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忘れる ということ

こんにちは。
前回投稿から2ヶ月も経ってしまいました。
今は今宮神社厄年奉賛会(御鳳輦)の活動で忙しく、書いている時間があまりとれません。
御鳳輦って熱海以外の人は聞き慣れない言葉ですよね。調べてみたんですがなかなか明確に「御鳳輦とは」と説明しているサイトがないですね。
多分厄年奉賛会の方が「厄年の人が奉仕する会なんだな」って想像しやすいと思います。簡単にいえばそういう事です。

前回投稿したときは夏真っ盛り。今日は冬を思わせるほどの寒さです。
被災地域の時は止まったままだけど、季節は変わる。時間は流れている。
それが良いことなのか悪いことなのかはわかりません。ただ、時が解決する。そう言った事もあると思います。
1年前のことを思い出しながら書いていこうと思います。

・事業所の閉鎖

災害発生の約2ヶ月前、私が働いている事業所が閉鎖になると通告がありました。
当然異動を言い渡されましたが、閉鎖に至る経緯や異動先での業務の進め方等私は到底納得がいかず、転職を決意していました。
そして本格的に動き出したタイミングで災害が発生したのです。当然転職は白紙に戻し、今の会社に残ることを決めました。

被災後2週間ほど休ませてもらった後は仕事に復帰し、心機一転頑張ろう。と思いましたが、災害の非現実感と事業所閉鎖が混ざり合い「本当は悪い夢を見ているだけなんじゃないか」と感じることが多くなりました。
でも間違いなく現実に起こったこと、起こっていることで、刻一刻と閉鎖、そして移転の日が近づいてきます。
当初は東京(一応都心)に配属予定でした。ただ、そこはアクセスが悪く、新幹線を使っても2時間以上。そして機械の調整や組立、改造をする仕事であるのにも関わらず「オフィスなので電動工具の使用禁止」とどうやって仕事をするのか全く理解ができない環境でした。
そのような状況なので結果的に10月から熱海から約2時間の距離にある倉庫への移転となったのです。

・ストレス

被災当時、自分の心のダメージは微々たるもの。と思っていました。
家を失ったけど家族全員助かったから良かった。命が助かっただけで十分。転職前で良かった。全部「そうだよね」って言えるんですけど、でも当然ですが事業所の閉鎖は自分が被災したことで止まることはなかった。
9月頃は「成るようにしか成らねぇ」「やるだけのことをやるだけ」と自分の力では変えることのできない運命の波に身を任せるしかない。そんなある種の諦めがあった気がします。
そして心の変調が身体に出始めたのもこの頃でした。
肌が弱いのですが少し掻いただけでも真っ赤に腫れたり、爪の先ほどもあるフケがボロボロと出て、頭皮に少し触れるだけでも痛い。そして不眠。

些細な事でイライラしていました。一番癪に障ったのは「大丈夫?落ち着いた?」と言われることです(今は平気ですよ)。
誰しも心配して言ってくれる。でも心配かけまいと「まぁなんとかやってます」と答える。これが毎日毎日何人かと同じやり取りをする。
仮住まいで家族揃って生活して、ある意味では落ち着きはしました。でも仕事もこんなだし、本当の住まいじゃない。
全部いちから揃えて、日々の生活で「あ、あれがない」と使う時になって初めてないことに気付く。
これが被災して家を失うことなんだ。と知る。
家を失ったことを実感するのは被災直後ではなかった。仮住まいで生活が始まってから実感したんです。

・忘れる ということ

発災後、よく聞かれた言葉の一つに「風化させない」という言葉がありました。
しかし私の考えは「風化は致し方なし」です。
毎年のように国内で災害が起きます。それらをちゃんと覚えているか。と言われれば私はNOです。出来ていません。
確かに毎年どこかで起こっている災害は基本的には天災です。色々な見解がありますが熱海の災害は大方人災と言え、状況が違うのは確かです。
でも自分がそうであったように、日本中の多くの人は「そういえば去年熱海で土砂崩れがあったね」という認識なんだと思います。
問題はその時の教訓を活かせるかどうか。だと思うんです。
どこでどんな災害があったかと言うことを覚えるより、防災、その時の避難、支援、行政対応等それらが適切だったか。災害が起きないためには、起きても被害を最小限に留める為にはどうだったらよかったのか。それの方が大事です。

そしてもう一つ。
もし去年の10月11月の辛かった気持ちは薄れています。
それは本当に忘れてきて良かったことです。もちろんもうあんな思いはしたくない。でももし人が忘れることが出来なかったら、あの辛さをずーっと受けて生きることは不可能です。

忘れるということは悪いことじゃない。
忘れちゃいけない、あの家で過ごした思い出や亡くなった人との思い出。それらは大事にして、これからの伊豆山がより良くなることを願っています。

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