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理学療法実習生に向けて

来週から理学療法養成校の学生さんが3週間の評価実習に来るので、改めて理学療法評価の流れについて、メモしておきたいと思います。


情報収集・面接

まずは対象者の情報収集。
<カルテなどの文面から収集できるもの>
・基礎情報
・医学的情報
・社会的情報
*文面の場合、その文面がいつ作成されたものなのか?という日付も重要。
<直接対象者に医療面接をして収集できるもの>
・主訴
・Demand(要望)やHope(希望)
<対象者のご家族や主介護者などから収集できるもの>
・家族や主介護者からみたNeed(ニーズ)≠真のニーズではない
・介護力
<実際に居住空間に行って収集できるもの>
・家屋情報
・生活動線

*ここでのポイント!
様々な情報は日々変わりうるものなので、収集した日付を記録。
将来的に変わることが予測される情報と、変わらないであろう情報とを整理しておく。
対象者本人や家族等からの情報収集は、信頼関係が築けていないと本音が聞けない場合もある。


検査測定・姿勢や動作観察

実際に対象者と1対1となって収集していく項目。
評価≠検査測定では無い。
検査測定してから動作を見る・・・ボトムアップ
動作を見てから検査測定を行う・・・トップダウン
いずれも一長一短あり。
<検査測定>
・バイタルサイン
・視診、聴診、触診、打診
・整形外科的検査項目(ROM-tやMMTなど)
・神経学的検査項目(BRSTや腱反射、感覚検査など)
・ADLやIADLに関するテスト、スコア
・参加状況に関するテスト、スコア
<姿勢観察>
・背臥位、左右側臥位、腹臥位など
・端座位、車椅子座位、長座位など
・静止立位、片脚静止立位、膝立ち位、四つ這い位など
<動作観察>
・左右寝返り
・起き上がり
・いざり
・立ち上がり
・歩行
・階段昇降(昇段、降段)
・動的な立位など
・セルフケア5項目(更衣、整容、清拭、入浴、トイレ)

*ここでのポイント!
検査測定も動作観察も、すべて客観的な情報。
記録する際には、考察を入れないように注意する。
姿勢や動作の観察時には、専門用語を使って記録する。
矢状面と前額面に分けて記録すると整理しやすい。水平面は最後。
姿勢観察や動作観察は「見る」だけでなく、「触りながら」確認する。


統合と解釈

ここが学生さんが一番躓く部分。
これまで収集した情報をまとめて(統合して)、
自分なりにどのように解釈したのかを記録する。
統合と解釈の目的は、「問題点を整理すること」と「真のニーズを導き出すこと」。
以下にその手順を示してみる。

<疾患の特徴やその予後について>

<現在置かれている対象者の参加状況について>

<行えていない参加に対して、必要となる動作を考える>

<必要となる動作の、現在の実行状況について>

<行えていない動作に対して、必要な心身機能を考える>

<必要となる心身機能の、障害されている部分と、残存している部分に分ける>

<対象者の個人因子について、促進因子と阻害因子に分ける>

<環境因子について、促進因子と阻害因子に分ける>
*ここまで行えば、ICFが埋まることになる

<心身機能の障害されている部分の、原因について考える>

<心身機能の障害されている部分の、予後について考える>

<対象者のDemandや家族のニーズと、専門職による客観的な予後予測も含めた真のニーズについて考える>
*これにより、理学療法の長期ゴールが設定される

<長期ゴールに向けた、短期ゴールを設定する>

*ここでのポイント!
統合と解釈の中で、太字にした部分は理学療法評価の要の部分であり、ここを追求するためには常に視野を広く持つことが重要である。
予後予測を行う際には、文献やガイドライン的な裏付けが必要になる。
文献的な裏付けをするからこそ、短期ゴールの期間設定がきちんと行えるようになる。
長期ゴールや短期ゴールを設定するためには、対象者やその家族等との合意が必要であり、真のニーズ≠長期ゴールとはしないことが重要。(ただの専門家の押し付けになってしまう)


総括

理学療法評価の流れについて書いてみました。
動作観察はサボろうと思えばいくらでもサボれるし、
ゴール設定をする際の文献考察もサボろうと思えばいくらでもサボれます。
対象者が「歩けるようになりたい」と言うから、「歩行能力の向上」と漠然なゴール設定をしているようでは、理学療法士は終わります。
様々な治療手技がたくさんありますが、そんな「方法論」よりも、しっかりと問題点や原因を突き止められる「評価」の方がはるかに重要です。
難しいし簡単には答えは出ないかもしれませんが、私たち理学療法士があきらめてサボってしまったら対象者はそれ以上良くなりません。
学生のうちはまだまだ出来なくて当たり前なので、確実に1つずつ理解できるように進めていきましょう。


↓動作分析を決してサボらない私たち理学療法士の勉強の場