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小説「死なない大人、死ぬ子供」

新しい時代には、死ぬことが価値あるものになるといい。私は、自分が騙されたんだと今ならはっきり思える。教室の机の傍で私をにらんでいたロシア人教師を今も覚えている。私はその女性とどうしても口を利きたくなかった。騙されるのが嫌だったのかもしれない、と今、思う。私たちは言ってみれば凄絶被害者世代で、今60以上の大人が凄惨な加害世代と、言えるだろう。勉強しなさい。勉強していい大学に入りなさい。そうすれば幸せに楽に暮らせますよ。その結果、子どもは、死に年寄りは赤ん坊を殺す世界がやって来た。年寄り死なずして若者を殺す。死ぬことが加害世代にとって価値あるものに成ればいい。お前らは私たちを騙したのだ。そして、吸いとるだけ吸いとって、カスはその辺に捨てるのだ。ゴミみたいに捨てられた時代。が、この先それが堆肥であればよい。腐った時代が次の若葉を育む肥やしに成ればいいのだ。だから、速く死ね、死んで時代の苗どこになれ、と強く願ってやまない。もうじき時代鐘が鳴る。焼却炉に火をかけろ!

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