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コロナ禍で病院経営が悪化 国は役割分担を考えた総合的な戦略を

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で全国の病院経営が悪化している。東京女子医大では夏のボーナス支給をめぐって看護師が一斉に退職を希望していると報じられるなど一部の病院では雇用問題にまで発展している。コロナ禍での病院経営悪化の背景にある構造的な問題と今後、国がとるべき対策について考える。

○全国の病院で経営悪化 大学病院は313億円赤字
全国の133の大学病院で4月と5月は合計約313億円もの赤字になっている。全国医学部長病院長会議が20日に調査結果を発表した。対象は国公立と私立の82大学の136の病院。このうち133病院で4月は191億円の赤字、5月は122億円の赤字だった。コロナによる“受診控え“で外来患者が4月は前年同月比で21%減少、5月は27%減少している。コロナ患者用の病床(ベッド)確保などが経営悪化につながっているという。夏のボーナスについては回答のあった83病院のうち70病院(84%)が例年と同じだが6病院(7%)が減額だという。会議の湯沢由紀夫会長は「病院経営の支援を盛り込んだ第2次補正予算を速やかに執行してほしい」と訴えた。

○コロナ禍での病院経営悪化の背景とは…
“病院と、病院で働く人のための団体”一般社団法人・日本病院会の相澤孝夫会長は経営悪化の原因として“受診控え”による外来患者の減少のほか、入院患者の減少、救急患者の減少、手術数の減少などを挙げる。さらに健康診断など一般検診が中止になったことも大きいという。内視鏡や心臓カテーテルなども学会からの呼びかけもあり自粛せざるを得ない。病院としては自粛要請があれば患者のために最大限の安全対策をとるため中止という選択になる。言わば飲食店が営業自粛要請によって休業するのと同じことが病院でも起きているという。

○国は総合的な戦略を立てて指針を示すべき
国や都道府県から「とにかく病床を確保してほしい」とだけ要請される。場当たり的な対応だと言わざるを得ない。今は病院が役割分担をして重症患者の受け入れや中等症以下の患者への対応することが必要だ。そうすれば病床もコロナ対策のために、ただ空けておくのではなく有効に使うことができるはずだという。それには国がもっと総合的な戦略を立てて指針を示すべきだという。また、手術をするにあたってPCR検査をする場合には保険適用にしてほしいと訴える。念のためにやる検査は自費負担になるため手術が延期されるケースが多い。病院が持ち出しでPCR検査をすることも財政的に難しい。「コロナは国難」というが、今のような曖昧な対応を続けると病院経営が成り立たなくなると相澤会長は警鐘を鳴らしている。

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