記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

江戸幕府 開いた男の固い意志

恥ずかしながら、歴史は暗記ものだと思って避けてきたから、社会に出てからは少しだけ苦労した。どう考えても合理的な提案が阻まれたり、言い争いになってストップしてしまったりといったことを多く経験し、この理解不能な状況の理由についてひとしきりもがいた。今のところそれは「歴史的経緯」にあるものと思っており、いかに合理的に見える提案も、歴史的経緯からすれば不合理だったりしたのだと思う。

*** ここからネタバレを含みます ***

この映画はその歴史的経緯の、日本における最大のものを作った家康という人物が、その真意を直接語るという、あり得ない映画だった。彼は現代の帝国劇場の屋上から、見事なまでに発展を遂げた東京と、そして天守閣を失い皇居となった江戸城を眺め、消え失せてしまった自らの一大事業にあらためて思いを馳せ、その意味を私たちに語るのだ。

歴史とはその時代時代を必死に生きた、一個一個の生命の結晶であった。分量が多いためある程度表面的にならざるを得ないとはいえ、私たちはそのことを普段完全に忘れて生きていると思う。だから学校でも試験に出しやすく正誤判定もしやすい、事項の暗記に走るのであるが、これはおそらくとてももったいないことなのだと思う。

彼はその人生最大の事業である、江戸幕府を開いた意味について、その目的を次のように語った。

それは 安寧 であると。

鎌倉幕府が平安朝廷に対する反旗であり、室町幕府がその鎌倉幕府に対する反旗であったとすれば、江戸幕府はまさにその室町末期、相次ぐ戦乱でひとしきり荒れに荒れた世の中に対する反旗であった。

現代に甦った彼は熟考の末、安寧を思い、民衆に対する大政奉還を決意する。明治の大政奉還は将軍慶喜から天皇へなされたたが、令和の大政奉還は民衆に対してなされた。

彼は言葉通り、令和の民衆たちを信じたのだ。自らの生命を賭した一大事業である江戸幕府の趣旨を受け継ぎ、安寧のもとに暮らしていける社会を、彼らなら作れると、龍馬や西村と約一年のやりとりを通じて、そう思ったに違いない。

当然こんなものはフィクションには違いないのであるが、あるのが当たり前だと思って普段暮らしている、治安だとか、リーダーを選ぶ権利について、改めてその価値に気づき、大切にすべきと気付かされる映画にもなっていたと思う。

この映画を見た人だけでなく、見られなかった人にも、回り回ってこの発想が伝わり、結果として安寧な世の中が続いていけばいいなと思う。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?