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「クローン・ウォーズ」シーズン5の見所紹介(後編)

「スター・ウォーズ」ファンの間でも難所となっている「クローン・ウォーズ」をシーズンごとに、私なりの見所や楽しみ方と合わせて紹介しています。

昨今、ドラマシリーズでもクロスオーバーの機会が増え、より深くドラマ作品を楽しみたいという方には特にお薦めしたい傑作アニメシリーズです。

なるべく「結末は見てのお楽しみ」という形で物語のさわりを紹介していますが、完全なネタバレ回避にはなっていませんのでその点ご注意ください。

シーズン5は放送中に打ち切りが発表され、シリーズ全体での一端のクライマックスを迎えます。これまで起きた様々な事件が「モールの帰還(マンダロア内乱)」と「ジェダイ聖堂爆破事件(アソーカ離脱)」のストーリーアークに帰結します。

前後編に分けて省略無しで全ストーリーアークを紹介しています。

10話から13話の見所

青いタイトルロゴが特徴の《10話》〜《13話》ではドロイドが主役となり大活躍を見せます。「ジェダイ・イニシエイト編」に続きこちらも単体でお子さんが見ても楽しめる痛快なアークです。重くシリアスな事件が続くシーズン5にあって救いのようなお話です。

QT-KTは映画「クローン・ウォーズ」や過去のエピソードに登場したR2-KTの代役として登場しました。
R2-KTは501軍団同様に逆輸入的にスター・ウォーズの世界に取り入れられ、近年では続三部作にも出演。小児疾患の周知啓発や慈善活動に役立てられています。

11話》でハイパースペースを抜け彗星群に突入する様は「旧スター・ツアーズ」を思わせます。放送年は東京ディズニーランドでもリニューアルに伴ってクローズとなった年でした。

当初ドロイドを侮蔑し、自分の事だけを考えていたガスコン大佐が徐々に心変わりして彼らと信頼を築き敬意を抱いていく様子は、シーズン4のクレル将軍との対比にもなっているように感じます。

分離主義者が惑星アバファーで採掘している「ライドニウム」は、ドラマ「マンダロリアン」シーズン2で映画「恐怖の報酬」をオマージュした《7話 信奉者》でマンドーたちが輸送した危険な物質です。他にも様々な作品に登場しますが、このエピソードが初出となります。

相棒R2の無事を心配するアナキンですが、旧三部作(エピソード4〜6)ではR2とベイダーが対面する場面がありません。ちなみに3POはクラウド・シティのカーボン冷凍室でベイダーと対面しますが3POは記憶を消されており、バラバラにされて特徴的な銀色の右脚を判別できなくなっています。

14話から16話の見所

14話》からのストーリーアークは、上図の変遷を経てこれまで描かれてきた2つの悪の潮流がひとつに。

物語はシーズン5《1話》の続きです。
海賊の返り討ちにあい宇宙を漂流していたモールとサヴァージをデス・ウォッチが救助。回復したモールはデス・ウォッチをまず取り込みます。

次にモールが同盟を持ちかけた「ブラック・サン」は、1993年に大々的に展開したクロスメディア企画「帝国の影(シャドウズ・オブ・ジ・エンパイア)」の悪役 シゾールの組織として初登場。
14話》での再登場は20周年を記念しての事だったように思い返します。

「エピソード5 帝国の逆襲」直後を描く「帝国の影」では、パルパティーンがダース・ベイダーとシゾールにルークの抹殺を命じて競わせます。そうした事情からもパルパティーンが銀河の裏社会も支配している事が判りますが、本ストーリーアークの結末ではその経緯とも取れる展開が描かれています。

現在は正史から外されレジェンズの枠にある「帝国の影」(来年は30周年!)ですが、今年に入り実写化企画が水面下で動いているという噂も噴出しており、いずれ関連ストーリーアークとして重要度が更に増すかもしれません。

ドラマ「マンダロリアン」にも登場したボ=カターン・クライズが、なぜデス・ウォッチの後継組織(と考えられる)チルドレン・オブ・ザ・ウォッチに懐疑的であるのかはこの出来事=デス・ウォッチ離反が起源になっています。

更にドラマ「ボバ・フェット」や映画「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」に登場した「パイク・シンジケート」もこの出来事から登場です。

17話から20話の見所

「アソーカとアナキンの絆」にフィーチャーしたエピソード群
※一部ミス修正(2022-04-01)

ディズニープラスでは「反乱者たち」中心かつ簡素な形で「アソーカ・タノ登場エピソード」がまとめられていますが、シーズン5クライマックスをより深く味わうためには上図のエピソード群の視聴がお薦めです。

特に「第二次ジオノーシスの戦い」「ブレインワーム編」(シーズン2の5〜8話 ※4話はスキップ可能)だけでも事前に視聴するとアナキンとアソーカの師弟の絆の強さ、事件に繋がる背景がよく理解できます。

暗雲が漂うラストシーンは「シスの復讐」のあの場面の階段

17話》冒頭ではこれまでの経験で培ってきた二人の信頼関係が簡潔に描かれています。「パドメとの愛」に加えてこの「愛弟子との絆」がアナキンとジェダイの関係に亀裂をもたらすもう一つの大きな原因に。

『サボタージュ(1936)』『知りすぎていた男(1956)』『泥棒成金(1955)』『間違えられた男(1956)』

4つのエピソードの英語原題は全てイギリスの巨匠・映画監督のアルフレッド・ヒッチコックの映画タイトルのオマージュとなっています。
ヒッチコック作品さながらに冤罪に巻き込まれたアソーカの悪夢のような逃走劇が展開します。逃走の場面では90年代にハリソン・フォードとトミー・リー・ジョーンズ主演で映画化された『逃亡者』(元は60年代のドラマ)のオマージュも。

メイス・ウィンドゥの台詞によれば、長引く戦争でジェダイに不満が集まっていることが判ります。こうした世論は後々パルパティーンが訴える「ジェダイの反逆」を国民が信じ扇動されてしまう社会情勢を形成します。

20話》のジェダイ評議会の審判で、アソーカが追放を命じられた場面では頭のアクセサリーを千切られるカットがありますが、あのアクセサリーはパダワン時代のアナキンやオビ=ワンに見られた三つ編みに当たるパダワンの証です。頭髪が無い者のための代替と考えられます。

師弟二人の別れの場面、本音を吐露したアナキンに対するアソーカの言葉は吹替版では「気づいてた」/字幕では「知ってた」となっていますが、オリジナルの台詞では「I know」と表現されています。

真犯人は許し難い過激な手段を取りましたが、ジェダイが光を失いつつあるというその主張は一理あると認めざるを得ません。

「犯人はジェダイの可能性も」というマスターたちの小さな疑いが「アソーカ離脱」と「アナキンの評議会に対する失望」という大きな揺れを引き起こしました。
このストーリーアークではシスの関与は一切無いと考えられ、ジェダイ評議会自体が無自覚にアナキンをダークサイドへ歩み寄らせたと言えます。

一端のシリーズ完結

2012年 秋のシーズン5放送序盤にディズニーによるルーカスフィルム買収が報道されます。同時期に「クローン・ウォーズ」打ち切りが発表され、シーズン5が「最初」のファイナルシーズンとなり多くのファンが落胆しました。

"コンプリート"・セットと"ファイナル・シーズン"のブルーレイ
しかし真のファイナル・シーズンは7だった(そして『バッド・バッチ』へ・・・)

打ち切り発表の段階でシーズン6の制作は既に進められており、スタッフにとっても不本意な終わり方だったのだろうと考えられます。

実際にシーズン8まで脚本が完成していた事については、シリーズで脚本を担当していたブレント・フリードマン氏がTwitterで証言しています。

制作が進んでいたシーズン6のいくつかのエピソードは翌2014年に「ザ・ロストミッション(The Lost Missions)」という形で番外編的にまとめられて放送され、「2度目」のファイナルシーズンに。
現在シーズン6としてディズニープラスで配信中のものがこれにあたります。

また、シーズン5は本来22話の予定で、制作が見送られた2話はボバ・フェットとキャド・ベインの対決を描く内容であったことが後日公表されました。

ポリゴン・ピクチュアズの参加

シーズン5からは日本の老舗CGプロダクションであるポリゴン・ピクチュアズが参加しています。《1話 復活のシス》《3話 戦場を駆ける者たち》《17話 爆破犯を追え》の3話と、シーズン6でも2つのエピソードのクレジットに社名が確認できます。

次はシーズン6の見所紹介です。