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今ここに集中

こんばんは。9月に入ってもまだまだ暑い日が続いてますね。思い返せば、今年は7月の頭から待ったなしで最高気温をたたき出し続けるような日が続きましたね。気温37度なんて初めて体験しました。そんな日々も終わりが見えかけているような、夏の疲れが出やすい時期、ご自愛しつつ参りましょう。

今日は前回と同じく、下地のお話です。というのも、レッスンを受けて下さる方で、「金継ぎって、金というよりかは、漆なんですね」と仰る方が結構多くいらっしゃいます。うるしを用いた金継ぎをやったことがある方ならお分かりだと思うのですが、そうじゃない方は、「?」と思われる方も多いかと思います。


このように、仕上がったもの(金継ぎが施された器)を見ると、金の箇所に目が行くかと思いますが、金は全体のうちの1割と言っても過言ではなく、表面の薄い膜のようなものなのですね。お化粧で言うと、最後のフェイスパウダーのようなものでしょうか。薄いヴェールのような感じです。


では、それ以外は何かと言うと、この写真の黒い箇所。これが漆で作ったパテでして、それが全体の9割なんです。
最初に書いた、「金継ぎって、金というよりかは、漆なんですね」という意味が少しお分かり頂けたでしょうか。

この下地作りの工程は、パテを少しずつ埋めてゆき、固まったら表面を研いで整え、またパテを埋めて、固めて研いで、、、を繰り返すのですね。そうすることで、漆独特のふっくらとした柔かな質感が出てきて、最後に金を蒔いた際に、表面が綺麗に光ってくれるようになるのです。

この作業をどこまでやるかで、仕上がりが全く異なってくると私は思っています。
何度も何度も重ねていると、手間をかけた分、少しずつ漆らしい柔らかさが出てきて、手で触っていると本当に気持ちよくなっていくのですね。私が漆に魅了されているのはこの部分なんです、サラサラ、ふんわり、しっとり、なんとも言えない質感になってきます。

とはいえ、レッスンでは、そこまで回数を重ねることを強要はしていません。
最初のレッスンは、一通り金継ぎをやってみて欲しいなという気持ちでやっています。でも、もし金継ぎや漆にはまった方には、是非、重ねた漆の気持ち良さを体感してもらいたいなぁとも思っています。多分、他の素材には出せない質感だと思います。

と、そんな風に思っているのですが、たまにこの下地作りの作業が嫌になってしまうことがあるんですね。やってもやっても終わらない、と泣きそうになることも。。で、最近、考えてたんです。辛い、と思う時はなんでなんだろう、って。
そしたら、昨日答えが出たんです。

昨日は、日曜日。レッスンもお休みだし、家族も外出をして晩ご飯の事も考えなくて良いし、自分1人で家に居ましたので、「よし、今日はのんびり自分の器のお直ししてみよ〜」と、のんびりした気持ちで手を動かしていたところ、気づいたんですね。

「いつまでに仕上げなければならない」、「今日はここまで終わらせたい」
いつも考えていることは、そういった結果をずっと考えていたんですね。
だから、「いつまで経っても終わらない」、「やってもやっても終わらない」などと考えてしまうのだな、と。

昨日みたいに、ただただ、目の前の素材を感じて手を動かしている時は、
やはり、漆がどんどん心地よく整ってくるのが、目で見ても手で触っても気持ちいいって思えて、それ以上特に思う事もなく、いい時間だなぁ、と。目の前のお茶をただただ味わう、みたいな。それをマインドフルネスな状態と言うのでしょうか。

私自身は、お仕事として器をお預かりして納期をお伝えして仕上げていっていますし、レッスンを受けられる方も、レッスン時間内に仕上げて、と、どうしても期限を設けるような形にはなってしまうのですが、
私もレッスンを受けられる方も、出来たら、今ここだけに集中して、うるしという素材の感触を楽しめる時間になったら良いのでしょうね。

そんな気持ちで蘇った器は、きっともの凄いエネルギーを携えて、破損する前よりもっと、お気に入りになるに違いない。そんなことを考えた週末でした。
お料理も同じですよね、「何時までに食べなきゃいけないから早く作らなきゃ」と思えば、作っている過程は辛くなる事もありますが、目の前の素材と目や手で対話しながら火が通っていく過程を楽しんで作ると全く違う時間が過ごせ、結果めちゃくちゃ美味しいものが作れるといったような。

そんな時間も心の余裕がない、と言うのが私を含め、皆さんもきっと抱えている悩みだったりするのかもしれませんが、
少し、時間と心に余裕を持って、結果ではなく、今ここを楽しめることが少しでもあると生活がより楽しくなりそうな気がしました。

手短に書くつもりがなんだか長くなってしまいましたが、今回も、最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました◯






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