超時空薄幸児童救済基金・6

#小説 #連載小説 #ゲーム

(はじめに)
 マガジンの冒頭でも簡潔に説明していますが、奇妙な慈善団体に寄付をし、異世界で暮らす恵まれない少女の後見人となった「私」の日記です。
 私信(毎月、少女から届く手紙)と、それを読んだあとの「私」の感想部分が有料となっています。時々、次の手紙が届くまでのインターバルに、「私」が少女への短い返事を送るまでの日記(Re)が書かれることがあります。こちらは、基本的に全文が無料となります。

(バックナンバーについて)

※だいぶ数が多くなってきたので、マガジンのトップで一覧を見てください。時系列の若い順に並べてありますから、文末にある前後のリンクで流れを追うことができます。

 では、奇妙な「ひとりPBM」的創作物の続きをお楽しみください。

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 連絡役の男が手紙をもってやってきたのは、月の終わり頃だった。

「お待たせしました。今月の手紙です」

「……ん? これは?」

 いつもの封筒と通信筒(こっちに少女の書いた本物のほうの手紙が入っている)とは別に、やや重みのある包みを渡される。

「彼女から、後見人への贈り物だそうです。ジョン・スミス氏の誕生日を聞かれたとのことで」

「えっ?」

 たしかに私は10月生まれだが……。
 彼女が、あちらの世界で(こちらのように正体を明かしてはいない連絡役の人物、もしくは現地採用の人物に)シォナン・ドルクドの誕生日が今月だと聞き出したわけか。
 つまり、これは……。

「誕生日のプレゼント? 彼女からの!?」

 にっこり微笑んだ連絡役の男が、うなずいた。

「そのようです」

 包みは、粗い麻みたいな布でできていた。さっそく紐をほどいて、三つほど入っている中身を取り出してみる。
 ひとつは毛皮の手袋だ。
 黒と薄茶色が斑になった上等な毛皮でできていて、親指と人差し指が別に分かれたミトンになっている。毛の密生具合はミンクのようで、皮自体も柔らかくなめしてあり、縫製に雑な部分はあるものの、動かしやすくて暖かい、実用的な代物だ。
 もうひとつは、大人の小指ほどの長さの真っ白な牙。
 歯根の手前で切断されていて、基部の直径は親指ほどもあり、鋭く尖りながら皮膚や肉に食い込むためのカーブを描いている。洗って研磨された表面は、すべすべして光沢があった。基部から1㎝くらいのところに穴が開けられていて首にかけられるように長めの革紐が通してある。
 最後のひとつは、なんなのかわからない不思議なもの。
 手のひらぐらいの大きさで厚みが6~7㎜くらいある楕円形をした葉のような形のもので、緑がかってはいるがガラスのように透けて見える。その透明の堅い板の中に可憐な白い花が一輪咲いているのだ。
 アクリルガラスに造花やドライフラワーを埋め込んだ飾りがあるが、あれに似ている。質感はガラスよりもプラスチックに近いが、ひんやりとしているから鉱物のようでもあり、かすかに良い香りがして……。
 明るいとこにかざして目をこらしてみると、透明の葉の部分にはうっすらと緑色の網目のようなものが全体に走っているのがわかった。
 これは……いったいなんなのだろう?
 聞いてみたが、連絡役の男も知らないらしい。

「おそらく、手紙に説明があると思います」

「そうだね」

「では、私はこれで」

 と、男が引き上げようとしたところで、言い忘れていたことを思い出し、私は彼を呼び止めた。

「メイシアのほうなんだけど、あっちは言づてはできないのかい? メッセージを見る度に、ひやひやしてるんだが」

「メールですからね。やりとりが頻繁になられても、困りますので」

 なにが困るというのだ?
 まあ、異なる世界の人間だと知られないように気をつけても、ぼろが出ることはあるだろうけど……。

「なにか、方法を考えます。それまではお待ちください」

 そう言うと、男は去って行った。
 しかたない、そっちの問題はあとで考えるとしよう。

 なにしろ……プレゼントなのだ。まさか、彼女からもらえるとは!
 私は、机の上に並べた「手袋」と「牙の首飾り」と「謎の物体」を眺めて、なんだかうきうきしながら手紙を読み始めた。



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