メンヘラ女は不安を煽る男が好き
ざわざわする。
昨日からずっと胸がざわざわして止まらない。
好きな人がいる工場のタイミーの募集が出ないのだ。
去年の夏からこんな日は1日も無かった。大みそかも元旦もいつもと変わらない募集が出ていたほどの超ブラック企業なのに。
一応レビューも見たけど、
今日の分は増えていないから、わたしがブロックされたわけではないようだ。(そこだけは安心)
今朝から何度もタイミーを見ているせいか、
タイミーの画面を見る度に胸が苦しくなってきた。
最近は午後からの募集が出ないから、
新人さんでも入ったのかなとは思っていた。
あそこはGWは忙しいはずだから、
そこまで待つしかないのだろうか。長い。
先月も20日空いてしまったけれど、
今月はそれ以上空いてしまいそうだ。
あーつまんない。
わたしが毎日毎日会いたいのはあの人だけなのに。
最近はとにかく金欠だから違う会社にばかり行っている。
今日も本業後はチャラいお兄さんの職場に行く。
遠征じゃなくても、
本当に自分の行きたいところに行くには、
お金が必要なのかもしれない。
もしもうあの工場の募集が出なくなったらと思うと、呼吸が止まりそうになる。
もしあの人にもう二度と会えなくなったら。
募集が再開しても、もし彼が辞めていたら。
やっと見つけた王子様を失う日が来たらと思うと、
手が震えそうになる。
彼は去年の秋にわたしに過労で倒れた話をしてくれた時、半笑いで「来年はわからない」と言っていた。
いつも無愛想で無表情な彼が珍しく自分の話をたくさんしてくれて、
半笑いとはいえ笑顔まで見せた奇跡みたいな2023年10月31日火曜日の午後のこと。
わたしはいつものように有給を取って彼の職場に定点観察に行ったら、
なんとお目当ての彼が復帰していて、
3か月ぶりに一緒に働けた日。
わたしはこのチャンスを逃すまいと、
2号機で隣に来た彼に勇気を出して膝をガクガクさせながら話しかけたのだ。
彼とあんなに話せたのは、
あれが最初で最後になってしまうのだろうか。
いやだ。わたしはもっと彼と話してみたい。
わたしはあれからあのシーンを思い出す度に不安でたまらなくなる。
彼にとってはなんとなく口から出た言葉だろうし、
どのタイミーに話しかけられたのかも、
自分が何を言ったのかもきっともう覚えていないだろうけれど、
メンヘラのわたしを不安にさせるには十分過ぎた。
もしかしたらわたしは、
彼のそういう不安を煽るところに惹かれているのかもしれない。
彼の魅力はそういう不安定なところなんだろうか。
そういえば過労で倒れる前の彼も、見ているこっちが不安になるような多忙ぶりだった。
当時タイミーであの工場に行くのは3回目くらいだったけれど、
「どうしてこの人だけこんなに忙しく働かなきゃいけないんだろう」と思って見ていた記憶がある。
彼を好きになってから、
わたしはとにかくいつも不安が止まらない。
スマホを見ていない間に募集が埋まらないか、
行けても彼が出勤しているか、
いても話せるかどうか、
そしていつか辞めちゃうのではないかと、
潰しても潰しても次の不安要素が出てきて、
わたしは一時も安心できないのだ。
だからこの恋は全然楽しくない。
幸せなのは彼に会えて話せた時だけだ。
今年の夏には彼はいないのだろうか。
もしかしたら今の閑散期のうちに転職活動をしていたりするのだろうか。
今年の2月頃、わたしの周りで仕事を辞める人が続出した時期があった。
その頃もし彼と雑談ができたらその話をして、
「お兄さんは辞めないですよね?」なんて探りを入れておこうと思っていたけれど、
あの頃は繁忙期で、いつもいつも忙しい彼とそんな話をする余裕はなく過ぎてしまった。
わたしは20代後半の頃、
好きだった人が仕事を辞めて遠くに引っ越して会えなくなった後に鬱のようになったことがある。
その時の傷口がまた痛み出すようですごく怖いのだ。
あの時の傷は一見治ったようでも、
まだわたしの身体のどこかでぐちゃぐちゃに腐っていて、
そのぐちゃぐちゃの部分に仮の蓋をしただけでわたしは毎日なんとか暮らしているけれど、
何かきっかけがあって蓋をどけてしまったら、
またあの時のように痛み出しそうで怖いのだ。
今日も行ってきたチャラいお兄さんの職場だって、
来月は募集が出るかわからない。
今月はあと5回は行く予定だけど、
その後もしかしたらもう行かないということもあり得るのだ。
仕事にもすっかり慣れて、
今日も伸び伸びとおじさん達と汗を流しながらタイヤや除草剤を運んでいたくらいなので、(筋肉痛確定)
資金源を失うのは惜しいけれど、
タイミーで募集が出なくなったらもうおしまいだ。
タイミーは今週末どころか、
来月の今頃自分がどこで何をしているのか全くわからない。
明日初めて行く現場で、
理想の男性と出会って沼…いや恋に落ちる可能性だってゼロではないのだろう。
飽きっぽいわたしにはそれが魅力でもあるのだけど、
それでもあの彼だけは失いたくない。
わたしの人生で出会った中で一番いい声の男の人。
わたしは彼と仲良くなりたくてたまらないのだ。
失うなんて冗談じゃない。
だからどうかこの胸騒ぎが気のせいでありますように。
明日にでも何事もなかったかのように募集が出て、 そろそろわたしもお邪魔できますように。
わたしはまだまだ彼に会いたいのだ。
今は閑散期かつ金欠だから我慢しているけれど、
また繁忙期になったら本業後にイケメンに会いに行く生活が戻ってきてほしい。