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疑問詞1つ、動詞1つからなる問い

この練習ができたら、次はこの問いを修飾してみます。

問いを修飾する

ちなみに修飾というのは辞書的には“ほかの部分の内容を詳しく説明すること”をいいます。

「ポストはなぜ赤いのですか?」を少し詳しくすると、例えば「このポストはなぜ赤いのですか?」などとなります。さらに「日本のポストはなぜ赤いのですか?」とすると、「この」よりも対象が広がりますね。そして何もない「ポスト」よりは、少し詳しい説明となっています。

また、語尾を変えてもよいかもしれません。「ポストはなぜ赤くなったのですか?」わざわざ完了形になっていると、昔は赤くなかったのかな、何か意図があったのかな、とイメージや思考の方向性がより鮮明になるでしょう。

まず、機械的に修飾しよう

ここではある一つの問いをさまざまに修飾するという練習を行いたいので、まず、先ほどつくった問いから一つを選んで、それを修飾していくことにしましょう。

修飾のしかたとしては、「この」や「日本」など言葉を加えるというものと、「赤い」を「赤くなった」のように言葉を変えるという、2種類の方法を練習しましょう。

• ねらい:問いを修飾する/修飾したことでのニュアンスの変化を確認する

• やり方:先ほどつくった問いを“元の問い”として、言葉を加えて修飾をした問いと、言葉を変えて修飾した問いの2種類をつくってみましょう。元の問いは2つ以上、修飾した問いはそれぞれ2~3個考えてみましょう。

例:ポストはなぜ赤いのですか?
→ 例:このポストはなぜ赤いのですか?

例:ポストはなぜ赤くなったのですか?

※自分の問いを挙げて修飾してみましょう

修飾による効果

さて、修飾された問い全体を眺めてみましょう。どんなことを感じたり、気づいたりしたでしょうか?

特に、元の問いと修飾された問いを比べて、その問いを自分に投げかけられたら、どのように考えを巡らせるか、という点に注目して振り返ってみましょう。

まず、「ポスト」という言葉に「世界の」とか「日本の」とか「この」がつくと、注目するポストの領域が明確になります。「このポストはなぜ赤いのですか?」だけだと、周りの風景とも比較して、単に「やっぱり目立つからじゃないかなぁ……」と思うだけかもしれません。

しかし「日本のポストはなぜ赤いのですか?」という問いだとどうでしょう? ちょっと調べてみないと分からないかな、という気になるかもしれません。ちなみに、歴史を紐解いてみると、明治時代に“イギリスのポストに倣ったから”という理由がかなり有力な説であるようです。

さて「世界のポストはなぜ赤いのですか?」という問いだとどうでしょうか? ここまでくると、「そもそも世界のポストは本当に赤いのか?」 と、この問いから派生する異なる問いの答えを確認しなければいけなくなります。

ちなみに、世界のポストは赤いのもあれば、黄色もあれば、青いのもあります。イギリスの植民地だった場所などは赤が多いのですが、アメリカでは一度は赤くしたものの、“消防設備と間違える”という理由で、早々と赤をやめています。したがって“目立つ色だから赤”というのは、グローバルな感覚ではそれほど一般的ではない理由であることもわかります。

このように修飾することで、問いの“幅”を狭くしたり広くしたりすることができるのです。

修飾による効果2

また、「ポストはなぜ赤くなったのですか?」など時制が変わることで、目を向ける方向が変わることがあります。このように現在完了形で問われると、少し過去のポスト、あるいは赤でなかった時代のポストも気になってきますね。

ちなみに、江戸時代のポストはペイントされていない木製のものでしたが、明治初期のポストは黒だったとのことです。そして、赤に変わった理由のひとつとしては、“公衆便所と間違える人が多くいたから”(少しアメリカの事情と似ていますね。詳しくはぜひ検索してください)があるようです。

また「100年後のポストはなぜ赤いのだろうか?」となると、意識は一気に未来のまだ見ぬ世界、想像の方向に向きます。ここでも「そもそも100年後のポストは赤いのだろうか?」あるいは「そもそも100年後にポストは存在しているのか?」と、この問いから派生する異なる問いも生まれてくるでしょう。

もちろん、この答えはいくら調べても分かりませんから、自由な想像で、あるいは現在から合理的に導き出される推論で、答えていくことになるでしょう。

このように、問いは修飾されることで、それに答えるための思考の幅や、方向や、深さがさまざまに変わっていきます。

このような視点で、もう一度、あなたが書き出したすべての問いを見てみましょう。どんなことを感じたり、気づいたりしましたか?

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