RPGに役立つ・背負い袋にこの一冊!第十一回

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※2003~2006年に雑誌『RPGemer』に掲載された記事です。

最終回:「サマー/タイム/トラベラー(1・2)」

 ~架空の世界を形作る力の源~

(本のデーター)
「サマー/タイム/トラベラー」
 新城カズマ 著
 早川書房 発行 各660円+税
(※データは掲載当時のものです)

二年間、ありがとうございました~

 こんにちは、謎のメカ侍・伊豆平成です。
 そう、最終回なのです!
 書評なんて初体験の私の拙いコーナーに長いこと付き合って、本当にありがとうございました。
 さて、今回は最後ですので、いつもと違うことを試みようと思います。
 これまでの作品は、私があくまでも一読者として手にした一冊ばかりでしたが、今回は変わったアプローチが可能な作品を選んでみました。
 RPGには必要不可欠な「架空世界の作り方」の参考になる、ちょっとしたエピソードを書いてみようかと……。
 私も仕事柄、いくつかの架空世界を作ってきましたが、長編小説を何冊か書くために舞台となる世界を考えたときに、初めて学んだことがあります。それは創造者の視点より、観察者や研究者の視点で作る方がうまくいく……ということでした。
 作ろうとしている世界は、とっくの昔にどこかに完璧なものが実在していて、自分はどうにか見える範囲でそれをみんなに紹介(あるいは観察、調査)しているだけなのだ――そう考えてやるとなんだかうまくいくんです。私の場合。
 てなわけで、最終回は本誌でも『架空世界設計講座』を開講中の新城カズマ氏の新作、『サマー/タイム/トラベラー』に関して、私の実体験を交えつつお話ししようと思います。

話は、またしても松本から……

 まだ梅雨なのに真夏みたいに晴れた、七月上旬の土曜日のこと――。
 私は、新城氏と松本で待ち合わせました。この季節、我々はよくここで合宿するのです。
 新宿から高速バスに乗りこんだ私は、さてとばかりに『サマー/タイム/トラベラー』の一巻を開きました。
 この本を読むのはこの旅のときに、と決めていたからです。
 「新城さんに会ったら感想を言おう」と、読みながら色々なメモをとったりしつつ、ニヤニヤしたりハッと息を呑んだりの三時間――。
 ところが松本に着いても、まだ数十ページほど残っていたのです。
 しかたなく、新城さんと待ち合わせた“旧制高校時代にはバンカラ学生が通った洋食屋”の『おきな堂』まで、女鳥羽川沿いを歩きながら読み続け――歩き読みなんて中学校以来です――古い洋食屋の扉を開けたのでした。
 よう、と手を挙げる新城氏(参考までに……彼は映画「シークレット・ウインドウ」の主人公に似てます。私ゃ、あの映画を見て「さすがは名優ジョニー・デップ! よくもまあ、あんな新城さんそっくりに化けたもんだ」と感心したくらいですから!)。
 すでに名物の「バンカラカツカレー」を食べ終えていた新城氏は、今日の予定について話し始めました。
 しかし……。
「すみません、ちょっと待って。あと少しなんです。読み終えたら感想を話しますので」
「ほほう、どうぞどうぞ。待ちましょう」
 と、面白そうに笑う作者を前にして、私は一巻(まだ二巻は発売前でした)を読み続けたのでした。

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