超時空薄幸児童救済基金・10のR
※このテキストは「超時空薄幸児童救済基金・10」の有料部分の続きです。手前部分はこちらになります。https://note.mu/izunohiranari/n/ndd23e46aa787?magazine_key=m4e5b246a40ca
※しばらく中断しているため、現実の季節とずれてしまっていますが、「返事が来なかった」、「手紙を読んでいなかった」等の強引な調節をせずに、ずらしたままで継続していく予定です(まだ滞りそうですが、来年春まで引っ張ったりはしたくないので……)。
このところ、時間的に余裕のない日々が続いている。
異世界の恵まれない少女たちの暮らしに思いを馳せる暇もない。
とはいえ、基本的には自宅で仕事しているので、連絡役の男の訪問を逃すことはなかった。
「コトイシは、もう春なのかね」
「次の手紙が届く頃には、雪も消えて暖かくなっていると思いますよ」
「そうか。春が来ると、すぐに短い夏なんだよね」
「はい。春から夏にかけては森で騎行の修行が続くでしょう」
いつもは先に考えておいた言づてを頼むのだが、このところバタバタしているのでそうもいかず、しばらく時間がかかってしまった。
「では、『T.A.は所有者の名を示すもの。任命の儀に面会を希望する』と伝えてくれるかな。ああ、本当には会えないのはわかってるって。それから、私が竜のことをもっと知りたがっていたってこと話して欲しい」
「承知しました」
そう言って去っていく連絡役の男を、私は見送った。
いつもと何一つ変わらない風景だった。
そう。このときにはまだ、彼も私もコトイシにあんな事件が起こるとは知らなかったのだから……。
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