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お口の老化「口腔機能低下症」

今週は「お口の老化」についてご紹介します。
最近「ムセることが増えた」、「食事が食べにくい」あるいは「咳払いが増えた」、「食べ物が喉に痞(つか)える感じがするようになった」など、ちょっとした変化でも感じられることはありませんでしょうか。このような変化はお口の機能が老化し始めた兆候です。
噛む、飲み込む、話すなどのお口の機能は加齢とともに衰えていきます。例えば、喉にある喉頭蓋の弁の動きが悪くなるとムセや咳払いをしやすくなります。また、舌の力が弱くなったり唾液の分泌量が減ったりすると食べ物が喉に痞えやすくなってしまいます。このような口の変化は「口腔機能低下症」と呼ばれ、全身の健康を損なう最初の段階で起こるとされています。
お口の老化は早めに気付けば予防も行いやすいのですが、自分の口の機能が衰え始めていることに気づかない方がとても多いのが実情です。
次のチェックリストでまずご自身のお口の老化の具合を確認してみてください。

お口の老化チェックリスト

回答にAが1つでもある方は要注意です。また、Bが複数ある方もお口の老化が始まっている可能性が高いです。
お口の老化=口腔機能の低下は食事に影響が出始めます。物を食べるには歯とともに唇や頬、舌、喉の周りの筋肉が連動することで食べることができます。歯がたくさん残っていても、舌や喉の動きが悪くなると飲み込めなくなり食べることが難しくなります。
きちんと飲み込めなくなると起こりやすくなるのがムセや窒息、誤嚥性肺炎です。お口の機能が低下するとこれらのリスクが非常に高まります。
気管に入った異物を吐き戻すムセという行動は体にとても負担をかけてしまいます。若いうちはこのムセるという行為を行えますが、年齢を重ねるにつれてさらにお口の機能の低下が進むとムセて吐き戻す力が弱くなります。また、ムセることで血管が破裂してしまうこともあるくらいの危険性もあります。
ムセというのは異物を吐き戻す体の防御反応ですが、吐き戻すには喉の筋肉が関係します。異物が気管に入ってもムセて吐き戻せるうちは良いですが、吐き戻せなくなると窒息の危険が高まります。
誤嚥性肺炎は、通常は食道から胃へと進む嚥下がきちんとできずに、気管から肺へ食べ物が入ってしまったり、唾液に含まれる細菌が誤って気管から肺に入り込んでしまったりして肺炎を引き起こす病気です。頻繁にムセや咳払いをするということは頻繁に誤嚥の危険が起きてしまっているということです。また、寝ている時にムセるというのは気管に唾液が流れ込んでしまっているためです。
上述したように口腔機能が低下して食べるのが難しくなると栄養不足になり体力が低下して病気やケガをしやすくなり、ひいては寝たきりになるリスクまでも高まってしまいます。このように、口腔機能の低下は全身の健康を損なう要因となりかねません。お口の機能の低下を招かないよう、若いうちからリスク回避に努めるようにしましょう。
お口の老化である口腔機能の低下についてその兆候とリスクをご紹介しましたが、最後にリスク回避すなわち予防法となるエクササイズをご紹介します。
まずは「唾液腺マッサージ」。

唾液腺マッサージ

唾液腺マッサージはこれまでにも、ドライマウス対策や唾液の効果などでもご紹介してきましたが、口腔機能の低下予防にも効果的なのでまたまたご紹介します。唾液腺は耳下腺、舌下腺、顎下腺の3カ所あります。
耳下腺マッサージは指数本を耳たぶのやや前方(上の奥歯辺りのほほ)に当て、10回ほど優しく円を描くようにマッサージしてください。
舌下腺マッサージは顎の真下から舌を押し上げるように10回ほど上方向にゆっくり押し当てます。
顎下腺マッサージは顎のラインの内側のくぼみ部分3~4カ所を耳の下から顎の下まで順に優しく押します。目安は各ポイントを5回ほどです。
次にこちらも繰り返しのご紹介になりますが「あいうべ体操」。

あいうべ体操

あいうべ体操は口だけでなく、脳や全身にも好影響を及ぼしてくれます。あいうべ体操は、「あー」と口を大きく開く、「いー」と口を大きく横に開く、「うー」と口を強く前に突き出す、「べー」と舌を突き出して下に伸ばす、を順番に10回繰り返してください。これを朝昼晩の3回、計30回繰り返すことでお口周りの筋肉を鍛えることができます。痛くない範囲でできるだけ大きく口を開けることを意識してやってみてください。
最後に初めてご紹介するかもしれない「パタカラ体操」。

パタカラ体操

パタカラ体操は、「パ」「タ」「カ」「ラ」の音を声に出すことで、食事をする際に使う筋肉を鍛えられる体操です。パタカラ体操は「パ」…唇をはじくように、「タ」…舌先を上の前歯の裏につけるように、「カ」…舌の奥を上顎の奥につけるように、「ラ」…舌をまるめるように、を順番に各発音 を8回ずつ(ぱぱぱぱぱぱぱぱ、たたたたたたたた・・・)2セット繰り返してください。パタカラ体操を行うことで、噛むときや飲み込むときに使う筋肉を鍛えることができます。体操を続けていると、食事中にむせることが少なくなったり、飲み込みやすくなったりします。パタカラ体操は今回テーマにした飲み込む力(嚥下機能)の低下には特に効果的と言われています。
これらの体操はどれもテレビを見ながらなど行うことも可能ですので、是非日頃の生活習慣の1つに取り入れてお口の老化の予防に役立ててみてください。

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