甘い静かな時間 11
彼のお友だちのお店は、海が見える素敵なホテルにレストラン。
会員制で、一日の来客数も限られているというかなりレアなホテルだ。
ホテルは、お友だちのお父さんがホテルをしてて、レストランはその息子である彼の友だちが任されているらしい。
部屋数も少なく知る人ぞ知るというホテルなのに一年先まで満室という超人気ぶり。
そんな中、彼は無理を言ってレストランを予約したらしい。
「お前無茶ぶりすぎだぜ」
「どうしても連れていきたい人がいるんだ
お前しか頼めないんだ」
「本当はレストランだけって人お断りなんだぞ」
「分かってる……」
いつも強気のきらがうつむき加減んでお願いしてくるんだから、よっぽどなんだな
と、としふみはすぐに理解した。
「いいよ
事情が、あるって顔だな」
そう言われて私のことを話したらしい。
「いらっしゃいませ
ようこそnascondiglioへ」
「変な名前でしょ
イタリア語で隠れ家らしい」
ときらくんがコッソリ話した。
「おい、聞こえてるぞ、変な名前で悪かったな」
「そんなことないですよ、とっても素敵なお店ですね」
「あやさんでしたっけ?きらと違って大人だな」
「うるさいよ」
そんなやり取りをしている2人がなんだかほほえましかった。
「あっ初めまして、山中としふみっていいます
よかったらとしふみって呼んでください」
「お前、厚かましいんだよ」
「ほんと楽しそう、あやといいます」
わたしは苗字を言うのが気が引けた。
だって朝倉はいわば夫の苗字だ。
こういう時に後ろめたくなるんだなと、ちょっと心苦しかった。
「とりあえずお席にどうぞ」
と、苗字を言わなかったことには触れず案内された。
さすがきらくんのお友だち
きっと察してくれたのね
「あやさん、あいつうるさくてごめんね」
「全然大丈夫よ
それよりもきらくんととしふみくん?だっけ?
信頼し合ってるんだなって思えたわ」
「あっ、としふみっていった
山中でいいよ、下の名前とか・・・」
「え?もしかしてやきもち?とか?」
「そんなんじゃないし・・」
すねてるきらくんが可愛すぎる。
仕事中のきらくんとは別人だわと胸がキュンとなった。
そうしていると山中君が料理を運んできた。
「あやさん、勝手に注文してたけど大丈夫だった?」
「大丈夫よ、きらくんに任せるって言ったのわたしだもの」
イタリアンのコース料理が次々運ばれてくる。
どれも上品でとっても美味しい。
彼とこんな素敵な時間が過ごせるなんて
このままずっとこうしていたいと心から思った。
「あいつ見た目は軽いけど、仕事はしっかり極めるやつで、食材も新鮮なものを取り寄せているんだ」
「俺はあいつのそういうところは尊敬してるし、見習いたいと思ってる」
「いいお友だちね、尊敬できるのって2人ともがステキなのね」
「でもあいつ軽いから気をつけてね」
と、笑いながらトイレに立った。
すれ違いざまに山中君が、最後のドリンク、コーヒーを持ってきた。
「あいつトイレですか、まったくーー」
と言いながら、コーヒーを置いてくれた。
そして、さっきとは全く違う真面目な顔で
「あやさん、きらのことよろしくお願いします
話はきらから聞きました
あいつ、ほんとにあやさんのこと大好きで大切に思っているみたいなんで」
わたしは、嬉しさと心苦しさが交差した。
「そうね、きらくんはほんとにいい人、だからちゃんと考えなきゃって・・・」
と、少し伏せ気味な私に気づいて
「あっ、そんなに固く考えないでください
そんなつもりで言ったんじゃないんで
まぁ、嫌になったらさっさとふってやってください笑」
気を使わせてしまったと思い
「飽きたらそうさせてもらうわ笑」
と言って、冗談を入れた。
飽きるわけない
どんどん彼に惹かれてる
どうしようもなく
彼のことを考えるだけでドキドキして、体が熱くなる
きっと飽きられて別れられるのは、私の方だ
ちょっと悲しくなった。
そんなことを考え込んでいると
きらくんが戻ってきた。
考え込んでいる私を見て
「あやさん?あいつなんか変なこと言った?」
私は首を横に振った
「大丈夫よ、冗談言い合ってただけ
それより、ここテラスに出れるの?」
私たちが食事をしていたところには、大きな窓がありテラスがある。
「出れるよ!コーヒーはテラスで飲もう!」
と、大きな窓を開けて、テラスに出た
そこには、席はなくスタンドだけが合った。
スタンドにカップを置いて、横並びで海を見ながら、コーヒーを飲んだ。
「風が気持ちいいね」
「やっと、秋が来たって感じだな」
「ほんとに」
そんなたわいもない会話に幸せを感じる
すると、彼がそっと手を握ってきた。
びっくりしてピクっとなったけど、握り返しながら顔を見た。
彼も私をみながらニッコリ微笑んできた。
この顔!罪だわ
ほんと可愛くて愛おしくて
いつの間にか、すごくガン見していた。
「あやさん、そんなに見られると俺照れる」
と言われ
「あっ、ごめんなさい、ほんとよね
つい……罪だなって…」
罪だという私の顔を見て不思議そうにしていた。
「きらくん、八重歯可愛いね」
「あーこれね、でも結構邪魔な時あるよ」
「そうなの?笑うと少し見えるのが可愛くて罪だわ」
「さっき言ってたのそれかー
罪ってなんだよー」
2人で笑いが止まらなくなっていた。
この楽しい時間がずっとずっと続きますように
to be continued・・・
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