見出し画像

父、絵本を描く。

毎年、娘の誕生日に絵本をプレゼントしています。
作者は、私。

絵を描くことは、昔から好きでした。
ただ、マンガや絵本を描いてきたかといえば、そんなことはありません。
教科書の偉人に髭を足したり、ノートの隅に先生の似顔絵を描く程度です。

そんな私が長女の3歳の誕生日、絵本デビュー(33歳)しました。

私には3人の娘がいて、全員3月生まれ。
今度の3月で、長女は7歳、二女・三女(双子)は5歳になります。
長女が3歳から始めたので、3、4、5、6、7歳と今年で5冊目です。

■ きっかけは「忙しさ」と「1989年」


描き始めたきっかけ、それは「伝えたい」という思いでした。

私の仕事(税理士)は1~3月頃、確定申告の業務があり繁忙期です。
この繁忙期を終えた頃に、やってくるのが娘たちの誕生日。

家庭は誕生日に向けて、次第にワクワク感が溢れかえってきます。
玄関のドアを開け、何かフワフワ飛んでいるな?と思ったら、ワクワク感でした。

一方、私は仕事が充実しているため、家に帰るとちょっと乗り遅れます。

私だって、今までの成長過程も、これからの成長も思えば思うほど、ワクワクは溢れてきます。

ただ、たまたまこの時期、オンオフの切り替えスイッチが鈍くなりがちなのです。

これは妻は分かっても、3歳の娘には理解できません。
どうしたら、娘に伝わるだろうか。
なにか、できないだろうか。

そんな時、妻の実家で、お義母さんが作ったという絵本に出会いました。

妻が3歳の頃、クリスマスを楽しみにしていたのに風邪を引いて出歩けなかったとのこと。

そんな妻に少しでもクリスマスの思い出を与えたいと作られた貼り絵の絵本でした。

絵本のタイトルは「クリスマスを探せ(1989年)」
リースやツリー等、クリスマスがたくさん詰まっています。

 あとがきには、こう記されています。

あとがき
 この話は12月に風邪ばかりひいて外に遊びに行けなかった〇〇(妻)が、お父さんにドライブに連れて行ってもらった時のお話をもとに作りました。
 その時のことがとても気にいったらしく、その後、何度も夜のドライブをせがまれました。きっと初めて実感として味わうクリスマスは印象深かったのでしょう。
 絵本作りにとりかかるまでは大変でしたが、始めると時をたつのを忘れてしまいました!
「これ私の?ありがとう!」と喜ぶ姿に充実感を味わいました。

製作:1989年1月初め~2月20日

小さな絵本から、妻がみた景色やお義母さんの思いが広がってきました。
感動とともに「これだ!」と思いました。

娘が今好きなこと。
娘に伝えたいお祝いの気持ち。
形にしよう。

絵本なら、繁忙期なんて関係ない。
だって、忙しくなる前から準備すればいい。

貼り絵は、不器用なので自信がない。
じゃあ、描けばいい。

その夜、さっそく私は白無地の絵本をネットで注文しました。

真っ白な絵本。最初の1ページ。
緊張しながら、描きました。
鉛筆で下絵し、ペンでなぞり、色鉛筆で塗る。

決して上手ではありませんでした。
絵自体は納得できない。
けれど、楽しい。すごく充実している。

お義母さんのあとがきにある「始めると時をたつのを忘れてしまいました!」が共感ではなく、実感に変わりました。

絵を描くって楽しいな。

娘を想像する。
何が好きか、何を書いたら喜ぶか。
この洋服、あの仕草書いておいたら、将来読むとき懐かしいだろうな。

上手い下手とか考える余裕はありません。

詰め込もう

絵本に娘が好きなキャラクターやおもちゃ。
娘が今見せる表情や仕草。
詰め込みたい。

気づけば、絵本を描く前よりも娘との時間を大切にする自分がいました。


■ 2018年

そうしてできた1作目。
テーマは「3歳の誕生日おめでとう」です。

-3さいになったよ(2018年)-

今まで娘の成長を喜ぶ存在は我々親でしたが、3歳になれば自身が自分の成長を喜ぶことになるだろう。

そこで、3歳になったら「自分でなんでもできるぞ!」という合言葉の絵本を描きました。

当時好きだったコキンちゃん、あかちゃんまん、
そしてナガネギマン(渋い)
挨拶や食事、片付けや着替え、歯磨き。
今では当たり前でも、1つ1つが嬉しい成長でした。


誕生日当日、長女に渡すと「え?なんで〇〇(長女)がいるの!?わたしの本なの!?」と飛び跳ねて驚きました。

読み終えて「ありがとう!」と言ってくれた娘の顔は(パパも誕生日、こんなに楽しみだったんだ)と理解しているようにみえました。


■ 2019年

そうなれば、下の子達が黙っていません。
翌年は、二女・三女の誕生日絵本を描きました。

-二女ちゃんと三女ちゃんのおたんじょうび(2019年)-

最初の年は妻にも内緒で描いたので、妻も喜んでいましたが「少々教育パパっぽい」という指摘を受けました。そこで、2作目の脚本は妻が担当。

家族と大好きなキャラクターたちが誕生日パーティを開くというお話です。

料理チーム!
双子(二女・三女)は2歳。
3人で一緒に遊べるようになった頃でした。

こちらも誕生日に渡すと二女・三女がとても喜びました。

そして、言いました。

「1冊、足りないね」


■ 2020年

姉妹の誕生日を描いたものの、双子を1つに集約してしまったため、ケンカになるとのこと。

そりゃ、そうだ。

誕生日、誕生日と続けてきたテーマ。
3作目は、ファンタジーにしました。

子どもたちは、ソフィアというキャラクターが好きです。

普通の女の子がある日プリンセスになり、歴代のディズニープリンセスに出会いながら成長するお話です。

そこで、三姉妹もプリンセスになれる絵本を描きました。

-まほうにかけられて(2020年)-
急に現れた3人の妖精。
同じトリオなので、いろいろサービスしてくれるようです。
なりたい職業やお姫様へ変身する魔法をかけてくれました。
お姫様になって好きなキャラクターたちとダンス。

3年目、これで1人1冊揃いました。

嫁入り道具ができたぞ~と満足していたところ、
こんな声が聞こえてきました。

「来年は、どんな話かな?」


■ 2021年

4冊目。長女が幼稚園を卒園する年でした。
親になって気付いた、幼稚園という存在の大きさ。

幼稚園の思い出は、親が子どもに伝えていかなければどんどん薄れていくだろう。先生の名前、組の名前、やったこと、頑張ったこと、楽しかったこと。

卒園アルバムが園目線のプレゼントであれば、
絵本は親目線でのプレゼント。

そんなコンセプトで描きました。

-ありがとう、ようちえん(2021年)-
幼稚園で過ごした4年間。
名前や景色、行事、思い出。詰め込みました。
最後は身長の記録。

同じ園に通う双子もこの絵本はお気に入りです。
そして、言いました。

「来年はうちらの卒園の本だね」

いいえ、違います。
あなたたちは卒園までもう1年あるよ。
だから、あと2年は描かないとね!


■ 2022年

今年のテーマは「面白い絵本」。

去年は長女の思い出絵本、来年は双子の思い出絵本の予定。
だから、今年は楽しさメインです。

最近、おもちゃがよく無くなります。実はそれは寂しがり屋なおばけの女の子「ひゅるる」が隠していたようです。取り返すには、おばけのクイズ大会で全問正解することが条件。がんばれ三姉妹!!

おばけからのしょうたいじょう(2022年)
おもちゃがよく無くなる。
その原因はオバケだった!?
おばけがおもちゃを使ってクイズを出してくる!
全部答えると、おもちゃを返してくれるそうだけど……
本当は一緒に遊びたかっただけのおばけたち。
最後は、とても仲良しになりました。

小学生になった長女の影響で、勉強やクイズの絵本に興味をもった姉妹たち。

絵本に詰め込むものもキャラクターから、幼稚園の先生、そして、クイズや知識に変わっていきました。

今年も無事、繁忙期前に中身が完成!
あとは、表紙のみ(なにを入れこもうかな)。


■ 絵本を描くこと

・ 創作は、詰め「込める」作業

絵本作りは、趣味です。

子どもへのプレゼントとはいっても、絵本を作るために、妻や子どもとの時間、仕事に影響がでるのは本末転倒。

だから、制作は決まって家族が寝静まった後。

20ページしかない絵本なので、本気で描けば一週間でできるかもしれませんが、半年前からゆっくりゆっくり進めています。

この「ゆっくり進める」のが好きです。

絵本を描くことは、込めたいものを想像する作業。
それって家族を思う時間なんですね。
そんな作業が長続きするから、急ぎません。

・ 汚されても

絵本は、他の本と一緒に本棚に入っています。

(ノラネコぐんだんとピザやさんの間にいますよ!)

もう、100回以上は読んでくれたと思います。

仕事から帰り、手作り絵本が出しっぱなしになっていると「片付けなー!」と叱りつつ、心の中でガッツポーズ。

一度、子どもたちが喧嘩をして、絵本を汚したことがありました。

ケンカした相手がすぐ分かる汚れ方。
(なぜ、その場にいなかった私も汚れているのか 笑)


私はいつかこういうことはあるだろうと思っていたので「あちゃー」という軽い反応でしたが、子どもたちには相当刺さる出来事だったようです。

似顔絵を汚すこと。それが残ること。
この落書き以来、手作り絵本だけでなく本を汚すことはありません。

落書き自体はいけませんが、結果、この絵本に新しいストーリーが生まれたなと思っています。

このページを開くたび、3人が喧嘩している様子が浮かびます。
その映像は、落書きをしてしまった頃の5歳と3歳の3人のままです。

大きくなったね。


■ あとがき


私は、良い父親ではありません。
娘たちもパパLOVEではありません。

休みの日に家にいるとうっとおしがられる父親で。
食卓では、毎回、パパの隣に座りたくないとケンカする娘たちで。

年に一度の絵本で起死回生なんて甘い、甘い。
最も大切なことは「日頃」です。
私の日頃は、かくかくしかじか……。

でも、「良い父」でなくても「父」です。
多くの人に伝えられなくても、娘たちには伝わるものが作れます。
絵でも、歌でも、おもちゃでも、料理でも、お話でも。

私はその気付きをお義母さんの絵本から頂きました。
「父」としての自信を無くしていた時に、絵本の「あとがき」を共感から実感に変えました。

この投稿は、そんな「あとがき」のバトンです。



#創作大賞2022


(関連note)

#子育て #つくってみた  

この記事が参加している募集

つくってみた

お読みいただき、ありがとうございました。 FB:https://www.facebook.com/takayoshi.iwashita ㏋:https://ibc-tax.com/