フレーメン_ギルド同盟

「DUNE 砂の惑星」のボードゲーム

 先週の土曜日は、我が家で「DUNE・砂の惑星」のボードゲーム会。
 TRPGやゲームブックなどのデザイナーで作家の藤浪先生や、ゲームデザイナーの桂先生、それに旧遊演体マスターのイグサさんと清原さんに集まってもらい、5人でプレイした。

 詳しいことは知らないが、「DUNE」は30年以上前のアバロンヒル社のボードゲームだ。有名な原作(同タイトルのSF小説)に登場する六勢力のひとつを担当し、砂の惑星の覇権を争う。
 学生時代、何度も遊んだ大好きなボードゲームのひとつだ。
 プレイヤーが担当する勢力は、それぞれに特殊な能力があり、ゲーム上で有利になるポイントがある。

 各勢力を紹介しておこう。

 まずは主人公の「アトレイデ(正確にはアトレイデ家のポール)」。
 予知能力を持ち、カードの蹴りなどの前に武器カードを、移動ラウンドの前などに次回のスパイスカードを、戦闘前には相手のカードや数値までも知ることができる。

アトレイデ

 「アトレイデ」は桂さんの担当。


 続いて、主人公の宿敵「ハルコンネン」。
 陰謀をめぐらす悪党だ。
 相手勢力のリーダーの中に、他の勢力の四倍の人数の裏切り者を忍ばせている。敵のしかけた裏切り者のリーダーを使うと戦闘で無条件で敗北するので、裏切り者を四人も設定できるのはかなり強力。また、武器カードも他の人の二倍まで所持できる。

ハルコンネン

 「ハルコンネン」はイグサさんの担当。


 次に原住民の「フレーメン」。
 砂の惑星での生活に適応し、排出した水分を再摂取できるスーツを着て暮らしている。
 現金(このゲームでは惑星に発生するスパイスが金の代わり)を入手する手段は乏しいが、次の砂嵐の位置を予測でき、砂虫を操り、宇宙船で惑星外から輸送する必要なくコスト0で戦闘ユニットを上限の三つまで出現させることができる。精鋭部隊も所持。
 また、誰にも支配させずに15ターン耐えても勝利できる。

フレーメン

 「フレーメン」は清原さんの担当。


 次は「皇帝」。
 惑星外から、強力な軍事力で砂の惑星の支配を目論む。
 武器カードの競りの収入は全て皇帝の懐に入る。もちろん自分が買ったカードの代金も自分に払うのでカードは無料。精鋭部隊も有しているので、かなり強い。

皇帝

 「皇帝」は藤浪さんが担当。


 ラストが、「ギルド」。
 スパイスを使って化け物のような姿となった「航海士」によって恒星間宇宙船の運航を独占し、他勢力の輸送や移動の際に料金としてスパイスを得ることができる。
 惑星上での移動の代わりに、離れたエリアでも戦闘ユニットを移動でき、移動ラウンドでの自分の手番も自由に選べる。

ギルド

 「ギルド」は伊豆が担当。


 フルメンバーの六人プレイなら、もうひとつの勢力がいる――。
 相手の使うカードを強制し、無駄なカードで相手の特殊能力を使えなくできる強化人間(魔女?)の女子修道会「ベネ・ゲセリット」。
 これまたかなり特殊で強力な勢力なのだが、今回は登場しない。


 砂嵐が惑星を反時計回りに動き、スパイスがどこかに発生(砂虫が出ることも)し、ユニットやリーダーの補充、惑星外からの予備ユニットの降下、地上ユニットの移動、戦闘の解決、スパイスの収穫……というラウンドをくり返していく。

 始まって3ターンめぐらいの様子がこれだ。

3ターン後

 緑のアトレイデ黒のハルコンネンは、ゲーム開始時から、ほぼ隣同士といっていい位置の「アラキン」と「カルツァグ」という「要塞(赤い土地)」エリアを所有している(地図の右寄り)ので、兵を降下させて防御を固める。
 オレンジのギルドも小勢力が初期配置されているマップ上方の要塞に増援を降ろし、赤の皇帝もマップ下方の要塞に兵を降下させて拠点を確保した。

 このゲームの勝利条件は、「マップ上の要塞を三つ占領すること」なので、この要塞の確保が最重要なのだ。
 一方、黄のフレーメンは特定のエリアから出現し、その近くの岩場に終結していた。
 なぜなら、近くの要塞にギルドが降下して奪っていたからだ。
 岩場(灰色)と要塞(赤色)と南極(中心)のエリアだけが、砂嵐の影響を受けないので、要塞がなければ戦闘ユニットは岩場に置くしかない。
 ただし、「シールドウォール」という細長い岩場が、競り合って買うカードの山に1枚だけある「ファミリーアトミックス」というカードの使用によって破壊されると、緑と黒がいる「アラキン」と「カルツァグ」の二つの要塞(英語の読みは適当)は、砂嵐に対しては砂漠と同じ扱いになってしまう。まあ、シールドウォールの隣接エリアまで行って使用するので、そうそう起こらないのだが。
 「砂嵐」は、占領できるエリアとはべつに、おうぎ形に18分割された「セクター」を基準にして吹き荒れ、砂嵐のセクターは毎ターン1~6セクターの範囲で反時計回りに地図上を周回する。
 岩場(灰色)と要塞(赤)と南極(青)以外の土地にいた戦闘ユニットと発生したスパイスは、砂嵐が通ると全て吹き飛んでしまう(フレーメンは半分で済むが)のだ。
 砂嵐を予測して要塞や岩場に隠れ、吹き飛ばされないタイミングで、各地に発生するスパイスを収穫したり他の要塞を攻撃しようとするのが戦闘ユニットの主な行動となる。
 一度地上に降りたユニットは1エリアしか移動できないが、現在アトレイデとハルコンネンが最初に持っている要塞(アラキンとカルツァグ)を占領していると、オニソプターという飛行機が使えて、3エリア移動ができる。また原住民のフレーメンは特殊能力で2エリア動ける。
 フレーメンが要塞を確保しなかったので、ギルドはこのターンに2つめの要塞に降下した。ストックしてあるユニットを惑星外から地図上に降下する分には、コストさえ支払えばいきなりどこへでも降下できるのだ。

3ターン解説_LI



 4ターンめぐらいの状況。

4ターン

 2つの要塞を得たギルドは、他勢力に警戒された。
 いらないカードを消費したいハルコンネンが、ギルドの要塞に攻撃。
 戦いには勝ったものの裏切り負けを警戒して有能なリーダーを使わなかったギルドは、ユニットを大量に消費してしまった。手薄になったギルドの要塞に、チャンスとばかり皇帝軍が降下してきた(その料金はギルドに払うのだが)。
 皇帝が要塞を奪い、ギルドに変わって要塞2つを占領する勢力となった。

 それはそれとして、皇帝に追われて岩場に出たギルド軍は、たまたま入手していた「ファミリーアトミックス」を使い「シールドウォール」を破壊した。
 これによって、前述した「アラキン」と「カルツァグ」の2つの要塞は、どちらも砂嵐に対しては砂漠同然になる。まだ砂嵐は6セクター以上離れているので、近づいてきたら岩場に待避すれば済むのだが、厄介は厄介だ。
 ただ、この時点では特に深い考えはなく、壊せるなら壊してみたい……というだけの理由だった。たまたまシールドウォールの近くの要塞にいたし、一歩出るだけですぐ隣接できるし……というだけの理由だったのだ。

4ターン解説_LI

 そして次のスパイス発生ラウンドで、タイミング良く砂虫が出現。
 砂虫は、スパイスを生み出す巨大生物で、発生したエリアにいるユニットは全滅する。
 それも重要なのだが、もっと重要なのは、この砂虫カードが出たときのみプレイヤー同士が同盟を締結・破棄できる、というルール。
 ルール上、同盟した勢力が合わせて3つの要塞を確保していれば、その同盟の勝利ということになる。
 だから現状だと「誰かが皇帝に傅いて共に勝者となる」か、「皇帝以外のアトレイデ、ハルコンネン、ギルドが鼎立して勝者となる」ことが可能だ。
 しかし、「もう少しゲームが楽しみたい」という皇帝の(ていうか藤浪さんの)意向もあって、皇帝は自ら孤立を宣言。そうなると鼎立もしないほうがいいので、ギルドは要塞の目前に集結している原住民に同盟を求め、フレーメンもこれを了承した。
 フレーメンは惑星外から降下しないので、ギルドと組んでもあまり特にはならないが、決着がつかないで15ターン経過すると勝てるという点では利害は一致する。
 かくして「フレーメン・ギルド同盟」が成立した。

フレーメン・ギルド同盟


 残った二勢力のアトレイデとハルコンネンは、原作では因縁ありまくりの宿敵同士。
 だが、現状では手を組むしかない。
 「これまでの遺恨を乗り越えて、ってこっちから言うのもなんだけど……」とハルコンネン(イグサさん)が言ってて、笑った。確かにハルコンネン側が陰謀を巡らせて、主人公の親父を殺したり色々としまくってるから「あんたがそれを言うかっ!」って感じだが、アトレイドも喜んでこれを了承した。
 そして両家の婚姻話が進むという展開に……って、バカだなあ。
 こうして掟破りの「アトレイデ・ハルコンネン同盟」が成立した!

アトレイデ・ハルコンネン同盟

 「掟破り」とは言ったが、このゲームでは結構この二人が組むことになると思う。
 初期配置からして二人でいがみ合っていると他の勢力につけいられてしまうからだ。
 まあ原作にこだわる人は抵抗があるかもしれないし、そこにこだわってプレイできるのも原作付きゲームのいいところだ。
 さらにメタな視点で考えれば、ゲーマーとしては「彼は原作のファンではないから、宿敵の設定にはこだわらないな」とまで読んでプレイする――という戦略も求められるかもな、なんてことも思ったりする。
 ――と、脱線したが、この同盟には初期配置以外の利点もある。アトレイデ・ハルコンネン同盟は、戦闘でかなり有利になるのだ。
 同盟仲間にも自分の特殊能力を融通できるため、アトレイデの予知で戦闘時に敵の出すカードや数値を1つだけ先に見られる上に、ハルコンネンのばらまいた裏切り者は、どちらの戦闘でも裏切ってくれるのだ。

 だが……。その強力なアトレイデ・ハルコンネン同盟に対し、ギルドにはある秘策があった。

5ターン

 これが、その秘策の成果だ。アトレイデとハルコンネンの軍勢は、いかにして要塞から消え去ったのか!?

 

 ギルドは、次ターンの砂嵐ラウンドで「天候コントロール」を使ったのである!
 「天候コントロール」は、普通ならば1~6セクターの範囲で動く砂嵐を、10セクターまで動かすことができるカード。
 前ターンのカード購入の競りで、売られた全てのカードを事前に確認(予知)しているアトレイデは、この重要カードがギルドに渡ったことを知っていたはずだが、どうやら失念していたらしい。
 まだ襲ってこないと思って対処せず要塞にいた両軍のユニットは、容赦なく砂嵐にさらされた。
 軍隊は全て吹き飛び「アラキン」と「カルツァグ」は更地と化したのだ!

 そして、我がギルドは同盟者であるフレーメンの軍隊の移動でも、自軍と同様に離れたエリアからエリアへと移動させることが可能なのである!

5ターン解説_LI


 ギルドとフレーメンの軍勢が、それぞれの手番で「アラキン」と「カルツァグ」に降下。
 要塞を渡してなるものかと、アトレイデとハルコンネンも有り金をはたいて惑星外から予備のユニットを降下させる。
 ただし、彼らの払う料金は、そっくり我がギルドに入ってくるのだ。
 もうウハウハである。

 戦闘の結果、状況は以下のようになった。

5ターン戦闘後

 ギルドは、アトレイデとの戦いに敗北。
 フレーメンは精鋭部隊を差し向けた甲斐あって、ハルコンネンに勝利。
 ギルド・フレーメン同盟の所有要塞は二つとなった。
 一応、解説図も。

5ターン戦闘後_解説_LI

 辛うじて3要塞は取らせなかったものの、アトレイデ・ハルコンネン同盟はスパイスが残り少ない。
 一方、フレーメンはともかく、ギルドにはさっきの戦闘でも降下に支払った料金がある。もちろん、今一番スパイスを蓄えているのは皇帝なのだが……。
 皇帝は2要塞を抑えたまま、全く動けないでいた。
 なぜなら持てる兵力を全て遠く離れた2つの要塞に置いてしまったため、地上を1エリアずつしか進めないため、争奪戦となっている「アラキン」や「カルツァグ」の戦いに介入できないのだ。一番近いギルドの要塞には、すぐそばにフレーメンの本拠地もあるので手出しがしにくいし……。

 というわけで次ターン。
 カードの競りでは、儲けたスパイスを吐き出してカードを買うのはギルドとフレーメンばかり。どんなカードが敵の手に渡ったのかだけがわかり苦悩するアトレイデ。
 なんと、ギルドもフレーメンも、「真実の告白」を入手していた。このカードを使われた相手は、質問にイエスかノーで答えなければならない。裏切りが唯一の頼みのハルコンネンに使えば、切り札を防ぐことができる。「このリーダーをこの戦いに使うと裏切りますか?」と聞けば、ハルコンネンはイエス・ノーで答えるしかないのだ。
 さらにギルドは「カルマ」のカードも手に入れた。このカードは、敵の特殊能力を妨害できる。ハルコンネンの裏切りそのものは防げないが、アトレイデの予知を防ぐことはできる。
 最後の攻防が始まった。
 戦闘は、図のように三箇所で発生した。

6ターン解説_LI

 まず「カルマ」でアトレイデの予知を防ぎ、ギルドが「アラキン」を占領する。
 続いて南極から戻ったハルコンネン軍との戦いでも、「真実の告白」で裏切りを防いだフレーメンが「カルツァグ」を死守。
 同じく、降下してきたハルコンネン軍をむかえ撃ったギルドも、「真実の告白」で裏切りを予防して(まあ、どのみち裏切り発生しなかったのだが)要塞を死守。
 こうして3要塞の占領に成功したフレーメン・ギルド同盟が、勝利した。

6ターン戦闘後_解説_LI

 以上。
 まあこんな感じのゲームです。

 ついつい久しぶりのプレイに熱くなって、長々と記事にしてしまったよ。
 あくまでギルドの視点でのレポートだけどね(記憶が曖昧だから、前後したり間違ったりしてる可能性はあるし)。
 プレイ時間は3~4時間だった。

 やはりこのゲーム、私はギルドを担当するのが一番好きだな。
 やり慣れてるってのもあるけど、移動時の行動手番が自由に選べるのが、かなり色々とできる。あと、何も考えなくてもお金に困らないのがいい(色々やるとお金が儲かる――というタイプのは面倒で苦手)。皇帝は、もっとお金に困らないんだけど、ユニットの采配がけっこう大変だと思う。
 それと、今回は皇帝が終わらそうと思ったら終わらせられていたゲームだった。
 ギルドはカード運に助けられただけとも言える。
 武器カードがほとんど引けなかったけど、その代わりに山に1枚か2枚しかないカードをやたらと競り落とせたからなあ。「ファミリーアトミックス」に「天候コントロール」に「真実の告白」に「カルマ」って……。
 さらに言うと、「レーズガン」も引いてた。すぐ使っちゃったけど。

 それにしても、昔のゲームなのにキャラクター性とゲーム性がきちんと両立していて本当に素晴らしいボードゲームだな~と、改めて思った。
 充分、今でも通用する。
 まあ私見では、最近は「マルチで正面切って戦って陣取りし合うゲーム」って、わりと敬遠されているイメージがあるけど。
 人狼とかで神経削り合うより、よっぽどルール化されてて面白いと思うんだがな。それに、一対一だと負けが込むときついけど、マルチだと微妙に標的が分散するし。
 それからDUNEに関して言えば、同盟なんかもタイミングがルールで決まっているのでわかりやすいし。

 海外ではリメイクされているので、新しいものも手に入るらしい。
 自分では所有していないから(今回使ったのはGOさんの遺品。ゲムル所有のもの)、久しぶりにプレイして自分でも欲しくなってきたけど、今度公開される映画「DUNE」に合わせて、どこかがリメイク版の邦訳版を出さないかなあ……って、そっちを期待しているんだけど。


テキストを読んでくださってありがとうございます。 サポートについてですが……。 有料のテキストをご購読頂けるだけで充分ありがたいのです。 ですので、是非そちらをお試しください。よろしくです。 ……とか言って、もしサポート頂けたら、嬉しすぎて小躍りしちゃいますが。