超時空薄幸児童救済基金・H

#小説 #連載小説 #ゲーム

(はじめに)

 マガジンの冒頭でも簡潔に説明していますが、奇妙な慈善団体に寄付をし、異世界で暮らす恵まれない少女の後見人となった「私」の日記です。

 こちらの、アルファベットがついているシリーズは、「私」が新たな寄付をして後見人となった、「ふたりめの少女」のシリーズで、「ひとりめの少女(数字がついたほう)」のシリーズとはシステムが異なります。

約二ヶ月の間に、時々届く少女からのメッセージ部分と、それに伴う「私」の感想部分が有料となります。届いたメッセージは、ひとつのマガジンに6回分(12通以上のメール+手紙を読んだ「私」の感想)が収録される予定です。

「ひとりめの少女」のほうを読まなくても、こちらだけで独立して楽しめるものにするつもりですが、両方読むほうが楽しめます(絶対に!)。

では、奇妙な「ひとりPBM」的創作物をお楽しみください。

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 メイシア船長の説明でわかるのは、トルヌカイなる工芸品が希少価値のある芸術品であると同時に、精神系の医療用器具でもあること。
 素材と形状による共感作用とやらが、はっきりと感じられる代物なのだろう(あるいは、美術品としての価値が万人の認める素晴らしさで、『珍しくて高いものだから効き目もあるはず!』というプラシーボ的に効果をもたらしている可能性もあるが……)。
 輸出を制限してオルモリク王宮が専売しているとなると、王国の基幹産業のひとつだろう。これで共感作用の効果に期限があるなら、商品としては完璧だろう。効果を実感した裕福な顧客が継続して購入してくれるなら……。
 とはいえ、メールからは芸術品としての意味合いが強いような気がしたので、消耗品ではなくコレクターが収集したくなる売りこみを考えるべきか。「同じ形状のものがひとつとしてない」という売り文句はコレクター魂をくすぐるし。あとはオルモリク王宮からまた買い付けられるのかが鍵だ。
 コネが通用するにしても、オルモリクでは彼女と“フレッタ”は有名だし、あの星域を航行することは海賊残党の報復などのリスクが伴うけど……。

 まずは、現在寄港しているハベンナで、フレッタ号を可能な限り修理し、なぜかフレッタにご執心のオレイガン元海軍大尉を解雇して、もっと普通のエンジニアを雇うべきだろう。
 そのためにもトルヌカイを高く買い取ってくれる上客を探さないと。
 私には、ハベンナが「紛争の終わって好景気な惑星」としかわからないから想像するしかないが、状況からして、戦闘に従事していた兵士たちが仕事にあぶれた時期があり、彼らを雇って強引な商売を始めたやつも多そうだ。そうした物騒な人物の中にも、十年以上が過ぎて己のステータスを誇示するために高価な芸術品を欲しがるやつもいるだろう。だが、紛争前から堅実な商売で成功している人物に売るべきだ。そのほうが商談も安全だし。
 と、情報が少な過ぎてアドバイスもかなりアバウトになってしまうなあ。それに、このぐらいはさすがにメイシア船長も心得ているだろうし。
 うん。たぶん、わかってるとは思うんだけど……。
 いや、やっぱり心配だな。念のため言っておいた方がいいか……。

ジョン・スミスより メイシア船長へ

早急にドライブの点検と修理を行い、例の元大尉以外の機関士を雇用すべし。不足分は“トルヌカイ”の利益で賄うこと。心得ていると思うが、リスク回避のため買い手は「紛争前に財を成した人物」を勧める。乗客だった商人につてを頼っては? また、“トルヌカイ”の買い付けは今後も可能か知らされたし。

 こんなとこだろうか。
 なにしろ、トルヌカイがどんなものか皆目見当がつかないのだ。
 まあ、もし買い付けられたとしても、引き返してる場合ではないか。
 海賊に襲われてそれどころではなくなっていたが、そもそも、メイシアは船の古い記録で見つけた未払いの運送費を確かめにネシールクへ向かう途中だったのだ。そこで、両親の情報や、買い付けた生体宇宙船に関する手がかりが見つかるかもしれないと思ったから……。


メイシアより おじさまへ。航宙記録43

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