超時空薄幸児童救済基金・10

#小説 #連載小説 #ゲーム

(はじめに)

 マガジンの冒頭でも簡潔に説明していますが、奇妙な慈善団体に寄付をし、異世界で暮らす恵まれない少女の後見人となった「私」の日記です。

 私信(毎月、少女から届く手紙)と、それを読んだあとの「私」の感想部分が有料となっています。時々、次の手紙が届くまでのインターバルに、「私」が少女への短い返事を送るまでの日記(Re)が書かれることがあります。こちらは、基本的に全文が無料となります。

(バックナンバーについて)

 だいぶ数が多くなってきたので、マガジンのトップで一覧を見てください。時系列の若い順に並べてありますから、文末にある前後のリンクで流れを追って読むことができるようになっています。

※今回も、有料の私信部分を一度に書く時間がありません。何回かに分けて掲載する予定です。多少時間かけても100円分(って、いつも量は適当ですが、いつもと同じぐらいに)は絶対に書きます! すみません!

では、奇妙な「ひとりPBM」的創作物の続きをお楽しみください。

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 いつもならそろそろ次の手紙が届く時期だったのに、男が現れない。
 私は、やきもきしていた。
 この間、「便りがくる限り、少女は元気でいるのだ」などと思ったばかりだっただけに、余計に便りの遅れが気になってしまう。
 こちらから問い合わせてみようか……。
 男が現れたのは、そんな矢先だった。

「少々、確認したいことがあります」

 玄関で出迎えるなり、男が言った。
 こっちを探るような口調なのが気になる。

「いいけど、その前に彼女からの手紙は届いてるの?」

「はい」

「そうか。ならよかった……」

 と、まずは安堵する。

「で、確認というのは……?」

「手鏡のこと――と言えば、お心当たりがあるのでは」

 やっぱりきたか。
 というか、今さら気づいたのか?

 手鏡自体はとがめられもせずに受け渡しされ、そのあと届いた少女からの手紙の内容についても何も問われなかったのだ。
 それだけではない。
 前回の手紙をもらったあと、私は仕事が極端に忙しくなりそうだったので、こちらから電話して後見人としての言づてを伝えていた。
 それは「二つの印は、手鏡の所有者を示す証なり。今後も精進されたし」というものだった。これについても、連絡役の男は何も言わなかった。だからこそ、黙認されたものと解釈していたのだ。
 もしかしたら……。
 この団体の関係者は、少女から届く私信には目を通していないのか?
 手紙は翻訳されているが、翻訳者がいるわけではないのか……自動翻訳?
 あるいは、翻訳者はそうしたことには関知しない、とか?

 疑問が渦巻いて、黙ってしまったのを肯定と勘違いしたのか、男が言った。

「あの言づての意味が、ようやくこちらでも把握できまして。まさか、あんなことをされていたとは……」

「いけなかったのか」

「規約などで拘束するつもりはありません。ただ、あちらの世界の住人である彼女を不必要に混乱させることは、あなたも本意ではないと思うのですが」

「ああ……」

 確かにそのとおりだ。
 彼女は私のことを、あちらの名前で呼び、あちらの世界の住人だと思っているのだから。
 なんであんなことをしてしまったんだろう。
 本当の私を、知らせたい、そんな気持ちがあったからか……。
 そんなことをしても、彼女のためにはならないのに……。

「私どもとしましては、この団体がかなり特殊なものであることを理解でき、その上で、節度を守って後見人になって頂ける方にのみ寄付をお願いしているつもりです」

「じゃあ……あれはまずかったね」

「いえ。見込み通り、節度を守って頂けているとは思っています。この間の言づてからも、わかります」

「なるほど。ぎりぎりセーフってことか」

「はい。担当者として、肝を冷やしはしましたが」

「すまなかった。以後、気をつけるよ」

「お願いいたします」

「だけど、ひとつ質問してもいい?」

「はい。なんなりと」

「寄付した先が、時代が違うだけだったり、こちらの世界とよく似た世界だったら、今回のようなことは『あり』なの? だってさ、受け取った側でも通じちゃうわけだろ」

「そうですね。特に問題ない場合が多いかと思います。ですが、こちらと似通った世界ですと、寄付金もそれ相当の額が必要になってしまいます」

「ああ、そうか。そうだね」

 この辺のもどかしさは、少額でも後見人となれるリスクということか……。

「では、こちらを」

 男は、そう言って手紙を渡すと去って行った。
 やっぱりあれはまずかったのか。彼女が混乱してなければいいが……。

 そう思いながら、私は手紙を開いた。


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