見出し画像

新宿積読消化の旅

数日かけて東京で積読消化の旅をしてきた。
泊まったホテルは新宿のブックホテルで、部屋にはキングダム、闇金ウシジマくんが相当巻数揃っていてそれら部屋に置いてある本を棚の奥にしまう所から始めた。
そして座り心地の良いマットレスの横にこのように持ってきた本を並べた。
タイトルを書いておくと以下の通り。

『与謝蕪村 「ぎこちない」を芸術にした画家』 府中市美術館 編・著
『アートはまだ始まったばかりだ ヤン・フート ドクメンタ9への道』 池田裕行 翻訳
『絵画の力学』 沢山遼
『分離したリアリティ』 カルロス・カスタネダ 真崎義博訳
『父 吉田健一』 吉田暁子
『和の心 コズミックスピリット』 千賀一生
『中国と茶碗と日本と』 彭丹
『定家明月記私抄 続篇』 堀田善衛
『うめがくし しそがくし』 みのわようすけ
『半七捕物帳 一』 岡本綺堂
『埋れ木』 吉田健一
『酒肴酒』 吉田健一

部屋には他に座り心地のいいスツールもあって、快適だった。

積読消化の旅だったけれど、それなりに見たい展覧会や会いたい人がいて、合間に食べたかったものや行きたかった喫茶店など概ね行くことが出来た。
新宿御苑のベンチに座って瞑想しているんだか寝ているんだかの時間や、ホテルのスツールに座って持ってきたほうじ茶を琺瑯のカップで飲む時間にとても喜びを感じた。

『中国と茶碗と日本と』に出てくる青磁茶器が軒並み出光美術館の展覧会にあり、そのずらりと並ぶ様に感動したり、かねて見たかったがその望みすらも忘れていた明恵上人の樹上座禅図の前で時間を忘れて見入った時間は素晴らしかった。

東京に行くといつも行く喫茶店に本を持ち込んで読む時間はいつも通りだったけれど、そのせいか少し物足りないように感じた。
何かを期待して行った場所は概ね物足りず、何も考えず期待せずに行った場所で得るものがあったように思う。
結局、ホテルの座りのいいマットレスとスツールを交代で使いながら、本を読んだり茶を飲んだり近所のスーパーで買ってきたスナックをむさぼる時間が一番心地良かった。

それにしても東京は得だしずるいと思うのは、その場所そのものが本に登場することが多いからだ。
銀座で本を開けば、吉田健一がビールや折詰を片手に歩いた店や場所をかすめる。
今回は行かなかった下町の方には、半七が方々出歩いていて、たまに鰻や蕎麦を食べている様子なのでせめてGoogle マップでどういうご町内なのかを確認する。
あわせて先に書いた通り青磁茶碗の本を読んで、その足で図版の実物を見に行き、珠光青磁のやり口に腕組みあごを撫でまわさざるを得ない状況など。

積読消化の旅というのも前からしてみたくて、実は本当に行きたいホテルは他にある。
また、持ってきた本のうち上記リストの上から4冊は開きもしなかったので、多少の敗北感も味わった。
滞在日数と持ち込む本のバランスや宿周辺の環境など、いろいろ考慮できることがありそうだった。
せっかくブックホテルに泊まるのだから、当地のコレクションを眺める時間もあってもいいのではないかなどと考え始めると何週間必要なのだろうか。
今回ホテルの目の前にドトールとファミマがあり、本当に不自由しなかったが、ホテル周辺に何もない環境もおもしろいだろうと思われる。
なんとなく朝のドトールにいつもいるアジア人の店員さんには顔を覚えられて、毎日来るなこいつと思われた気がする。

数年かけて読み進めた吉田の『酒肴酒』をようやく東京で読み終えたのは、うれしかった。
ずいぶん贅沢な遊びをおぼえてしまった気がする。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?