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多文化共生と文化政策

最近のニュースで、共同通信社の消滅可能性自治体に関する記事が目に止まりました。
記事によると、民間組織「人口戦略会議」は、2020~50年の30年間で、子どもを産む中心の年代となる20~39歳の女性が半数以下となる自治体は「消滅可能性」があるとした上で、全体の40%超の744自治体が該当するとのことでした。
正式な報告書のリリースは、4月24日になるため、詳細はわかりませんが、最近人口減少に関する発表が多く目につくなったような印象です。

日本の総人口が減少する一方で、日本の在留外国人数は、年々増加しています。
法務省によると、2023年6月末の在留外国人数は3,223,858人(前年末比148,645人、4.8%増加)で、過去最高を更新しています。
在留外国人数は、2013年末が2,066,445人であったことを踏まえると、ここ10年間で、約100万人増加し、約1.56倍になっています。
実生活の感覚としても、コンビニやマックをはじめとした小売店の店員さんに加えて、最近は介護業界等でも人材の獲得に苦労しておりミャンマー等の東南アジアからの技能実習生に頼っているという話も多く聞くところです。https://www.moj.go.jp/isa/content/001403955.pdf

たとえば、私が住んでいる出雲市でも外国人住民の数は、年々増加しており、2024年3月末時点で4,553人。2014年3月末時点は1,969人ですので、この10年間で約2.3倍となっています。
このように外国人住民が増加するにつれて、学校教育の現場も様子が変わりつつあります。出雲市内で、日本語指導が必要な児童生徒数は、2012年5月時点は23人でしたが、2019年12月時点では、168人にまで増加しており、教育現場での日本語指導員や通訳・翻訳支援員を配置が課題になっています。

こうしたなかで、出雲市では、出雲市多文化共生推進プランを策定し、各種取り組みを進めています。
現在2期計画(計画期間:2020年〜2024年)を実施している最中で、次の4つの柱のもと、各種施策に取り組んでいます。
(1)多文化共生の地域づくり
  (地域社会での多文化共生の意識啓発、地域社会への参加促進等)
(2)コミュニケーションの促進
  (情報の多言語化と情報伝達手段 の確保、やさしい日本語の活用促進)
(3)安心して暮らせる地域づくり
  (子ども・若者支援の充実、働くための環境整備等)
(4)多文化共生社会の実現のための体制整備
  (行政・民間団体相互の連携強化)https://www.city.izumo.shimane.jp/www/contents/1597899173930/files/plan.pdf

こうした外国人住民を巻き込んだ、多文化共生社会の実現にあたり、上記のほかにも文化政策の重要性が増してきていると感じています。
特に文化政策というと、劇場・博物館・美術館等の文化施設の整備や、国際的文化交流、音楽家等の招聘といったイメージが強くありますが、その範疇には地域の伝統行事・伝統芸能の振興等も含まれます。

多文化共生社会のための取り組みというと、どうしても多国籍料理が食べられる「食フェス」や日本人を対象とした「異文化体験」といった、外国文化を日本人に紹介するものが目に入りますが、地域行事や日本文化を外国人住民に対してアウトリーチする仕掛けも、一方では重要です。
特に地域行事や日本文化に対する助成や支援は、多文化共生と縦割りになることが多くあり、これらを連動させる政策目標の設定、政策運用が必要になると思います。

これからの地域を考えるうえで、外国人を経済活動、そして地域行事の担い手として迎え入れることは必須であり、地域に長らく住む日本人の住民と、外国人住民の双方向の交流を持続的に深化させていくことが、人口減少社会の日本においては鍵になると思います。


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