“軽やか”なフリーランスになる5つのヒント【イベントレポート|女性アントレプレナー発掘プログラム「フリーランスからはじめよう」】
9月末に会社を辞め、ライターと名乗り始めて丸2ヶ月。フリーランスと名乗ってよいのだろうか……というくらいの生まれたてです。平日の自由時間(というか業務時間)が尊すぎて……いろいろなイベントやセミナーに参加したりしています。
11月7日に開催された、女性アントレプレナー発掘プログラムの第二回「フリーランスからはじめよう」に参加してきました。登壇されたのは、「グローバル・カルテット」代表の城みのりさん。フリーランスのリサーチャー(そんな人たちがいるのね……というレベルで参加した)をチーム化してお仕事を請け負う会社を運営されています。
「自分らしい働き方」を探すヒントがたくさんつまった時間でした。
「好きを仕事に」みたいな耳障りのよい言葉はよく聞くけれど、「それができたらいいのはわかってる。どうやって!? ってのを教えてくれよ!」と思っているのはきっとわたしだけじゃないですよね……?(わたしだけ?)
城さんの血の通ったお話は、そんなモヤモヤを打開する、具体的なヒントが盛り沢山でした。せっかくなので、約1時間半での発見をレポートしてみようと思います。
■ヒント1「暗闇時代」は多かれ少なかれみんなある。わたしが低スペ・ダメ人間なせいじゃないのかも。
「30代は暗闇だったんです」と語る城さん。
ま・じ・か。闇長い!? 闇長いのわりとふつう!?
最初に思ったのはこれでした。
▲城さんのモチベーション年表。暗黒時代、わりと長め……!?(びっくり)
わたしは現在34歳。なにを隠そう、30歳手前からわりと闇。30を目前にして、なんとなく会社で与えられる仕事について違和感を感じ始めてグチ多めになり、30歳で出産。産休育休を経て復帰と同時に希望の部署に異動するも、やはり闇は晴れず。
会社の仕事にやりがいを見出せなくなり、さらに、時短勤務では目の前にある山積みのtodoを消化するだけで毎日が精一杯(その日のtodoをその日のうちに消化できないほうが圧倒的に多い)。自分のために使う時間はゼロ。こんな毎日でいいんだっけ……。
それは、自分が無能なせいでの闇だと思っていました。だってできる人はなんでも軽やかにこなして、仕事も子育てもしながら、習い事行ったりとかできているわけで。
仕事だってお金をいただいてやっている以上は求められていることはやらなくちゃ。できないのはわたしの力不足のせい。
城さんも、わたしにとってはキラキラワーママです。一部の選ばれし者。能力者。そう思っていました。
▲かっこいい城さんの経歴……! そして美しいお写真!!
でも、わたしから見たら超ハイスペ女子の城さんが「ハイスペ女子じゃないとフリーランスにはなれない。活躍の場がない」と泣き暮らしていた時期があったとは……。
それ、わたしも思ってたやつじゃん……。
▲曲線が感情の浮き沈み。雨部分のコメントにいちいち共感して首を縦にふりまくるわたし。
もしかしてわたしの抱えている闇は、無能なわたしだけのものではなく、キラキラ女子たちも通ってきた道なのかも。先の見通しなんてゼロだけど、いつかは霧が晴れる日が来るのかもしれない。
わたしの数年後の姿が城さんのように輝いているってことも、あるのかもしれない。
恐れ多くも、最初の発見は、城さんの姿に明るい未来を見たことでした。
まさか自分がキラキラハイスペ女子の姿を重ねる日がくるとは思ってもみなかったのに。
まずは、「低スペ」を言い訳にするのをやめよう。城さんの紆余曲折話は最初の数分でしたが、大事なマインドセットができたのでした。
■ヒント2 「自分にとっては当たり前のことが、誰かにとっては当たり前のスキルじゃない。売れる「一芸」は、自分の当たり前の中にある。
得意なことを仕事にしている人って憧れます。でも、お金になるくらいの「得意」って、相当な技術じゃないとダメ。フリーランスって得意をお金に変えられるくらいに一芸に秀でていないと、食べていけないでしょ?
……と、思っていました。
前職が編集職だったので、出会うフリーランスの方は皆さんクリエイティブなスキルを持っていました。カメラマンさんしかり、イラストレーターさんしかり。そういう特殊技術があるからこそ「売れる」、つまりフリーランスになれるのだと感じていたのです。
城さんの得意は「資料作成」と「調査のディレクション」。
▲城さんの軸。特に「資料作成」が得意とおっしゃっていました。3つめの「企業研修」も資料作成のコツなどが多いとのこと。
2つ目の発見。
それは、失礼を承知で書いてしまうと、「それって売れるんだ!」ということです。
売れるスキル(得意)の見方が大幅に変わりました。
資料作成は、わたしも前職で死ぬほどやりましたが、本当に苦手。でも、下手くそだけどできなくはないんです。逆立ちしても芸術的な絵はかけないけれど、資料はごまかしごまかしなんとか作れる。ビジネス系のスキルってそういうものが多い気がします。
だから、まさか、それが「売れる」スキルのひとつの選択肢になるとは夢にも思わなかったのです。
▲質疑応答の中での城さんの言葉のメモ。
わたしにも、多少得意なことはあります。例えば、文章を書くのがまあまあ早いこと。文章を書くハードルが低いこと。こんなこと書きたいな、というネタがぼんやりと浮かんでくること。企画とセットでメッセージを考えること。文章だけでなくレイアウト込みで提案ができりること。でも、作家やコピーライターのように名文や名コピーが書けるわけではない。イノベーションが起こせるようなスーパーヒット企画を書けるわけでもない。
そのレベルで得意って言うのはおこがましいにもほどがあるし、それこそ文章なんて誰でも書こうと思えば書けるものだから「売れるスキル」ではないと思っていました。
だから講演会の後、城さんに
「Twitterの140字でもわたしにとっては苦行です。伝えたいことはあっても文字にするのがハードルがすごく高いんです。書くことが苦じゃないこと、それは才能ですよ」
と言っていただけたとき、「え! まさか!」と耳を疑いました。
こんなことで喜んでもらえるんですか? こんなことでお仕事のチャンスとかももらえるんですか? と。
そして気づけば、そんな城さんの言葉に調子に乗って「チャンスがあればわたしに何かせてください!(抽象的……!!!!)」と志願までしてしまっていたのです……!
「得意」のハードルって思ったよりも低いのかもしれない。
たぶん、城さんにとってのディレクションや資料作成は、息をするようにできること。でも、他の誰かにとっては喉から手が出るくらい欲しいスキルです。
わたしにとっての「得意」は、誰かのメッセージを言語化して、別の誰かに届けるための文章を書くことなのかもしれない。それは、それは必要としている人を探せば、誰かの役に立てるスキルなのかもしれない。そう思うと、俄然やる気が出てきます。
みんなそれぞれ得意なことはあって、でもそれは何の苦もなく気づかないうちにやってしまっていることだから、得意と自覚していないだけなんだ、ということに気づかされました。
まさかこんなことで人のお役に立てるの!? ということの中に、自分の得意が眠っている、自分の才能が隠れているかもしれないと思うと、一芸のないわたしでもとても希望が持てたのでした。
■ヒント3「苦手」はさよならしてしまっていい!いや、さよならしたほうがいい! 弱みを克服する時間はないのだから!
「営業苦手なんでやめました」
「イベント企画とか苦手で負担が大きいのでやめました」
「知らない人にたくさん会ってしゃべるの苦手なんで採用イベントとかオンライン説明会とかやめました」
と語ってくれた城さん。なんて軽やかなんでしょう!!
あまりの軽やかさ、執着のなさに、会場全体から「ほう……」とため息が聞こえたような気がしました。
▲城さんが手放したことたち。具体的!
「好きなことや得意なことに特化する分、苦手なことは手放します。苦手を克服する時間なんてないですから笑」
そういわれると、確かに。
▲「弱みを手放す」話は、「明確な強みをもつこと」の一部
明確な強みを持つことが大事なのは、もちろんわかる。
でも、すなわち弱みを早く手放すこととつながっているとは。
それは、「手放してもいい(本当は手放さないにこしたことはないんだけどね)」という消極的な選択ではなく、むしろ積極的に手放した方が良いのかもしれない。
誰だって苦手は放置したい。だけど、学校で教わったじゃないですか。「苦手は放置してはいけないよ。学びは積み上げのことが多いから、苦手があるままだと先に進めないよ」と。算数のくり上がりくり下がりにつまずくと、その先の掛け算割り算筆算すべてつまずく、みたいな。
わたしは、自分の苦手なことを見るのが大嫌いなので……得意なことを伸ばしていきたいと願って生きてきました。わたしも「営業」苦手です。取材は好きだけど、人脈作りのために異業種交流会とかに参加するとかも、本当に苦手。
でも、さすがにフリーランスになって、「営業」を手放してしまうと、どうやってお仕事もらったらいいかわからないし、ライターは人脈命みたいな印象があったから、きっと交流会とかに参加して名刺配ったりしないといけないんだろうなと思っていました。
苦手だけど、きっと○○すべきなんだろう。○○したほうがいいんだろう。ということは山のようにあります。でも、苦手なら、手放してよい。もっと柔軟に広い視点で考えると、それに代わるやり方はきっとたくさんあるはず。
▲講演中にとった、わたしのメモ。営業しなくてもお仕事もらう方法あるって知らなかった!
城さんのグローバル・カルテットの場合、お仕事の受注やメンバーの採用は、思いに共感してくれた人からつながることが多いとのこと。
▲グローバル・カルテットのミッションとビジョン。
チームで仕事をするから短納期の仕事もクオリティ高くできる。世界にリサーチャーがいるから、時差を利用して翌朝納品に対応できることもある。
そうすると、次もまたお願いしたいとか、紹介してもらってとか、新しい仕事につながっていく。そのスタイルに共感して仲間も増えてくる。
城さんの、苦手を手放したスタイルは、とても自然で無理がなく自由に感じました。
諦めではないのです。積極的に手放し、他のものを得ている。
目の前にある「苦手だけどやらないといけないこと」を、「それ本当にやらなきゃいけないこと?」という目線で見直すと、もっともっと足取り軽く、自分らしく、生きることができるのかも、という発見でした。
■ヒント4 肩書きを失うのは怖くない。「やってみればいいんだ」という軽やかさ!
会社員時代、会社名の入った名刺があれば、会いたい人と会うことができていました。無名のイッパンピーポーのわたしでも、会社名があれば、まずは話を聞いてもらえる。
フリーランスになって2ヶ月。失ったもので大きいと感じたのは、この名刺でした。
わたしは取材が趣味みたいなもので、プロフェッショナルの話を聞くのが大好きなんです。有名無名問わず、その分野の詳しい人の話はわたしにとって人生の栄養のようなもの。
会社員編集者のときは、会社名を使って、それを仕事として実現していたわけです。
フリーランスになって、この人の話を聞いたら面白そうだな、こんな企画になりそうだな、ということを思いついても「いやいや、なんの実績もないわたしに時間を割いてもらえるわけがない」と諦めていました。生きがいを失ってしまった……。
その思いを晴らすために、講演会やセミナーには積極的に行っていたのでした。
そんなふうに思っていたので、城さんが、さらりと言った言葉に衝撃を受けたのです。
「フリーランスになりたてのころ、SNSでアポとって、ベンチャー企業の社長さんに会いに行っていました。わりと会ってくれますよ」
なんですと!?
今でこそ、たくさん取材も受けて、会社を立ち上げている城さん。ですが、まだ何者でもなかったころの城さんが、そんなことをしていたとは!!
そしてわたしはさらに驚くことになります。
「3ヶ月で100人くらいには会ったと思いますよ」
ええええ!? 想定していた「わりと会ってくれる」の5倍くらいの人数だった!!
わたしだけでなく、会場にいた人全員が目を丸くして
「それ営業苦手とか、ウソでしょ!?」とツッコミを入れた瞬間でした。
営業用に会ったわけではないので、「どういう仕事なら需要がありそうかのリサーチをさせてください」というお願いをして会っていたとのことでした。
▲城さんご自身は普通のことと思っているのか「ベンチャー企業の代表を訪ね歩く」の一言で済ませているけど、そんなレベルじゃない。
なーんだ、そういうのやってもよかったのね! 「無理」と思って諦めていた自分の頭の固さにびっくり!
誰からも禁止されていないのに、企業名の入った名刺か、フリーランスとしての実績がないと、誰にも自分からアポとったりしてはいけないと思っていたのです。
城さんいわく、会ってもらうためにはコツがあるとのこと。
・その方の発信をくまなくチェック。自分のやりたいことに共感してくれそうな人にアプローチをする。
・相手の行動範囲などを把握した上で、会いやすい場所や時間を提案する
・もともと営業のつもりではないので「売り込みに時間をください」というスタンスではなく、ニーズ調査をしたいというお願いにする
など。
今回の講演の趣旨ではないので深く聞けなかったですが、まだまだコツはありそうです。
要するに、自分のやりたいことを主張するだけでなく、相手の聞きたいことや相手の心地よい状況に配慮して慮れば、会社の名刺の有無とか肩書きとか実績はあまり関係ない、人間同士のやりとりなんだなと感じました。
アポどりは具体的な例でしたが、この他にも「できないに違いない」と思いこんで、やる前に諦めてること、あるかもしれない。
フリーランスにる前だって、「会社員だからできない」と諦めていたことだってあったかもしれない。
立場を理由に諦めるのではなく、やってみたら意外とできることってあるのかもしれないとのだから、頭固くせず、もっと気軽にふわりと行動してみようかな、と気づかされました。
■ヒント5 バリバリでもなく、諦めでもなく、ちょうど良い働き方はこの世に存在する
働き方改革とか、女性活用みたいな言葉が盛んに飛び交う昨今、会社員以外の働き方も様々と目にするようになっていきました。副業、リモートワーク、フリーランスetcetc 選択肢は増えているはず。それなのに、自分らしい働き方を探すことって、なんでこんなに難しいのでしょう。
わたしはワーママです。周囲にワーママの先輩はたくさんいます。でも大きく分けると、「ゴリゴリのバリキャリワーママ(起業家含む)」か、「今が自分は我慢の割り切りワーママ」かのどちらか。
バリキャリワーママになれる能力もキャパもない。だけど自我が邪魔して割り切って生きることもできない。それはわたしのわがままなのでしょうか。
城さんの最初の印象は「バリキャリワーママ」です。綺麗で、起業して、自分の腕で食べていて、キラキラしていて、何でもできちゃう! 完璧な人! そういう方なんだろうなと思っていました。
でも講演を聞き終わって、印象は変わりました。城さんは、この世に存在しないと思っていた「ちょうどいい」働き方をしていた方だったのです。
フリーランスでやりがいを見つけ、会社にしてそれを大きくされている方。
それはもちろんそうなのですが、野望を持って大きく大きくというよりは、等身大の自分に無理をせず、頼るところは頼り、お互い様の世界で朗らかに生きていらっしゃるように見えました。
例えば、「フリーランス」同士がチームを作って仕事をまわすって、わたしの発想にはなかったし、ビジネス系のスキルでの独立や起業もあまりイメージできませんでした。
城さんの軽やかさは、フリーランスはこうあるべき、自己実現はこうあるべき、みたいな一般的な「べき論」がほとんどなく、模索しながらも柔軟に、新しいやりかたを切り開いたところからきているように感じます。
わたしは、「バリバリ」と「諦め」の2つの方法しか思い浮かばなかったから、どちらかに自分の働き方を当てはめようと、無意識にしていたのかもしれません。
・自分らしい働き方が見つからないのは自分の能力がないせい
・一芸がないとフリーランスでは稼げない。「好き」を仕事にできるのは一部の限られた人だけ
・フリーランスになったからには営業をしたり人脈を作らないと仕事は来ない
・肩書きや実績がないとできることに限りがある
=そういうことを全て引き受けて、バリバリになれないのなら回れ右して諦めよ!
これが、講演を聴く前の私の頭の中。
そして、これが講演を聴き終えたあとの頭の中。
・どんな人にも暗黒時代はきっとある。無能を言い訳にして思考停止せずに前を見てみよう
・自分の中に当たり前にある「得意」を見直してみれば何かできることがあるかもしれない
・苦手だと思うことは、「したほうがいいこと」であっても勇気を出して手放したほうがいい
・わたしの立場ではきっとできないと思うことも気軽にやってみてOK トライに許可は必要ない
=わたしのちょうどいい働き方が見つかる気がする!!
そうして、できないこと思い込んでいた気持ちを開放して、気づけば城さんに、わたしにチャンスはないでしょうか、と一歩を踏み出していたのでした。
「フリーランスからはじめよう」という題目でしたが、「会社員」か「フリーランス」かという枠にとらわれすぎずに、軽やかに働くヒントが山盛りの講演。もちろん、生まれたてフリーランスのわたしにとって意識を変える発見ばかりでした。
籠ってばかりいないで、考えてばかりいないで、どこかに出向いてだれかの話を聞きにいくって大事。こういう時間が持てるよう、両手いっぱいに何かを抱え続ける日々ではなく、いつも左手は開けておきたいものです。
※レポート用に当日投影された資料は城みのりさんにお借りしました。快くご提供くださり、ありがとうございます!
※この記事はセミナーの内容の議事録ではなくわたしにとって印象深かったおはなしのみをピックアップし、再構成したものです。