見出し画像

宿罪



初恋の人のウェデイング姿はそれはそれは美しくて、隣に居る事が出来たならそれはそれは最高なのだが、それはそれは権利がございませんでした。
泣く泣く遠くで見るのが精一杯でした。虚しいより清々しい、そう思っていたのですが、美しい美しい新婦と目が合いました。少しドキッとしましたが私はすぐ顔を下に向け目線から逃げました。すごく恥ずかしい人間だと思っております。その後も少しなぜか視線と人の居る気配がし恐る恐る顔をあげるとそこには先程舞台に立っていた新婦じゃありませんか。

またまた、目が合いまして少し照れてる私に彼女は、
「あんたがうじうじしているせいで私の人生狂ってしまったじゃない」
そう放ち、私にビンタをしたとこで目を覚ました。
ちょっと汗かいて起きたAM6時04分でした。

二度寝する事を諦め、足りない頭で、
罪に対しての罰を考え、その罰が罪に相応なのか深く考えても全然整理が出来ませんでした。

夢に現れては、時間が経つと忘れる。それが寝てみる夢のはず、でした。
昨日までは。
今は恐ろしく寝るのが怖い。怖いのです。
もし、今日の夜も同じ夢を見てしまいましたら、恐らくもう寝る事を拒むと思います。夜を引き延ばしても引き延ばしても迎えにくるのです。



僕は人に誇れるような人生を生きて来なかった。
人に傷付けられるより傷付けてきてしまった人生であるのです。

記憶の奥の片隅にしまって置いたもの、もう思い出す事も無かったはずのものが夢で現れるようになったのです。
いつも1杯のハイボールといっぱいのスナック菓子で眠り前の宴を1人虚しくする。薄い月明かりの下で。

少し酔っ払ってしまいまして、でもそのままベットに行ったかは薄い記憶でしか覚えていないのです。


嬉しい事があると君はハイタッチをしてきた。
いい曲を聞いた時、料理の工程、味、片付け、全てがバチっと上手く行った時、いい映画を見つけた時。
君はハイタッチをしてきた。
それを待ってた僕がいた。僕の記憶だけではすごく綺麗な良い思い出ばかりでございました。

君は今、他の男と結婚式を上げている。これほど苦しい事はございません。
胸が苦しいのです。今見えてる景色に偽りがあるのであればそれはそれは楽なのに。
ですがそうはいきません。いやこれもまた夢であれば偽りなのでしょう、なので私は楽をする事さえ許されません。

コンフェッティシャワーって名前なんですねこれ。紙吹雪が君と知らない男を映えされる。段々段々、君が知らない男を連れ近づいてくる。君と目が合ってしまいました。少しドキッとしてしまいました。いや少しでは無かったです。すごくドキッとしました。君がまたハイタッチしてくれるんじゃないかって。
「ねー、あんたに買ったパソコン返してよ、40万返して。あとさ、あんたって重い言葉を軽々しく言うのがきもいよね」
そのまま私はビンタをされました。とても痛かったのですがほっぺたよりも、もっと痛かったのは心でした。奥深くが痛くつらく苦しく。私は君にお金を借りていたのだと今言われて気付きました、そして重い言葉を軽く言っていたのだと今知ってしまったのです。
断続的な記憶が、君の言葉によって確かな記憶と化す。それほど恐ろしいものはないでしょう。

目が覚めましたが未だに心が苦しくて起きた心地がしませんでした。

これは贖罪のかけらは一切なく救済もなく。
ただ罪に対しての罰を受ける。夜が恐ろしく怖く。でも夜は迎えにくるのです。


そうだ君はよくご飯を作りに来てくれたじゃないか。あの時作った、オムライスは格別だったな。2人してケチャップをつけて笑ってたっけ。

またこの光景だ。結婚式、もう見飽きたこの光景。ご祝儀にしたら相当ではないでしょうか。
また目が合い君が近づいてくるのです。
「お前の事を思い出すとわたしは髪を切りたくなってしまうの。お前との思い出が綺麗じゃないから、思い出しては髪を切って振り払ってそれでも思い出しての連続よ。本当に最低」
またまたビンタなのです。

目が覚めてまた心をぎゅうっと縛りつけられました。いつまで続くのでしょうか。
朝が来て昼が来て、また憎き夜が来るんです。来てしまうんです。

罪に対しての罰を考え、その罰が罪に相応なのか深く考えると、
そこには少しの愛があるのではないのかそう考えようにしてみた、いやもうそうするしかないのです。

夜が来ました。寝るのが怖い怖い言いながらも、ベットに入り、
もう、会えない君たちに夢の中で会える事をすこし楽しみにしている自分もいました。
考え事をしていると意識が自然と遠のいていくのです。

いつもの結婚式の風景でございます。
でもそこには、いつもの結婚式には見たこともない女性がいました。
今までの条件ですと、付き合った女性がいて、私が酷い事をした、そしてビンタをされるそんな連続性でございました。

でも、今見てる女性は初めてみるわけではないけど、いややはり知らない人でございました。

いつものように近づいてくるので、いつものように身構えていました。近づいてくればくるほど、新郎新婦2人ともやっぱりどこかで見た事ありました。でもどこかそれが分からない。分からないのです。どこかの日常にいる顔なのです。
あ、あ、あー!!!!

分かった私は唖然としました。

若かりし頃の母と父ではありませんか。
近づいてくる母にビビりまくっております。
いつものビンタでしょう。その覚悟はございます。いいんです。産まれた事自体が罪でございます。さぁなんなりと痛めつけてください。




ただただ母親は暖かい身体で僕を抱きしめてくれていた。すごく温かった。

目が覚めたら同じ温かさの涙が溢れてた。

スキがやる気になり 寄付が猫のエサになります