オィディプスとアンジェラ Ⅳ
一週間が過ぎて包帯が解かれた
王 なるほど ほんとうに微かではあるが光を感じられる
また朧気な影絵を視るように物や人物の輪郭が浮かんで感じられる
これは大いなる天の意志だ・・・新しく生きよという天の意志だ
ア ン 王様 ようございました 私は嬉しいです
王 ああ そうだこの機会に互いの呼び名を改めたいと思う
オイディプスも王ももう不要だ、アンジェラも長い・・・
そこでお前はア ン・・・私は・・・私は・・・
ア ン ディプはどうですか?
王 ディプ・・・うう~ん・・・ディプ?
ア ン いや(オイディプス=膨れ上がった足)がディプ=二つを意味す
る名前に 変わるのです つまり・・・ディプは闇と光の二つの
世界を意味します
ディプ ア ン 君はこれまでの生が闇で 今からの生が光と云うのか?
ア ン はい そうです そうでなければなりません・・・
ディプ だが 今までは闇というより影の世界を生きてきたような気が
する
ア ン ・・・・・・で何時出発を
ディプ 支度を終えているならば今日の夜に発とう 今夜は望月の筈
季節は夏に向かっていく 良き日だろう?
ア ン はい ではそのように細部に渡って取り揃えて用意致します
旅立ち 西門の隠し扉に繋がる通路を歩く二人
ディプは右手にオリーブの古木で造った杖を持っている
ア ン 歩く速さはこれで大丈夫ですか?
頷くディプの左手を右脇に抱えて横に寄り添い連れ立って歩く二人
石畳の道はコツコツと音を立てるが・・・その音は耳障りでなく
ディプは今更ながらに音の世界が道しるべなのだと思い知った
ア ン 門を出ました どちらへ向かいましよう
ディプ とりあえず 一番近い港を目指しロードス島から南へ南へ
と・・・
ア ン では こちらとなります
ディプ 敬語はいい 普通に話してくれればいい
ア ン そうは云っても・・・急には無理というものですよ
二人は望月の光に照らされて微笑んだ
Ⅴに続く
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