嵯峨嵐山のデイサービスセンターについて

松岡篤/CAMPUSによる設計監理の悠遊庵こころデイサービスセンター(以下、デイ)の内覧会に伺った。JR嵯峨嵐山駅の近くの福祉施設である。既存鉄骨平屋店舗の改修で、用途変更の申請不要となる200㎡未満のリーシングラインを設定して、内装を設計してある。建物内に境界を引く所作に土地区画調査士を感じる。(松岡さんは一級建築士であるとともに土地家屋調査士)

既存建物はL形で、一部を先行して入っていたテナント(ヤクルト事業所)が占め、約200㎡を本デイが占め、まだ余している床に他テナントが誘致されようとしている。L形建物は駐車場を共有している。駐車場と塀を隔てて畑があり、その周囲は戸建て住宅地である。畑の所有者が、景気の良い時代に畑の一部を宅地転用して本建物を建てたということらしい。そのおかげで、本建物は駐車場と畑越しに空が見える。のどかに空が見えることが嵯峨嵐山にいることを思い出させる。

ところで、デイは建築基準関係法令の児童福祉施設等の用途であり、都市計画法で定められるほとんどの用途地域に存在することができる。だからデイは、住宅地に入り込んで住宅と隣接したり、商業地に入って商店街と隣接したり、業務エリアに入って事業所と隣接したりする。用途地域の制約が小さいことによって、非福祉プログラムと不意に隣接することになる。

一方で、デイの利用者は自宅生活をしていたところ、一定の時間をデイで過ごすことになる。自宅での限定的な生活から、デイにて多くの他者や自宅以外の環境に接することになる。とはいえ、デイのプログラムは住宅での生活の延長であり、利用者も住宅の延長として滞在する。

ということで、用途と利用者は、地域や自宅との連続性をもつ一方で、地域や自宅生活との不意の隣接性をもつ。この連続性と隣接性の捉え方やチューニングに、設計者によるデイの設計主旨と事業者によるデイの運営主旨が試される。設計者と事業者の個性や知性や倫理が、ふたつの主旨に表出するところに、デイ建築の批評があるのだと思った。

このテキストで設計内容に全然言及できてないぶん、松岡さんのプレスリリースをお楽しみにお待ち下さい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?