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「キャシアン・アンドー」4〜6話を振り返り

ディズニープラスで配信中の「スター・ウォーズ」のドラマシリーズ「キャシアン・アンドー」第4話〜第6話(アルダーニ編)の展開を振り返ります。記事は視聴済みの方に向けた内容となっています。またドラマの性質上、映画作品のエピソード1〜6 と「ローグ・ワン」の視聴済前提にもなっています。あらすじは「さわりだけ」を意識してなるべくサプライズ要素や結末は書かないよう心がけていますが、完全なネタバレ回避にはなっていませんので映画作品も含めて、未視聴の方はくれぐれもご注意下さい。

これまでのあらすじ(フェリックス編)

プリ・モア企業区域で妹の足取りを探すキャシアンは、2人組の保安員を挑発し店の外で絡まれ反撃。はずみで一人を殺害したうえもう一人も射殺してしまう。フェリックスに戻りアリバイ作りと逃走資金確保に奔走するが、ティムの密告で指名手配に。翌朝、プリ・モアの戦闘部隊がフェリックスで捜査を展開。追い込まれたキャシアンはマックスが呼び出した謎の男ルーセンの手引きで脱出する。

第4話「アルダーニ」

ルーセンの船はフォンドアの運搬船ホールクラフト(改良型)であることが判明。第2話の振り返りでSWBF2にかけて紹介したフォンドアは古いスピンオフ「スターズエンドのハン・ソロ(1980)」が初出でした。古来造船所として知られる惑星です。

ルーセンがキャシアンに大金と引き換えに帝国軍の給料強奪を依頼。無事に戻れという意味も込めてカイバー・クリスタルを託します。

第3話の現在と過去が交錯しながらのラストシーンでマーヴァの船にあったのも多分カイバー・クリスタルなのでは?と思うのですが、「ローグ・ワン」でもジンがカイバー・クリスタルを持っていた事を考えると、『フォース』は登場しないであろう本作では『「フォースの意志 and/or 導き」を象徴するアイテム』として彼の人生の転機にさりげなく現れるのかもしれません。要注目です。

「SF映画術〜」のJ・キャメロンとの対話でG・ルーカスは「続3部作はマイクロバイオーム(微生物叢)の世界を描くつもりだった」「ウィルズ(=フォース)が宇宙をコントロールしている」と語っています。「銀河の情勢変化は登場人物たちの自由意志によるのか、あるいはあらゆる生物が持つミディ=クロリアンを媒介とした高次の存在による導きの結果か」という事を描こうとしていたとも考えられますが草案はディズニーにより却下されたため、その真意や詳細は謎のままです。

「クローン・ウォーズ シーズン6」より

最近のスピンオフではミディ=クロリアンは影が薄くなり(「クローン・ウォーズ シーズン6」以降、映像作品で言及されたのは「マンダロリアン」のみ)、一方でカイバー・クリスタルのフォース媒介の側面が強くなったと感じます。ミディ=クロリアンの設定は「エピソード1 ファントム・メナス」以降大変不評ではあったので、新体制下でファンが望むような形に移行した結果かもしれません。

「スター・ウォーズ」のテーマを「共生」としたルーカスは、我々人間自体が無数の微生物と共生関係にあることに加え、おそらく「利己的遺伝子論」のような考え方に基づいてミディ=クロリアンというアイデアを設定したと考えられるのですが、もし今後本当に本作に限らずフォース媒介をクリスタルにまるっと置き換えられてしまうとありがちなファンタジーの形になりそうで個人的には少し不満かも。

エピソードの内容に戻ります。アルダーニでは現地の反乱グループと5ヶ月かけた計画の決行3日前というタイミングで「クレム」という偽名を使い合流。
資金強奪のターゲットはなんと要塞の武器庫。

アーク毎にたくさんの登場人物が登場。

本作ではこれまでのドラマシリーズで多用されたLEDウォールを使った仮想背景ではなく屋外での撮影がメインとなり、グループのアジトの撮影はスコットランドのブレア・アトール北部の山岳地帯で行われました。アルダーニ要塞は同じくスコットランドのクルアチャン・ダム。ナショナルジオグラフィックのTwitterではこうしたロケーションにフィーチャーした紹介動画がアップされています。

トレーラーにも登場し物議を醸しているAK47。
SWでは既成の古い銃器もアレンジされて使われているものの AKは生々しさが。

そして実写では初となる帝国保安局(ISB)が登場。ISBはいわゆるFBIやCIAのような帝国の警察機関です。アニメ「反乱者たち」でゴースト・チームを執拗に追跡したエージェント・カラスもこちらの所属です。トニー・ギルロイはファンサービスはしないと公言しており、こうしたファンが興奮するクロスオーバーやイースターエッグは歴史・設定考証部門のルーカス・フィルム・ストーリー・グループによる仕事だと思われます。

モスマの会話の中にある「大宰相だいさいしょう」とはマス・アミダのこと

幼少時に支援者に引き取られた過去と、犯罪に手を染めて追い詰められ助け出されるも重要な作戦への投入が目的だったというキャシアンの境遇は「ローグ・ワン」のジンと重なります。このシリーズ、全体的に「ローグ・ワン」で描かれたことを情報密度を上げて反復/再構築しようとしているようにも。

だとすると「ローグ・ワン」同様に『反乱者/反乱同盟軍のダーティな側面』をより強調的に描く可能性も。善悪がハッキリしている事が魅力の旧3部作に直結するので、個人的にやりすぎ注意なんじゃないかなぁとは思ってしまうんですよね。


第5話「やった側は忘れる」

フェリックスのシーンでは一瞬「ハン・ソロ」登場のパトロール・スピーダー・バイクが登場。

タイトル原題は『The axe forgets, but the tree remembers.(斧は忘れるが、木は忘れない)』というアフリカ東南部に伝わる諺から。スキーンの台詞にもそのまま登場します。(翻訳では「やられた側の恨みは消えない(吹替)/やられた側は忘れない(字幕)」)

帝国や分離主義者による凶悪な侵略行為が反乱を生む事はこれまでも描かれてきました。しかし本作ではまだ明確な「悪」としての帝国の姿が見られません。一方でうっすらと現実世界の歴史における植民地統治を想起させる要素が台詞や舞台設定のなかに散りばめられてはいるようです。

シリルは実家で落ち込みながら母親に発破を掛けられる情けない姿。ブルーミルクも相まって「エピソード4 新たなる希望」の朝食シーンや、彼が見つめるキャシアンのホログラムはルークがレイアのホログラムを見る姿にも重なります。もしかしたら彼は「帝国のルーク(IF)」を隠喩したキャラクターだったり?ルークも近所のおじさんに会ってから話が動き出しますからね。

ルークが帝国に潜入するマーベル「スター・ウォーズ」28巻(10/12発売)
このタイミングでこの展開・カバーアートは偶然?

一方、モン・モスマは家庭でも仮面を被り孤独な戦いを強いられています。夫と娘が日常を送る世界は同時に彼女が覆そうとしている帝国の社会です。初登場となる娘リーダは母親の偽装的な生き方に気づきつつも、世間体を気にする政治家の母という誤解をしているという事なのでしょう。そうしたリーダの言動は「レイア・オーガナ オルデラーンの王女」(マンガ版は「レイア-王女の試練-」)のウォバニ編(3BBY)のレイアと重なるようにも見えますが、実際意識した演出なのかはまだ不明です。ちなみに第4話でモン・モスマが語っていた「交易路を断たれ飢餓状態に陥るゴーマン」はレイアの物語に登場するウォバニの状況と同様です。


第6話「目」

そしてアルダーニ編のクライマックスとなる第6話です。
作戦決行とともにこれまでの淡々としたドラマから一気に怒濤の展開を見せ、SNSなどでは大いに盛り上がり好評を得たように感じました。

個人的にはビジュアル面については通してクォリティが高く、マニアックなイースターエッグネタ・クロスオーバー要素で最初は引き込まれはしたのですが、視聴後にやはり色々とモヤモヤするポイントがいくつか。

まずは(少なくともドラマの中では)何も悪い事していないペティガー大佐が気の毒な件です。「子供だけでも解放せよ」と囲まれた状況で勇敢にもネミックに銃を向けますが、シンタに不意打ちされ殉職。司令官も排他的な態度や差別的な物言いはありましたが、現地民の儀式にちゃんと付き合ったりする様子が憎めません。

また、シンタは人質を見張る最中、要塞の異常に気付き金庫室へ向かう兵士の通信を聞きますがその事をヴェルたちに伝えません。コムリンクで警告しがちなSWのパターンに私が慣れすぎたのでしょうか。人質がどうなったのかも気になります。

そしてスキーンです。4話のタイトルと彼のセリフがアフリカの諺からの引用であり、もしかすると植民地支配や抑圧のアフリカ史に由来していて林業を営んでいた兄貴の苦しみと死に掛かっているのかなと感心したのですが、「嘘でした」となるとタイトルとして用いた言葉の意味や重みも変わってきます。

最後はキャシアンが怒りにまかせて射殺。もしアンチ・ルーカス的に「Cassian shot first.」をやりたいだけだったのなら無粋すぎです。

11月末の東京コミコン2022には演じるイアン・マクダーミドが来日。

コルサントでのルーセンは世を忍ぶ仮の姿になりますが、二つの顔を持つといえばパルパティーンですね。衣装や髪型も「エピソード1 ファントム・メナス」の時の彼を彷彿とさせます。反乱者も結局はシスと同じような手段で社会の転覆を企てるという表現なのでしょうか。ラストシーンでは「反乱者の攻撃があった」という話だけであの様子ですが、実はそもそも成功は期待しておらず火花を起こすことだけが目的だったという事?まだまだ謎だらけです。

あとは物語がシリアスになればなるほどドロイドやエイリアン種族を同じ画面に出しづらくなるという欠点も。

スパイ物ということでまだまだ色々な要素が二転三転しそう。キャシアン含め、登場人物の台詞の情報もすべて正しいとは限らないかも。後々スキーンの兄貴の話が本当だったという事もあるかもしれず引き続き展開を見守ります。


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