアップされていくようなカメラワーク。初句でいきなり「抱きしめれば」と言う思い切りの良さ。「水の中のガラスの中の気泡の中の熱い風」というのは心臓の暗喩になっているのかな、と思った。抱きしめる〈わたし〉の

        • 今俺が死んだら?

          たまに、ふとした瞬間に、今俺が死んだらどれくらい美しいだろう、って考えることがある。 みんな、どれくらい悲しんでくれるのかなあ。泣いたりしてくれるかなあ。喜ぶようなやつもなかにはいたりするのかなあ。そんなに嫌われてないといいなあ。 * 亡くなった、って言葉が嫌いだ。小さい頃に、死んだ、って言うのは失礼だから、って言われて、ああ、じゃあ、亡くなった、って言うもんなんだなあ、って思いながら生きてきた。 気づいたのは、去年、愛犬のモコが死んだ時だった。癌だった。死ぬ前は呼吸

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        青松輝コンプレックス

          お気に入りの短歌2

          「これ以上言うことができない」って思うことってよくある。それを下の句でビシッと言ってしまう思い切りのよさ。僕は佐クマサトシの短歌を読んでいて「これ以上言うことができない」と思うことがよくあって、それを自ら言っているように感じて、かっこいい…ってなってしまった。 当たり前だけど夏はよけられない。またあの、下手したら永遠と勘違いしてしまうような夏がきてしまって、ぼくを傷つけるかもしれない。なるべく気づかないふりを。なるべく傷つかないように。注意力をできるだけ散漫にする。 「君

          お気に入りの短歌2

          所感 ’24春

          僕たちは明日死ぬかもしれないのに、「将来」のことばっかり考えて、嫌なことを直視しようとする。「嫌なこと」がかつて「嫌」だったことも忘れてしまった人たちを見ると、寂しい気持ちになる。 * くじらを見に行きたい。 くじらって、めちゃくちゃでっかいのに、優しそうだからすき。イルカは、裏ではいやなこと考えてそうで怖い。 くじらを見に行きたい。 * 蛍は夜に光る。空気を読むように、蛍の胴体は真っ黒で、緑の光だけが疏水の上で踊る。蛍の光を見ていると、語りかけられてるみたいで好

          所感 ’24春

          お気に入りの短歌1

          毛糸を落っことしちゃうくらいのことでは、すぐにとりかえしがついてしまう。理性なんか捨てて、あなたと「とりかえしのつかないこと」をしてしまいたい。 わかる。何も聞こえないもんな。これってドライヤー中に何か聞こうとした人間にしか共感できないんかな。言いようもないかっこよさ。 景を切り取る視点とそれを昇華する表現がひたすらに上手いと思う(それって最強かも)。 鋏の捉え方が斬新な上、主体との距離感がある。そんなに遠い存在に、あなたはときどき髪を切られている。なんだか悔しいような

          お気に入りの短歌1