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思考のしおり

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#読書

眠れないときに読む本たち

いつまで経っても寝付けないという経験は誰にでもあるものだと思うが、眠気を待つまでの間にちょうどいいのは読書である。テレビなどのように余計な神経を刺激する心配もなければ、酒のように健康を害する恐れもない。 ところで、私は眠くならない理由は大きくふたつに分けられる。ひとつは何かを考えてばかりいるときであり、もうひとつは1日を終えるにはどこか物足りないと感じるときである。 考え事が終わらない日のお供は堺屋太一の『豊臣秀長』と決めている。これは豊臣秀吉の弟であった秀長を題材とした

見捨てられた絶望:『1984年』

小説は自由である。過去の黄金時代を描いてもよいし、来るべき暗黒を表現しても許される。『1984年』はまさに後者であった。現代の監視社会に対する「予言の書」などど評されることも多い。 しかし一方でこれを単に社会的な寓話として扱うのは間違いである。オーウェルはそのもう一つの代表作である『動物農場』から最後の『1984年』に至るまで芸術を忘れなかった。 オーウェルの巧みなところは「禁じられた恋愛」という、芸術においては定石ともいえるテーマを用いながら、全体主義という政治的に新し

「おすすめの本」問題

趣味は何か、と聞かれれば読書と答える。出費の多くを本に向けているのは事実であり、「読書とは何か」などといった説明も必要ない。しかし、ではどんな本を飛んでいるのか、さらにはおすすめの本は何かと言われるの返答に困ることになる。 ひとくちに本と言っても内容は千差万別である。相手に告げる本を決めるには、まずジャンルを絞らなければならない。そう考えると、気軽に手に取りやすく、専門性が低いものを選べるという点で小説が抜きん出ている。 問題は小説自体がさらに多種多様であることだろう。歴

20代の読書論 - 「自己投資」か「幸福」か

この文章は一種の「読書論」と言えるかもしれません。すでに読書についての記事や本は多くあります。ショウペンハウアーの『読書について』や、最近だと読書猿さんの『独学大全』が有名ですね。(余談ですが、このふたつは対照的な態度が見られると思います。) 上に述べたように偉大な先人の著作があるのは重々承知ですし、それらの恩恵もかなり受けているのですが、今回自分なりに考えをまとめておきたいと思います。読者の方々の考える素材にしていただければ幸いです。 読書の定義ここで一度「読書」の定義

「意識と本質―精神的東洋を索めて」を読んで

物事の「本質」というものは時代を問わず哲学の主題のひとつとして扱われてきました。プラトンのイデア論は言うまでもなく、またこれに対する考察だけでも数多くあります。 しかし、同じ「本質」についての議論で言えばイスラーム哲学や中国、日本などでのいわゆる「東洋」の思想について触れた本は比較的少ないものです。「東洋」という分類が正しいかはひとまず置いておくとしても、やはりこれらの思想は馴染みがないという人が多いのではないでしょうか。 また、最近はマインドフルネスや瞑想ブームで禅の考