超時空薄幸児童救済基金・3のRe
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彼女が新しい紙に綴った長い手紙を楽しみながら、次の報告を待ってのんびりと過ごしたいところだったのだが……。
このところ仕事が忙しく、私は家にいないことも多くなっていた。
連絡係の男が「お留守のようでしたのでまた後ほど伺います」などとメモを残していったことが何度かあって、結局会えないままなのだ。
次の手紙では、砦にいる他の騎士たちのことも聞きたいし、少女の修業がどうなったかも聞きたい。
このやりとりに、後見人からの「言づて」は必ずしも必要ではないのだが、手紙を書く少女のほうも、なにかしらこちらから呼びかけがあったほうが張り合いがあるはずだ。
新しい便箋用の紙を送ったぐらいで、これほど無邪気に喜んでもらえると、少ないながらも寄付をしてよかったなあと思う。異世界のことで、現実味が薄いが、それでも後見人として、ますます彼女に協力したくなってくる。だが、騎士になるための修業(馬も槍も、私の想像とは随分と異なるものだったが!)は、私がどうこうできるものではない。せいぜい励ますぐらいしかできないわけだが……。
そんなある日、ようやく連絡役の男と会うことができた。
まずは、来月は何も贈らないことを告げ、再来月に簪か手鏡を渡したいのだが……と探りを入れてみた。
彼はうなずいて言った。
「わかりました。誕生日ですね。どちらにするか、考えておいてください」
「やっぱりひとつだけか」
「そうですね。簪は、正式に従騎士になれたときに贈るのがよいかと思います。それまでは本格的な兜は着けないでしょうから」
「従騎士ってのがよくわからないけど、それっていつごろ?」
「見習いが、騎士と共に砦の外への騎行を許されたときですね」
「ふうん」
わかったようなわからないような……。
私が考えこんでいると、男が言った。
「言づてがあれば、今の内にお聞きしておきたいのですが……」
そうだった。
こっちも忙しいから、彼と次に会うのは少女からの手紙を届けにくるときになりそうなのだ。
本当は、もっとじっくり考えて、あちらの世界の細かいことを探れそうな質問を考えたかったのだが……。
とりあえず、「騎士エンドゥキ殿に森の奥の話を聞かれてはどうか? また、投げ槍は持ち手を工夫すべし」と伝えもらうことにした。
男は「少し長いですね」と苦笑いしていたが、伝えると約束してくれた。
「なにか思いついたら話したいから、一応、手紙が届く前にもまた来てくれないかな」
「わかりました。寄るようにします。では今日はこれで……」
「あ、待った」
「なんでしょう?」
「ひとつ聞きたいことがあったんだ。寄付金の追加はできるのかな」
もう少しして、仕事のお金がまとまって入ってくれば、少しは生活にも余裕ができる。最初に寄付したささやかな額ぐらい、追加できるのだが……。
「もちろん可能ですが。前回の寄付金は砦の修復に使われています。それとは別の名目が必要になってきますね」
「その辺は君らに任せるけど、もし可能なら、騎士になってからの彼女の生活の支えになるような資産にできるといいんだが……って、まだ出せないけどね。そのうち……」
「了解しました。こちらでも検討しておきます」
そう言って、彼は去っていった。
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