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非日常シリーズの新作が完成したので、その想いを書いてゆこうと思います。

タイトル「未知」


私自身の、幼少期。
普段は食べられない
ちょっと贅沢なカニ缶の想い出。
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「今日のご飯は、蟹です。」

母親は私にお作法の一つでも教え始めるかのような口ぶりで、
この時のために、以前より買い置きしていたであろうカニ缶を
戸棚から取り出し、食卓机の上にそっと置きました。
私は、それをまじまじと眺めていて、

水族館で見た”かに”と、目の前の”蟹”が同じものだとは理解できず。
それにモヤモヤしていた私は、思いついたかのように
「この中に、かにが入っているの?」と聞くと母親は
「そうです。」と短く肯定し、
缶切りを缶に突き立て開け始めたのでした。


―――あの生きた”かに”が、この中に入っていて
開けたら出てくる。
長い足を缶にかけて開けた隙間から
ぬるっと出てくる。

思い返せば、その時の私は知らないことばかりが故にあまりに純粋で。

缶から這いずり出てくるだろう蟹に対する恐怖や、
逃げないように捕まえるにはどうしたらいいのか、
ハサミで挟まれたら痛いだろうな、
などの様々な感情に揺さぶられていて、
結局のところは、母親にしがみつきながらカニ缶を半泣きで
睨みつけているのみであったことをよく覚えています。

幼い頃は、
行ったことがない場所に行く、とか
見たことがない物に触れる、など
毎日のように「初めて」が訪れていたんだ、と思います。

”知らないこと”が当たり前だからこそ、
新鮮な心持ちで学び・経験しつつ、
ときには恐れたり躊躇いつつも、
もがき立ち向かいながら、ひとつひとつ乗り越えていく。

年を重ねて大人になるにつれ、未知に接する機会は
自ら意識して動かない限り、簡単になくなってしまい、
変化のない日々が日常になる。
でも、ふと周囲に目を見やると無数の未知がまだそこにはあって、
いざ子供の頃のような無邪気さで探してみたりすると、
未知の「初めて」に出会える。

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