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電波戦隊スイハンジャー#35

第三章・電波さんがゆく、グリーン正嗣の踏絵

鉄太郎の孫2

悟が「シルバー捕獲作戦」を思いついたのは


シルバーは熊本市内の人でしょう、とグリーン正嗣が言ったからだった。


「なんでそう思うんだい?」と悟は暗い本堂で、本尊の不動明王像を見つめて正座したままの正嗣に聞いた。


蝋燭の灯りの中に、黒い着流し姿の正嗣の背中が浮かび上がる。



「シルバーの言葉の端々には熊本なまりがありました。彼はわざと標準語でごまかそうとしましたが、同じ熊本県民なら分かりますよ。


熊本県といっても、球磨、人吉、宇城、八代、天草と地域によって特有の訛りがあるのですよ。


彼にはそれがなかった。市内の人が使う標準的な熊本訛りです。


それに…少し東京の下町なまりもありました。ビートたけしさんの言葉のような…」



「シルバーは江戸っ子なのかな?」



「いいえ、彼の方言は熊本で長く育った人のものです。おそらくですが、片親か親戚に江戸っ子の方がいらしたのかもしれません…祖父母とか」



シルバーが熊本市内在住でもなくても、熊本県人が誰でも連想するような、有名な観光地…例えば、熊本城は夕方6時半には閉館して夜は人気が少なくなる。


ならば、イエローにわざと追跡させて焦らせ、空海のテレパスで逃走中のシルバーの脳裏に熊本城二の丸公園の映像を送り続け、自分からそこにテレポートするように仕向ければいい!



後は、空海の思念結界の罠に嵌め、戦闘力トップ2のオッチーと空海に捕獲させる。

シルバーの戦闘力が未知数なのだから、念には念を入れないと。



悟の作戦通りに、シルバーは空海の張った罠に掛かった。


「弘法大師、空海」と小柄な僧侶は名乗った。


「空海だと?あの真言宗作った空海…じゃあ幽霊じゃないか、なぜ実体を持っている?そこの行者も!」


「真魚は次元を超えた『仏族』って存在なんだ。人間にも霊体にもなれる。ハイブリッド型幽霊ってやつだねー。俺様はちょっとつくりが違うが、ね。俺の名は役小角《えんのおづぬ》」


「役行者!!実在してたのか…」


シルバーはマスクの下でひゅっ!と息を吸った。


「感心感心。マニアック日本史お勉強してるみたいね。


ひょっとして『宇○皇子』読み過ぎたー?あれはいのまたむつみさんの画力で売れたんだと思うよー。

イラストの俺ってカッコいいよね。キャラはツンデレだけど」


長身の行者、小角はからからと笑った。


自分が登場する書籍は必ずチェックする自分大好き男、小角。


空海も笑顔で近づいてくる。


冗談じゃねえぜ!


この「坊主と行者」の漫才コンビ、俺をぶっ殺す気合十分じゃねえか…


「本当に怖い相手はにこやかに近づいてくる」ってじーちゃんの言ってた事、本当だったな。


仕方ない…シルバーは脱力し、武器の杖「喧嘩上等」をころん、と地面に転がした。


「降参とは賢明ですね。シルバー。張り合いが無いものですけど…ねぇ先輩」


空海が感心してうなずき、小角を見た。が、小角の横顔が驚愕で引きつっている!え、先輩?空海は改めてシルバーを見た。


違う、シルバーは降参したんじゃなく「脱力の構え」をとっているのだ。


なんて奴だ、この空海と先輩の殺気を前にして!


「完全に、殺気が無い」


小角が言った。こやつ、よほどの胆力か、防衛本能の無い大馬鹿か?


「喧(や)らないか?来いよ」


両手をだらりと横に下げて、直立したシルバーが言った。


シルバーの声は井戸の水面のごとく静かであった。


「真魚、お前は結界の外に出ろ。俺が決着をつける」


「先輩、捕獲の目的は?」


馬鹿野郎、と小角は武術の一番弟子を叱りつけた。


「むかーーし俺が言った言葉を忘れたか?


『本当に怖いのは、闘気を消した奴だ』と。真魚、お前の勝てる相手じゃない…


脱力の構えからして、あいつは合気道の達人…こっちが襲った瞬間にいいように投げ飛ばされるぜ」


合気道は敵の力を利用して投げ飛ばす…


「ただの黒帯程度ならともかく、シルバーが達人レベルなら厄介ですね。触った途端に5,6人転がせるんだから」



「そ、『戦わず、敵さえも味方にする』ってーのが合気道だからなー。まぁ合気道の原型作った武田総角に武術教えたのは俺様なんだけど…」


「あんた、とんだ形で自分に跳ね返って来ましたね…」


ん?合気柔術やってて総角より強かった奴がいたぞ。


いや、1200年間の俺の弟子の中で一番強かった奴…シルバーのたたずまいといい、


この構えといい!


小角の目の前のシルバーの姿が、遠い過去のある男の姿と重なった。


何てことだ!間違いない、あの男だ!


「は、はは…真魚よ、長く生きてると、すんげぇサプライズがあるもんだぜ!!」


小角の声が高揚しているのを結界から出た空海は訝しんだ。


あはははははは、小角の笑い声が結界内に響き渡る。


「鉄太郎!お前は鉄太郎の子孫だろう?」


小角は心から懐かしむ声でシルバーに呼びかけた。


「俺のじーちゃんの名前をなぜ知ってる?」


落ち着いた声でシルバーは尋ねた。彼の構えには寸分の隙も無い。


月の光で、シルバーの全身が冷たく輝いた。4枚に分かれたスカートが風で揺れた。


「孫か…鉄太郎も、せがれの祥次郎もとっくに逝ったんだな…お前が鉄太郎の跡を継いだのか?」


「ああ、継いだ。まだ若いからと断ったが、じーちゃんの直弟子たちに圧されてな。お前は質問に答えてない。なぜ親父の名まで知っている?」


鉄太郎の孫か!


小角は懐かしさと嬉しさのあまり、涙が出そうになった。ちくしょう、生き別れた息子に再会したみたいだぜ…


「作戦放棄だ、真魚」


え、ええーーっ!?この人アタマどうにかしちゃったの?今夜最大の目的放棄っ?


「俺を逃がしてくれるのか?まじで?」


小角の翻心をシルバーはあんまり信じていなかった。なんっか嫌な予感がする…


「ただし、条件がある」


ほらね。


「俺の本気の攻撃に耐えられたら、逃がしてやる」


先輩の本気の攻撃?まさか!


「先輩、『あの技』は生身の人間相手に放ったら殺してしまいます!私は止めなくてはならない!」


「黙ってろ真魚」


小角にはもう弟子の声なんか聴こえちゃいない。目の前のこの男は最強の愛弟子鉄太郎の孫で、鉄太郎の「技」の最高傑作なのだ。


こいつと本気で仕合う機会を逃すは、馬鹿だぜ。


「参る!」


小角の体が2メートル以上飛び上がった。


その速さは常人の視力には追いつかない。渾身の力で白装束の行者は前方宙返りすると同時に、組んでいた両手を広げ、巨大な十字の真空波を放った。


「喰らえ、旋回真空波!!」


半瞬遅れて、シルバーが飛び上がった。

小角と全く同じ動きでさらに速く前転し、十字の真空波を小角に向けてぶちかます。


「スウィング・チャクラム!」


結界の真ん中でで二つの巨大な真空波がぶつかり合って、ばしっ!!と生木が裂けるような音を立てた。


同等のエネルギーが激突して真空波が相殺されたのだ。


小角とシルバーは同時に着地し、熊本城のシルエットを背景に睨み合った。


「やるな、おまえ」


小角は、凶悪な目つきで顔面に笑みを浮かべた。


小角の顔の、額から顎まで浅い切り傷が入って血が垂れていた。行者服の前面が裂かれて、分厚い胸板がはだけている。


「おれもヒーロースーツ着てなきゃ、自慢のお顔を傷物にされてたよ…じーちゃんから教わった技で対抗したまで」


プロレスリングほどの広さに張られた四角の結界の地面は、ちょうど結界を4等分するような十字の深い裂け目が出来ていた。




エネルギーの余波で地面の裂け目からしゅうしゅうと白い湯気が上がる。



自分が結界の内側にいたら私の肉体は細切れに裂かれていたであろう、とほとんど立会人と化した空海は思った。


この二人のやってる事は…人間業やない!


呼び名は違うが、二人は全く同じ技を使ったのだ。


小角様の究極奥義「旋回真空波」を体得しているシルバーも実力は、小角様と互角。


いや、分はシルバーにあり。


シルバーは構えた両手にまだ旋回する真空の輪を纏っているではないか!


「行者、それがお前の本気か?おれはあと2、3発ぶちかませるぞ」


シルバーは両腕を広げて真空の輪を回転させた。


はは…と小角は苦笑いした…冗談じゃねぇぜ、鉄太郎…お前、とんでもない孫育てちまったもんだよ…


「約束通り逃がしてくれるな?」


「もし反故にしたら?」しれっと小角は言った。


「ふざけるな、このチャクラムたたっ込む!」


シルバーの声に若い怒りがにじんだ。


「いーいのっかなー?師匠の師匠を切り刻んでも。今の技を鉄太郎に教えたのはこの俺様だ」


小角は胸を張って威張りながら親指で自分を指さした。


「…やっぱりそうだったのか…役行者、お前の正体は、昔じーちゃんから聞いた『鞍馬山の大天狗』だな!?」


「いかにも、我は鞍馬山の大天狗」

と小角は芝居がかった口調で大仰にお辞儀をした。


「千年以上の長きにわたり、見どころのある武芸者に稽古を付けた…

源頼光、義経、柳生十兵衛、宮本武蔵…


その中でも最強で唯一『免許皆伝』を与えたのがお前のじいさん、野上鉄太郎だよ…


82年前、さっきの技を今のお前と同じよーに返したからだ…


俺は鉄太郎に『天狗の団扇の紋』を付ける事を許した。


びっくりしたかい?合気柔術の柳枝流《やなえりゅう》二代目宗家さんよぉ!!」


「もう俺の名前も正体も知ってんだな…」


シルバーは真空波の輪を両手から消して、構えを解いた。


そうか、だから祖父が戦後立ち上げた柳枝流合気道の紋は「天狗の団扇」だったのか


じーちゃん、あんたとんでもない師匠持ったもんだな…


おかげで孫の俺は、今めっちゃめんどくさい事態になってるよ!


「んにゃ、お前の名前は知らん」ふにゃんとした声で小角は言った。


「はぁ?」シルバーは腰がくだけそーになった。


「俺は鉄太郎のせがれの祥次郎が若死にしたことと、祥次郎には子供が3人居たってことしか知らん。


真ん中は女の子だと聞いたから、長男か末っ子だろーって予測しただけさ」


「末っ子のほうです…兄は41才でヒーロー無理ですから。

ねえ、もう逃がしてよ。家に帰って風呂入りたいんだけど」


んっふふっふっ、と小角は鼻で笑った。めっちゃ人を小馬鹿にした笑いである。


「だーかーらー、約束は反故だっつってんだろ?俺様が鉄太郎に授けた奥義を孫のお前はさらに進化させちまってるじゃないかー。


ちょーびっくりしたー。あんた、『天才』だよ。ねえ、あんたの合気の技、鉄太郎から教わった技で俺に稽古つけてくんなーい?」


「やだ、めんどくさい。『高値で喧嘩を売る奴には気を付けろ』ってじーちゃんの遺言だから。うちの流派、他流試合禁止だしぃ」


つれなくシルバーは断った。


「じゃあ、流派抜きの、ガチンコのケンカってのはどーだい?路上のヤンキーのケンカ。どんな目に遭ってもノーカンといこうじゃないかぁ」


このどアホ行者、とてもとても俺と戦いたくてたまらないらしいな、とシルバーは思った。結界の外の空海もしびれを切らしている様子である。


仕方ない、とシルバーは覚悟を決めた。左足を前に出して左手を腰に当て、右手を高々と上げ、くいっと手のひらを天に向け、腰を落とす。


「うわぁお、正式な合気道の構えー、じゃあ、俺もいくぜ」


心から嬉しそうに喋って、小角は空手の正拳突きをいきなり猛スピードでたたっ込んだ。


「力任せなんだよ、な」


シルバーマスクの下で笑った。がしぃっ!!と音が鳴り、小角の体が弧を描いてななめ上にふっ飛んだ。


結界の透明な壁に激しく背中を叩きつけられる。


そんな…先輩が、鞍馬山の大天狗が投げ飛ばされるなんて!!


空海は目の前の光景が信じられず、ただ口を開けて眺めていた…これが、本物の「合気」か!!


シルバーは瞬時に構えを変え、小角の正拳の手首をすくい上げて「合気」を叩き込んだのだ。


つまり小角は、己の攻撃力を利用されて弾き返されたのである。


戦後の武術家で、本物の「合気」を使えるものはほとんどいない。


まさかシルバーの正体が合気柳枝流宗家とは…まだ青年なのに本物の「合気」を使いこなせるとは!しかも実戦レベルで…


いやはや、武の道は奥が深い。


しかし、天狗を甘く見ちゃいけませんよ、シルバーさん。公園の闇の下で、空海は気を取り直して微笑んだ。


「ははっ、さすがは天狗!よく飛ぶぜ」


シルバーは両手をだらりと下げて地べたに倒れた小角の様子を窺っている。


「かーっ、これがモノホンの合気かぁ、きっく~」


小角は鼻血をだらだら垂らして頭を振った。口元は薄ら笑いを浮かべている。


シルバーは合気喰らってにやけている奴を初めて見た。


このおっさん、ドSなのか?ドМなのか?


「ウォーミングアップ終わり。これから変幻自在でいくぜ!」


小角は立ち上がってとん、と地上で小さく飛んだ。


そして野生の獣が全筋肉を使ったような速さで体重をかけた突き、蹴り、手刀をシルバー目がけて打ち込もうとする。


「だから無駄だってんだよ!おっさん」


シルバーは相手の技を全て、紙一重で捌き、躱している。


冗談じゃねぇ、こんな「重い」攻撃喰らったら、骨が砕けちまうっ!


シルバーは小角の蹴りのかかとに手を掛けて、相手の体をくるりと半回転させてその後頭部を公園の地面に叩きつけた。


さらにシルバーはブーツのかかとを小角の額めがけて蹴り込む、


が、小角は首をひねって攻撃を避けた。


「まだ意識があるのか…」


まるで不死身だ…人間じゃねえだけあるな…。


「若僧め、ホントはえげつねえ奴なんだな。鉄太郎はそんなに性格悪くなかったぜ」


地面から、小角の怒った声がした。


「じじいはじじい、俺は俺」


当然のようにシルバーは言った。


この若者、相当性格に難ありかもしれない、と空海は思った。


「路上のケンカにも慣れてるな。さぞかしたくさんのヤンキーをゴミ箱にたたっ込んだだろ?」


「それは合気道の看板継ぐ前の話。だってこれはヤンキーのケンカなんだ。あんたがそう言ったんだ」


あ、やっぱり隠れヤンキーだったんだ。


「ああそーだったな…じゃあ、チャンネル総合格闘技、オッチーいきまーす!」


小角は両手を天地上下の構えにしたまま、シルバーの足に重いローキックの嵐を浴びせて来たのだ!


うまい、と空海は思った。


合気道の武術者がなぜ黒袴を穿くか。それは、足さばきを見破られないためなのだ。


合気道で最も重要な動きは、ずばり、臍下丹田を中心とした、下半身の動きと足さばき。相手の力を利用して重心を奪うのも合気道なら、その弱点も、重心を奪われる事である。


シルバーのスカートが他のメンバーより長いのも、足さばきを隠すためなのだな。


シルバーさんちょこまかローキック避けてますが、その足幅ならいずれ捕まります…


ん?シルバーの足運びが、今まで見てきた合気道の演武とは違う。


これは、カンフーのステップじゃないか!!少林拳、太極拳の足技も入れている…


それに上半身の、扇を持つような動き。まるで、舞踏や!


合気道の「形」に、変幻自在の足さばき加えて改良している。この若者は、「天才」や。


「ほあぁぁぁぁっ!!」シルバーが吠えて、銀色の締まった体を旋回させた。


銀色のブーツの甲が小角の延髄を捉え、強烈な蹴りを叩き込んだ。


小角の長身が、膝から折れて倒れた。


「カポエイラ…」と空海は呟いた。


南米の足技も使えるのか!


「完敗だ、鉄太郎の孫よ…日本史上で…鞍馬山の大天狗を倒したのは…お前が初めてだよ」


切れ切れに息をする小角の上体を、抱きかかえるようにシルバーは起こした。


「違うよ、俺が強かったんじゃない。お前が弱かったんだ。俺を鉄太郎じいちゃんと重ねて見た、お前の甘さだ」


はは…と口元だけで小角は笑った。情に溺れてたのは否めんな…


「いい勝負だった。礼代わりに俺の『奥義』を喰らわす」


シルバーは小角の腹に拳を当てた。


小角の上体が衝撃で激しく揺れた。同時に空海は叫んだ。


「せんぱーい!!!」


「この野郎…」


口から血を吐きながら小角は仰向けに地面に倒れた。


「衝撃波は俺様は…おし…えて…ねえぜ…てめえ…とことん…性格悪りぃ」


「名を教える。合気柳枝流二代宗家、野上聡介」


しかと聞いた、聡介。


と口から血を噴き出して、小角は昏倒した。


「ようも、先輩をーっ!」


空海が錫杖を振り上げてシルバーに打ち据えようとしたが、くるりと半円回ったシルバーに首根っこを捉えられ、地面に投げられる。


「あんた程の男なら、かかっても無駄だと気づかないのか?理性が揺らいでいるぜ、空海さんよ…」


「正嗣に約束した。お前を連れて帰ると。


答えろ、野上聡介!なぜ正嗣に、わざとサキュパスを殺させた?


お前がとどめを刺しても良かったはずだ!」


「そうだよ、俺がわざと殺させた。『踏絵』だ。

出会った頃のような甘ちゃんのままじゃ、正嗣は戦士としてやっていけない」


それは空海自身が、一番思っていた事である。空海はぐうっ、と唸った。


「あんた、ほんとにいい人なんだな…正嗣に特別な思い入れがあるんだな…ゆるせよ」


空海は気づかぬ間にシルバーに背後を取られ、関節を取られていた。


空海は逆関節を極められたまま、宙を舞っていた。


べきっ!左肘が間接とは逆の方向に折れる。


激烈な痛みが、左肘から体中、そして脳天を突き抜ける。


瞬間、結界が解けた。


折られた関節を押さえたままうめき声ひとつ上げないとは、さすがは弘法大師というべきか…


「許せ…」


と呟いてシルバーの姿が消えるのを、空海は霞みそうな視界の中見ていた…。



「まさか、オッチーさんと空海さんが負けた!?」


変身を解いてテレポートしてきたイエロー琢磨が、慌てふためいて二人に駆け寄った。

「救急車!!」


「琢磨はん、救急車はあかん!怪我からして警察沙汰になる…」


呻く空海の背後に、ため息交じりの声が降りかかる。


「やれやれ。『仲間』に大怪我させるとは…聡介はどこまで大あほうなんでしかねぇー」


「あなたは…!」


空海は懐かしそうに金髪で金の瞳の白い学ラン姿の少年を見上げた。


「助けてあげまし。一旦、軽食グラン・クリュに戻りまし。琢磨、二人を連れてテレポート!!でしぃ」


少年は、慇懃な態度で琢磨に指示を下した。













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