超時空薄幸児童救済基金・8のRe

「やあやあ、待っていたよ」

 連絡役の男を出迎えながら、私は手鏡についた木屑を払った。ついでに鹿革の眼鏡拭きで鏡面も拭き取っておく。少女の手に戻るときに、汚れていては申し訳ない。

「これ、なにかに包んだ方がいいかい?」

「いえ、結構です。あちらで適したものを用意しますので」

 そうくると思った。
 私が渡すと、連絡役の男は曇りのない鏡面をチラッと眺めてから「たしかにお預かりします」と言って手鏡を手提げ鞄にしまった。

「言づてはありますか?」

「もちろん。私がとっても喜んでいたと伝えて欲しいんだ。『従騎士殿、正当な祝いの品を受け取られたし。竜のことは焦らずに調べ、まずは修練を』とでもお願いしようかな。それと、オギマエ獣についても知りたがっていたと伝えて欲しいけど……」

 男は「少々長いようですが、しかたありませんね」と、苦笑する。

「メイシアさんへの返事もそろそろでしたね。あちらはメールでお願いします」

「うん。わかってる」

 私がうなずくと、彼は去っていった。

 よしよし。
 とりあえず、彼には気づかれなかったようだ。
 まあ、あちらで包むときに気づかれるかもしれないが、そのときはそのときだ。
 べつに、止められてもいなかったわけだし。

 と、思いながら玄関のドアを閉めた私は、ふうっと息を吐いた。

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