税理士として、市の「監査」に携わる
今年度から、高崎市の「包括外部監査補助者」を担当しています。
包括外部監査とは、公認会計士等の専門家が毎年テーマを決めて外部の目で地方公共団体の「監査」を実施するものです。
「監査」という仕事は、公認会計士が専門です。しかし、様々な知見が必要なため、高崎市の場合は代表が会計士、補助者に弁護士1名・税理士1名・会計士3名の6人体制で外部監査を実施しています。
会計士と税理士の違い。それぞれ会計の専門家と税務の専門家ですが、税理士は企業の税金の計算上、会計学の知識が必要です(そして、同じく会計士も監査を行う上で税務の知識が必要です)。
私はよく職業説明会で学生に「野球とソフトボール」のようなものだと伝えています(どっちがどうってわけでなく)。
オリンピックでは男子が野球、女子がソフトボールとなるように、外から見れば同じカテゴリー(会計専門職)。でも実際、中でやっている人はそれぞれ違う。
例えば、税理士は取引発生からお客様と共にいます。スタート時点から決算、申告まで伴走しながらコンサルティングする仕事。会計士はゴール地点で待っています。決算等に関連する資料を監査することでその内容を保証したり、その知見を活かしてコンサルティングをする仕事。単にチェック係というのではなく、決算書は今期のゴールであり、翌期のスタートでもあります。株主だけでなく企業の会計・経営をよりよくするために重要な仕事です。
バットでボールを打つという点は同じですが、上から投げるのか、下から投げるのかで大きく違うように、会計に関する手続きや知識は「同じなんだけど違う」という関係です。
さて、そんな私が先日、外部監査の仕事を通じて、とある研修の講師を担当しました。
その名も「都市監査委員会事務局職員研修会」。
税理士が「監査」の現場の皆様へ講義することになりました。
これは「社会人野球チームにソフトボールの監督が臨時コーチとしてやってきた構図」です(伝わりますかね?笑)。
本業のソフトボール(税務)の話をするか?
いや、そればかりではミスマッチだ。
では、従事し始めた野球(監査)の話をするか?
いや、堂々と言える知見はないぞ。
ということで私は広いテーマで、会計専門職の根幹にある「会計学」のお話をしました。
単に会計学ではピンボケなので、都市監査委員(県内の各市役所)の職員の皆様が担当する「公会計」の世界を、私が普段担当している「企業会計」の世界と照らすことで検証してみようというテーマです。
企業会計の世界では、リーガルチェックは弁護士、税務会計は税理士、監査は会計士とそれぞれ専門家がいます。各々の事務所で勤務する社員もその業界の知識を有している方が一般的に雇用されています。
一方で、市役所の場合、事務局の皆様は異動されてきた方々。法務や会計についての知識は手探りの方も多いでしょう。チェックリストや先例を基に仕事を学ぶのは効率的ですが、やはりその背景に会計の知識が無ければ本質的な業務は難しいかもしれない。会計の教養を高め、日頃のお仕事に活かしてもらいたいというお話をしました。
大学生の頃、会計士と税理士どちらを目指すかという選択で、私は税理士を選びました。当時、「監査」という仕事に誤解があったためです。なぜ企業をサポートする、コンサルティングをする仕事に就きたいのに、チェック側に入る必要があるのだろう…と。青いですね。。
しかし、昨年から今年にかけて監査の研修をたっぷり受講し、実際に監査の仕事に携わってみるとその大変さ、役割、そして魅力が分かりました。現在、市の各種事業の監査を行うにあたって「単に専門家としての目線だけでなく、住民目線を使う」という方法で従事しています。監査することで、今までとは違う「税の使い道」についての見方を手にすることができたと実感しています。
そういえば同じく大学生の頃、よく村上春樹を読んでいました。最近またハマっていて、寝る前にちょこちょこ読んでいます。
監査のことだけでなく、最近は新たな学びが多く。新しい物事に触れ、気付き、物事の見方が変わってくるという潜在意識が読みたい本の趣向にも表れているのかもしれません。
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