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Spotifyに勝手にクリエイトされたジャンル10選

先日、Spotifyが勝手に命名したと推測されるチャンバー・サイケなどのサブジャンルについて書いたが、

その後も続々と、平静さを保つのが困難になるネーミングのジャンル名がSpotifyから出土してきたので取り急ぎご報告したい。


パーマネント・ウェーブ

エコバニ、パルプ、ブラーってそれは単にUKロックでいいのではという話だし、パルプとブラーが並んでたら「それはブリット・ポップ!」って怒り出す人が多分世界で5000万人くらいいると思うんだ。それにパーマネント・ウェーブって言われて想起するのはヤンキーみたいなくるくるパーマ、そこから連想するのはマーズ・ヴォルタのダブル・アフロくらいだと思うのだが、ダブル・アフロが入ってないしくるくるパーマの人々が目につかない。


バブル・グランジ

スネイル・メールが入っているが、バブルというキーワードで考えるのは20世紀の頃のバブルガム・ミュージックという、これも罵倒語に近い使い方を最終的にはされていたジャンル。ロックよりも甘ったるい、バブルガムみたいな、ガキが聴く音楽として扱われていたんだけど、グランジより甘いと言いたいのかそれともグランジより一瞬で消えると言いたいのか。

オルトゼット

ググって調べたら「スローじゃないエレクトロニカ」という定義が出てきたんだけど、Blü Eyesが入っていて、彼女のサウンドはエレクトロニカというより普通にシンガー・ソングライターでいいと思うのだが。Z世代のオルタナティヴを略してオルトゼットなのかと思いきや。

ジェンゼット・シンガーソングライター

Z世代のシンガー・ソングライター。中高年のシンガーソングライターと分けられてるのかよ!と思うとちょっと哀愁を感じてしまう。


ソフィスティ・ポップ

ソフィスティ・ポップってなにそれ頭の良さそうなポップ? スフィアン・スティーヴンスみたいなのでしょそれって思ったら全然違った。アズティック・カメラ、ペイル・ファウンテンズ、プリファブスプラウトってそれ普通にギター・ポップでよくない?っていうかブリット・ポップと同じく怒り出す人が数千万人単位で出てくるぞ。でもスパンダー・バレエもリック・アストリーも入ってるのでギター・ポップ中高年が混ぜると怒りそうだけど。

アート・ポップ

なんでチャンバー・サイケの分布図に載ってるパフューム・ジニアスがいちばん上に乗ってるんだよ! ちょっとSpotifyの中の人に整合性について詰問したくなる。セント・ヴィンセントとかビョークが入ってくるのはわかるんだけど、その辺はパーマネント・ウェーブには入らないのか?もういろいろ論理破綻がすごい。

エレクトロニコア

ポスト・ポスト・ハードコア・サウンドがエレクトロニコアだそうですが、ポスト・ハードコアの後ろにわざわざポスト・ポスト・ハードコアを作るのって反則じゃないですか?ハードコアというジャンルが確立され、そのハードコアの先にあるものとして提示したのがポスト・ハードコアなのだから、その先を提示するなら新しいジャンルとして確立できる明確なエレメントがないと名前をつける意味がない。


インディー・ポプティミズム

「インディー・ポップのサブジャンルで、前向きな、聴いてると元気になる、人をハッピーにさせるインディー・ポップ」だそうですが、ヘイリー・キヨコやキング・プリンセスが入ってるのでLGBTQ+関連?と思ったけどRa Ra Riotも入ってるし、アンドリュー・マクマホンも入ってる。アンドリュー・マクマホンはジャックス・マネキンサムシング・コーポレイトやってたんだから普通にエモなんですけど。エモのど真ん中。


プロトパンク

パティ・スミスとかイギー・ポップとか、普通にNYパンクで良くないですか?っていうか偉大なレジェンドたちに謝れ以外の語彙力がわかないほどの虚無感に襲われています。


インディートロニカ

インディー・ロック風味のエレクトロニカだそうです。Ra Ra Riotこっちにも入ってるけど、どっちなんだよって言ったら負けなんでしょうか。ちなみに一時期、多分日本の一部の人々の間だけだと思いますがネオアコトロニカと呼ばれたサブジャンルがありまして、エレクトロニカなんだけどアコースティックギターなどをフィーチャーした作品をネオアコトロニカと、一瞬呼んでいたけど続かず、消えたなあと思ってSpotifyにジャンルとして存在するのか検索したら存在しないようでした。

Spotifyにイニシアチブは取れない

過去にはシーンの実態のないところで名前がつけられてブームになったジャンル、サブ・ジャンルというのも存在はするが、Spotifyには無理だ。少なくとも、Spotifyが何を目指して勝手なジャンル名クリエイトを繰り返しているのか目的がよくわからないが、耳にしたこともないジャンル名を作ってそれの特集をゴリゴリ推してくるでもなく、ただデータの中にひっそり存在するだけでは定着はしない。そしてSpotifyはアーティストや作品を売ろうとしていないのだから、致命的に無理だ。

過去のキーワードがついたトレンドというのはTVやラジオ、雑誌などの媒体を通して作られたり、大きくなったりしてきた。それらは全て購買活動を促すものとして作用してきている。Spotifyの建前は「合法的な視聴活動を通してアーティストに分配を」で始まっているが、Spotifyでの視聴を購買活動に繋げるのが目的ではなく、Spotify側としては無料会員を含めた利用者数を増やし、更に有料会員数を増やすのが企業としての最優先であるのは明らかだし、それ自体を批判するものではない。ただ、企業が優先する部分と上記のキーワード作成行動には相乗効果も相互関係も見当たらない。ただの言葉遊びの域を出ていない。

まさにこれに尽きる。


今日の1曲
これこそパーマネント・ウェーブ。くるくるパーマ。


今日のパンが食べられます。