超時空薄幸児童救済基金・C

#小説 #連載小説 #ゲーム

(はじめに)

 マガジンの冒頭でも簡潔に説明していますが、奇妙な慈善団体に寄付をし、異世界で暮らす恵まれない少女の後見人となった「私」の日記です。
 ただし、こちらのアルファベットがついたシリーズは、「私」が新たな寄付をして後見人となった、「ふたりめの少女」のシリーズで、「ひとりめの少女(数字がついたほうのシリーズ)」とはシステムが異なります。

約二ヶ月の間に、時々届く少女からのメッセージ部分と、それに伴う「私」の感想部分が有料となります。
 メッセージは、Twitterのつぶやき的に毎日……は厳しいかもしれませんが、数日に一回は届く予定です。

「ひとりめの少女」のほうを読まなくても、こちらだけで独立して楽しめるものにするつもりですが、両方読むほうが楽しめます(絶対に!)。

では、奇妙な「ひとりPBM」的創作物をお楽しみください。

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 メイシアへの返信はメールで――と、連絡役の男にも言われていたので、彼の訪問を待つことなく、二ヶ月ごとの返事を送ることにした。
 もっとも、私のメール自体は超時空薄幸児童救済基金のアドレスに送られ、そこからなんらかの方法で彼女の船に再送信されるわけだが。

 彼女からの通信は航海の合間に断続的に送られてくるので、二ヶ月のタイミングで「寄港した惑星での交易品の候補を報せろ」とは伝えておいたが、今回向かっている星は、限られた産物しかないようだった。
 しかも、私は彼女の世界のことをろくに知らない。メイシアからのメールだけを手がかりに推測するしかないのだ。
 その産物というのが、岩石と砂漠の星で飼育される特殊な家畜ディロイム――ごく希に、体内に高価な鉱石(名前からしてそうだと思う)ヴォルクォーツを生成するらしい。
 ヴォルクォーツが何なのかもわからないが……とにかく、宇宙船が超光速航行をするための装置を作るのに必須の物質らしい。メールでの彼女の口ぶりと、その用途から察するに、極めて高価な物質にちがいない。
 成長したディロイムは処理され、皮と肉が主な交易品になるそうだから、生産者(もしくは加工業者)が、ヴォルクォーツを見つけるのだろう。もっとも、何千何百と処理されて初めて見つかる「宝くじ」みたいなものらしい。
 ディロイムを丸のまま買い取ることもできそうなのだが(生きたまま運ぶ?それとも死体を?)、それだと中にヴォルクォーツがあった場合、それも手に入れられるわけだ。
 ただし、メイシアが自分で解体するか、施設を借り人を雇わなければならないわけで……。もしヴォルクォーツが見つからなければ、そうした経費が全て無駄になってしまう。
 軍の受注輸送で一時的にせよ現金が手に入るのなら、ここはビジネスチャンスだ。やりようによっては大きく黒字にできる気もするのだが……。
 いや、しかし、彼女たちの世界に比べたら未開の一惑星に住んでいて、べつにビジネスマンでもなんでもない私が、指示していいものなのだろうか?
 メイシアにとっては今後の生活に関わる問題なのに……? そう思うと気が引けてしまう。なんとアドバイスしたものか。

 いや、ここは発想を逆転させるべきだろうか。
 メイシア船長は行動力のある女性(少女ではないはず)だ。
 たとえ私がアドバイスしなくても、無謀な賭けに出てしまう気もする(そこが、すっごい心配なのだ!)。
 だったら、私のほうから先に、最も冒険的なアイデアを提示してしまうほうが、かえって危機を回避できるかもしれない。

 そう、短い彼女のメールから、私はある可能性を思いついたのだ。
 かなり突拍子もない推論なのだが。
 もし、この推論が当たっていれば面白いことになるはず……。
 違っているなら、彼女は皮と肉を積んで旅立てばいい。それなら損はしないだろう。

 ……そう思いながら、私はメールを打ち始めた。


ジョン・スミスより メイシア船長へ。

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