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パンチライン百科事典 p.9 -RUNNING OUT OF TIME-

ついにこの時がやってきた。このコーナー第9回目、過去投稿第8回目にしてようやく彼の曲に触れる時が来たのだ。そう、それは私が愛してやまない男、Tyler The Creatorの曲である。今回紹介するのは彼が先日リリースした新譜、『IGOR』からの1曲、『RUNNING OUT OF TIME』である。この曲は彼の少年のようにピュアな恋心によって彩られた、なんとも可愛らしい作品となっている。その彼のピュアさというものを、この曲を聴き、この記事を読むことでみんなにも是非実感して欲しい。もしまだ彼のことをあまり知らない人がいれば、私が過去に書いた彼についての記事を読むことをお勧めする。彼が一体どんな人物なのかある程度理解できるはずだ。

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Tyler The Creator - RUNNING OUT OF TIME 0:47〜

Wade in your water (Wade in your water)
Your waves wash over me
I drift to the deep end
Don't save, don't save, don't save
It's a low tide (I'll be fine)
I found peace in drownin'

水の中をかき分けていけ(水の中をかき分けていけ)
君の波が僕を綺麗にしてくれる
僕は奥深くまで漂う
助けは必要ない、助けは必要ない、助けは必要ない
これは浅瀬だ(僕は大丈夫)
溺れる中に平和を見つけた
0:47〜

この曲のテーマはであり、この歌詞における"Water"(水)"Waves"(波)などは好意のことを指している。これを意識してもう一度歌詞を読んでみてほしい。
まず最後のライン、"I found peace in drownin'"(溺れる中に平和を見つけたから説明させてもらう。ここでいう"Drownin'"(溺れる)とは愛に溺れた状態、要するに恋に落ちた状態のことだと私は考える。この恋に落ちた状態とは非常に不思議なもので、言ってしまえば完全に他人によって自分の感情が支配されている状態なのにもかかわらず、嫌悪感を感じない。逆にむしろその心地よさからよりのめり込んでしまう、そんな状態だ。日本語にも「恋は盲目」という言葉があるが、まさにそれに近いと思う。本人は完全に視界を奪われてしまっているのにもかかわらず、それに気づくこともなくより深みにハマっていく。つまり、この支配されている中で感じられる得体の知れない心地よさをTyler"Peace"「平和」と呼んでいる。一見すると、この「平和」という単語は感情を表現するには抽象的すぎるように思える。しかし、先ほども言ったようにこの心地よさというのは得体の知れないものであり、どの単語でも正確に説明することのできないようなその漠然とした快楽をイメージをするには適した単語であると考える。次に"Wade in your water"(水の中をかき分けていけ)"Your waves wash over me"(君の波が僕を綺麗にしてくれる) "I drift to the deep end"(僕は奥深くまで漂うという部分であるが、ここでは彼が完全に愛にハマり、さらにそれを欲している様子を表している。彼が水(愛)の中を進めば進むほど、その水(愛)と肌が触れ合い彼を浄化していく。また、前述した通りその感覚を失いたくない彼は、水(愛)から出てしまわないようにより深く深くへと潜っていくのだろう。そしてその後、彼は人々に言うのだ、"Don't save"(助けは必要ないよ)"It's a low tide (I'll be fine)"(これは浅瀬だ(僕は大丈夫)と。つまりこれはきっと「そんなに惚れてないよ」という照れ隠しだろう。
どうだろうか。Tylerのピュアな恋心は伝わっただろうか。このラインはただ可愛いらしいだけでなく、恋における自分の理性や自分自身を失ってしまうかもしれないという恐怖感とそこに共存する幸福感とのジレンマを「水」に関連付けて上手く表現した秀逸なラインであると思う。特にこの「水」というチョイスからは、自然をこよなく愛する彼の個性が滲み出ておりファンとしては非常に聴き応えのある曲であった。


P.S. 実際にこの"Wade in your water""Don't save"の部分はTyler本人がこの曲の中で気に入ってるポイントでもあります。彼的には、この曲のラップパートの後ろで流れているメロディのコード進行も含め、これらのパートは彼が好きな音楽の特濃バージョンって感じらしいです笑 例としてはTake 6Stevie Wonderをあげてます。僕的にはTake 6感に非常に共感しました。一応彼らの曲のURLも下に貼っておきますね。

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written by じょん

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