超時空薄幸児童救済基金・9

#小説 #連載小説 #ゲーム

(はじめに)
 マガジンの冒頭でも簡潔に説明していますが、奇妙な慈善団体に寄付をし、異世界で暮らす恵まれない少女の後見人となった「私」の日記です。
 私信(毎月、少女から届く手紙)と、それを読んだあとの「私」の感想部分が有料となっています。時々、次の手紙が届くまでのインターバルに、「私」が少女への短い返事を送るまでの日記(Re)が書かれることがあります。こちらは、基本的に全文が無料となります。

(バックナンバーについて)
 だいぶ数が多くなってきたので、マガジンのトップで一覧を見てください。時系列の若い順に並べてありますから、文末にある前後のリンクで流れを追って読むこともでるようになっています。

※今回の(もしかしたら次回も?)手紙は、何回かに分けて掲載する予定です。今回も多少時間かけても100円分(って、いつも量は適当ですが)は絶対に書きます! すみません!

では、奇妙な「ひとりPBM」的創作物の続きをお楽しみください。

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 冬の間、コトイシ砦からの手紙が届くのが遅れるかも……と聞かされていたわりに、連絡役の男は思ったより早くに現れた。

「あの手鏡は、無事に彼女の元に戻ったんだろうね?」

 手紙の筒を受け取りながら聞くと、男はうなずいた。

「もちろんですとも。言づてと共に砦に届いてます」

「そうか。ならよかったよ」

 手鏡を手にした少女は、あの小さな変化に気づいただろうか……?
 もし手紙に彼女がそのことを書いていたら、訳した人物も気づくだろうし、私が彼らに黙ってやったことだから、この連絡役の男が文句を言ってくるのではないか……。
 そう思って身構えていたのだが、彼は「こうして少女からの返事を届けに来たんだから、とっくに渡しているに決まってるじゃないか」とでも言いたそうな顔をしただけだった。
 まだあちらは真冬なんだろうな……と、私がコトイシ世界に思いを馳せていると、男が言った。

「ところで、ひとつ伺いたいことが……」

 きた。やはり、手鏡の件だろうか?

「なんだい? なにか問題でも?」

 内心びくびくしながらそう答えると、男は笑って首を振った。

「いえいえ、問題というわけでは。ただ、手鏡は従騎士になったお祝いの品になったわけですよね」

「まあ、そうなるね……」

 だから、なんだというんだ? こちらに探りをいれてるのか?
 今ではすっかり顔なじみとなった連絡役の男は、悪い人間には見えない。
 むしろ私と同じで、いつも異世界の恵まれない少女たちの身を案じている。
 ただこっちが無断で少しばかり細工をしてしまったから……。
 彼が善人なだけに、かえって気が引けてしまうというか……。

 と、男が言った。

「じゃあ、簪はどうします?」

「へっ?」

 簪……? ああそうか!
 内心でホッとしながら、私は思い出した。
 手鏡は、もともと誕生日のプレゼントだったのだ。
 彼女が従騎士になったときにはそれとは別に、兜を被るときに役立つよう、髪を結うための飾りを贈ろうと考えていたのだった。

「ああ、だけど……また、突っ返されたりすると困るし」

「同感です」

 私と男は顔を見合わせ、笑みを浮かべた。
 そんなことをしたら彼女がどんな受け答えをするか、今の我々には、なんとなく想像がついてしまうのだ。

「簪はまた今度にしよう。例えば、正式に騎士になれたときにとかにね」

「わかりました」

 にっこり笑ってうなずくと、男は去って行った。

 どうやら、気づかれてないらしい。
 果たして、それが良いことなのかどうなのかわからないが……。
 ふうっと息を吐いてから、私は手紙を読み始めた。
 まずは手鏡のことがどうなったかを確かめなくては……。


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