わたしは好きな人が怖い

今日は午後から好きな人の工場で働く。
そのため昨晩は久しぶりに遅くまで遊んでいた。
朝ゆっくりできる幸せ。最高。
最近あの工場に行くと、
その晩寝ているときにいつも足がつるのだけど、
昨日はさらにお酒まで飲んでしまったので、
やっぱりつった。
毎日工場勤務してる人はすげえ。

昨日好きな人がいたので、
今日はいないだろう。
雨だしマジで行く気失せる!!!
昨日工場のホコリで気管をやられたので、
龍角散を買って行った。

わたしはこの工場の靴箱までの階段が怖い。
以前気持ち悪い男に手を握られたからだ。(過去記事参照
だから朝晩ここを通るときは、
誰か知ってる人がいたらご一緒させてもらう。
いなかったら母親に電話する。

昨日の朝は母親と電話しながら歩いていたのだけど、
わたしが更衣室に入った数分の間に、
好きな人のタイムカードは出勤になっていた。
てことはすぐ後ろを彼が歩いていたのだ。
わたしは靴箱の方を覗いて
「今日いないわ、明日だわ」と母親に話していた。


…もしかして彼に聞かれた???



だからあの人靴履き替えてなかったのかな。
いやでも定時ギリギリだったから、
靴はそのままでタイムカードを切って作業場に行ったのかもしれない。
そう思いたい。
あれを聞かれてたらまずい。
いやもし弁解できたら、
気持ち悪い男と今日は会わなかったってことですって言うけど。
しかし彼とそんなに話せる日が来る気がしない。

今日出勤したらまた彼の上履きが靴箱にあって、
やっぱり休みかと思ったけれど、
タイムカードを見たら出勤になっていた。
てことはいる。
うーんやっぱ聞かれたのかなーやべえな。

彼は今日も外靴で働いていた。
昨日と同じポジションにわたしを振った。
最近彼はわたしではなく、
いつも近くのタイミーの人に向かって、
「2人そこに入って」とまとめて指示を出す。
やっぱり嫌われているのかもしれない。

昨日も先週も入ったポジションなので、
なんとなく仕事は覚えている。
感じのいいパートのおばちゃんに、
「これ同じですか?」と聞いたら、
「うちのパートのおばちゃんでも気づかないのに素晴らしい!」
と褒められてしまった。
ありがたいな。
タイミーなんてやってなかったら、
わたしは人に褒めてもらえることなんてないもの。

好きな人はまた、
「17時で機械止めるからタイミーあっちで」
とパートさんに指示を出した。
彼はわたしのすぐ後ろで話しているのに、
タイミーさんとすら言わない。
この人は本当に敬語が使えないというか、
教養とか一般常識とかマナーに欠ける人だ。
初めてここに来たときもわたしはドン引きだった。
たぶん接客業とかやったことないんだろうな。
絶対無理そうだもん。
「あの背の低い男にこう言われた」とかって絶対に誰かわかるクレーム入れられそう。(想像)

それでも振り向くと好きな人がいる世界は幸せで、
彼はたまにまた半袖を肩まで捲り上げていたりして、
ドキドキしてしまう。
一度半袖を肩まで捲り上げてこちらに振り向く瞬間が
カッコよすぎて、
今の瞬間をポストカードにして欲しいと思った。
いややっぱりスマホの待受にしたいな。
今のは絵みたいに素敵だった。

今日もホコリが飛んでいたのか、
振り向くと今彼がわたしに向かってウインクしたかのような奇跡みたいな瞬間もあって、
「え?今のもしかして個人的にファンサ?やっぱりわたしが好きなの気づいてるよね?」
と思ってしまう。
いや彼はきっと何も考えていないのだろうけど。

でも好きな人といられる時間は本当に貴重だ。
あの人はやっぱりカッコいい。
カッコよすぎてめちゃくちゃ怖い。
でも声と肉付きがめちゃくちゃ好みだから見たい。
ポロシャツのお腹のところに開いた穴が広がって、
肌色が完全に見えちゃっているけれど、
それでも愛おしい。
もっと堂々と見たいけれど、
わたしはやっぱり好きな人が怖い。
めちゃくちゃ怖い。
嫌われている気しかしない。
だって今日も一言も話せていないし。

今日は同担の女の子(過去記事参照)もいて、
彼女は機械を見る彼に普通に話しかけていた。
あの子はわたしと違って強い。
わたしなら機械を触っている彼に話しかける勇気なんてない。
彼はきっとわたしに振り向きもせず、
すぐ逃げるようにどこかに走って行ってしまうのが目に見えるから。
何話してんのかな。お手洗い行きたいとかかな。

彼は大人しそうな男の子だから、
わたしよりもああいう積極的な女の子の方が絶対に合いそうだ。
あの子なら、気がついたら彼を彼氏にしたりできそうだもの。
小柄で筋肉質でキリッとした目元もわたしより彼に似ている。
たぶん彼にはわたしよりあの子の方が似合う。

しかし17時になって移動すると、
彼女は彼の近くの機械から一番遠い機械に1人だけ送られていた。
彼はほんとそういうとこあるよなと思った。
頼みやすかったのかな。 
わたしもあんまり彼と必要以上に話したら、
一番遠くて重いものを扱う機械に送られてしまいそうだから気をつけようと思った。

その後も彼は端っこにいたわたしではなく、
わざわざわたしの隣にいたタイミーに話しかけて、
遠い機械に送った。
わたしは突然話しかけられると驚く悪癖があるので、
彼はきっと話しかけにくいんだろう。
彼の近くの機械は軽いものを扱うので仕事は楽だ。
彼と話せないのは残念だけど、
わたしって意外と要領良かったりしてと思った。

彼は忙しそうに作業場を行き来している。
わたしは彼が落としたシーツをこっそり投げてシーツの山に返したりしていた。
たぶん彼は気づいていない。

一度彼が機械の切替えのタイミングでこちらに来た。
彼は「今何入れてたの?」と言うので、
たまたま近くにいたわたしは「青の1本線です」と返す。
「じゃあ次茶色入れるからって前に言ってきて」と彼はわたしに言ったので、
わたしは靴を履いて言いに行った。
今日の唯一の彼との会話だ。
今は嫌がられてなかった。普通に話せたと思った。


わたしは好きな人が怖くて怖くてたまらない。


きっと過去の恋愛のせいだ。
わたしはいつも好きな男が自分に優しくしてくれる気がしない。
1人で彼を見ていると、
めちゃくちゃ卑屈になってビクビクしてしまう。
いつも恐る恐る顔をチラ見して目に焼き付けている。
他のタイミーさんと話していたらだいぶ気が紛れるのだけど、
1人で黙って作業していたら、
とても彼となんて話せない。好きな人は怖い。

上がる時間になっても、
彼はまたどこかに走って行ってしまった。
今日も挨拶すらできない。もう慣れてしまった。
QRコードを読み取ろうとスマホを見ていたら、
彼が遠くにいてこちらを見ていたような気もしたけれどわからない。

帰りは同担の女の子と帰った。
彼女には1人でここの階段を歩くのが怖いと言っているのでいつも一緒に降りてくれる。
ありがたい存在だ。
彼女は自力であいつを追い払うのに成功している。
とにかく目を合わさないことだと教えてくれて、
実際に効果てきめんだった。すげえ。
でもわたしは怖いからやっぱり会いたくない。

帰り際に「来月からここの募集が無くなるかもしれない」と社員さんが言っていたと一応教えてあげた。
彼女だってきっと彼のことが好きなのだ。
だからこれは重要事項に違いない。
すると彼女は最近平日に来ると障害をもった人達が作業しに来ていると教えてくれた。
社員さんは最近平日は別のところから人を入れていると言っていたけれど、
会社名で検索してもそんな求人は全く出てこない。
だからきっとそんなことだろうと思っていた。


この工場はそのうち外国人と障害者まみれになるのかもしれない。


「そんなところで働いてる男の人は絶対に止めなさい」とまた母親に言われそうだ。

彼女とLINEを交換して、
わたしはいつもここで働いてるといつもの運送会社を紹介して別れた。
またここで会えるかはわからないけれど、
彼女とまたどこかで働けたらきっと楽しそうだ。