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「何も予定がない」は恐怖だったり幸福であったりする、ということ

フランスで年金改革のデモが大変なことになっていて、パリの報道なんかを見ると支離滅裂な状態になっている。フランスのデモは日本の相撲と同じで「国技」なんだと言う友がいたけれど、今回のそれは、本当の本当にフランス人を怒らせちゃったようだ。

仕事が生きがい、生涯現役なんて言葉が好きな日本人とは対極に、どうしたら働かなくて済むのかに全身全霊のエネルギーを注ぎ込んでいる人たちがいる国で、引退できる年齢が先延ばしにされるのは、死活問題なのだと思う。
国がまだ働けと言ってくる。
のんびりワイン飲みながら散歩やガーデニングをするつもりだったのに。
ふざけんな!

そんなニュースを見ながら、ふと

最近の自分のくらしを振り返っている。


朝起きて

「今日は何の予定もないなあ」

と思う日が増えた。
そんな日は散歩やガーデニングをしている。
そして

「ああ、なんて幸せなんだ」

と思うようになった。



40代の頃は違った。
「今日、何の予定もない」は

恐怖でしかなかった。


フリーランス、もしくは自営業の人間にとって、

暇である

は、恐怖そのもので
このまま仕事がなくなったらどうしよう
今月の収入が減ったらどうしよう

という死活問題で
たまに何の締切もタスクもない日があると
不安で仕方ないので
無理矢理にでも用事を作って出かけたりしたり
その時間を有効活用せねばという強迫観念で
自分のサイトをリニューアルしてみたり
過去の掲載誌をまとめてみたり

暇なら休めばよいのに
律儀によく働いたなあと思う。


離婚してからは、依頼された仕事を断ることはめったになかった。
断ったら、次からもう仕事が来ないという恐怖があった。

離婚前は、まあ、よく仕事を断った。
これは私のする仕事ではありません
私の方針と違うので引き受けられません

今思えば頑固だったなあと思う。

自分の稼ぎが家族の生死(大袈裟か>笑)に関わらない場所でする仕事と
砂袋のように重いものを背負っちゃった状態でする仕事は
おのずと向かい方が変わってしまう。
子育て中はそんなわけで何でもやった。
当たり前だけれどめちゃくちゃ忙しかった。
そのおかげで今の心境になれたのも確かなのだろうけれど

なんというか

朝起きて

今日何も予定がないって

たぶん、もしかして
物心ついてからはじめてなのかもしんないぞ!

なんてことに気づいて、ちょっとびっくりしているんだった。
勉強も仕事もしなくていい。
そんなことは思いつく限り、いままでなかった。

なんてこった。
これって夢のようなことだ。


くまのプーさんの至言
「何もしないをしているんだよ」が、やっとできるようになって
なんて素敵なんだろうって、素直に思うことが増えた。


不安がよぎるとすれば経済的なことなわけで
あんなにちゃんと払ってきた年金を
これっぽっちしか払う気がないという国への憤懣はある。
フランス人の怒りはごもっともだし
日本ももっと怒らねばならないとも思う。

でも、人生ってその時その時で
本当に見え方が変わるんだなあってことに
今更ながら驚いたり感動したりしているんだった。

これから何が起こるかはわからなくて、期間限定なのかもしれないけれど、とりあえずは、ありがたい時間だなあとしみじみ思う。

今日も予定はない。
でも、今日は行っても行かなくてもいい場所に、ちょっと出かけてこようかな、と思います。
いま、ひとりランチの場所の検索中。

行ってきます。

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