高齢者医療と仏教

仏教の根本思想に、四諦と言うものがあります。苦、集、滅、道です。「諦」というのは、物事の本質を明らかに知ると言うことです。

これを高齢者医療に当てはめて考えると、こうなります。



今、死にゆく老人がいます。家族は、何とかして助けてくれと言います。その為には喉に穴を空け、管を付けても良いと言います。胃に穴を空けて栄養をチューブで通してくれと言います。まさに生老病死が理であることを知らず、迷って苦しんでいるのです。これが苦諦です。



その苦しみの原因はもう死期が来ているのにそれを悟らず、もっと生かせたいという妄執に囚われているからです。いつまでもその人と一緒にいたいという愛執に囚われているのです。このように妄執、愛執などの執着の集合によって苦しみが生じることを理解する、これが「集諦」です。



そこで私は家族にそういうことをすると如何に本人が苦しむか、どんな酷いことになるか実例を持って説明し、その人がこれ以上手を下すべきでない寿命の状態であることを納得させます。妄執が滅する「滅諦」と言うことになります。



執着を理解した家族は最期までその人に寄り添い、その人が例え言葉を発せられなくてもその人と語らい、動けないその人の世話をする、つまり正しい行いを実践することでその人と満ち足りたお別れが出来ます。これが医療における「道諦」です。



お寺で説く四諦とはだいぶ違うかも知れませんが、私が日々働く高齢者医療の現場における四諦とはこう言うものです。

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