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下田最前線⑭アロエが結んだ縁

 昨日、下田の爪木崎で開催されている水仙まつりに行ってきた。年に一度の恒例行事だ。楽しみは、見事な花とランドスケープ、出店している『ほうえい』のお寿司だ。
 その話をSNSにアップしたら、東京の友人がこんなコメントをくれた。
「水仙もだけど、アロエがすごーい!」
 雁首をそろえたように真っ赤な花を咲かせているのが、アロエである(写真)。
 そういえば、先日もイギリス人親子が空き家バンク相談に来た時に、
「アロエの花を見て、超感動した! ぜひ下田に移住したい!」
 という話になった。
 アロエの原産地は、アラビア半島から北アフリカで、このイギリス人親子は、その昔スペイン南部に暮らしていたので、見かけたことがあるのかもしれない。
 それにしても、アロエが移住の動機になるなんて…と思いつつ、NPO事務所で販売しているアロエ軟膏を塗ってもらい、他にもいろいろ買ってくれたので、アロエ入浴剤をプレゼントした。
 すると翌日、「母がアロエに大感動です。絶対に下田に暮らします」と感謝のメールが届いた。
 何というアロエの国際性、吸引力であるのか。
 アロエと言えば、もう一人忘れられない人物がいる。
 大学卒業後、熊本から移住したT君である。彼は熊本で竹工芸をやっていた。伊豆南部も竹の産地だ。竹工芸をやってみたい。
 僕が買ったのが、竹で作ったランプシェードだ。ナイーブな曲線が、T君の性格を物語っているようで気に入ったのだ。
 しかし竹工芸で食っていくのは至難の業である。竹の産地の伊豆であっても、生活用品に留まって、民芸にまで発展しておらず、土産物や特産品にもなっていない。
 T君は、郵便配達のバイトをしながら、結婚し、子供もできたが、難しい暮らしだったと想像できる。
 数年後、彼に会った時、破顔一笑、こう言った。
「実はアロエ栽培を継承して、暮らしのめどが立ちました!もちろん竹工芸もやっていますよ」
 昨年の夏、久しぶりに顔を見ると、真っ黒である。
「アロエ畑の草取りが、大変で!」
 アロエが縁を結んで、伊豆の地に根付くことができたようである。
 家に帰って、お土産の小あじ姿寿司を食べながら、T君の日焼けした逞しい姿が、思い出されて仕方がなかった。

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