「生活習慣病」というのはもう止めよう、最終回「コレステロール」

さっき第二回の糖尿病をアップしたばかりですが、今日は時間に余裕があり、次に余裕があるのはいつになるかまったく分からないので、一気に最終回「コレステロール」に行っちゃいます。

いきなりスネイプ教授宜しくすらりと答えます。

「健常な日本人に於いて、ただLDLコレステロールが高いと言うだけでそれを下げる臨床的根拠は、不明確である」。

そうなんです。コレステロール、しかも悪玉と言われるLDLコレステロールが高いというそれだけの状態の日本人に対し、LDLコレステロールを下げると何かメリットがあるのかというのは、臨床治験でははっきり証明されていません。欧米人は話が別です。欧米人対象の研究はたくさんあり、LDLコレステロールは下げるべきだという結論で一致しています。しかし欧米人と日本人はそもそも心血管病変の発症頻度が違うし、日本人にそのまま応用してよいかどうかは分かりません。

例外を述べておきます。過去に心筋梗塞や脳梗塞をやった人。これはLDLコレステロールを下げるべきです。それには臨床的根拠があります。2018年にピタバスタチン(商品名リバロ)を冠動脈疾患、つまり狭心症や心筋梗塞を持つ患者に対して投与した場合どの様な効果を持つかという研究が発表されています。この研究ではリバロ4mgをこうした患者、つまり狭心症や心筋梗塞を起こしたことのある患者に使うと、1mgの少ない量のリバロより心血管病変の再発を減らしたそうです(Isao Taguchiら、Circulation 2018)。しかしこの研究はあくまで既に狭心症や心筋梗塞を起こしたことがある患者だけを対象にしています。高コレステロール血症一般では無いのです。

しかも、この研究のデータをもう一度解析し直したという2022年、つまり去年の論文では、LDLコレステロールの中でも分子量の小さい(small dense)LDLコレステロールというものがLDLコレステロール全体の量とは関係なく心血管病変に関係していて、リバロはそういうコレステロールが多い人に於いて(かつ心血管病変を元々もっている人で)再発を減らしたというのです(J Atheroscler Thromb. 2022 )。

ちょっと待ってくれと言いたくなります。一般臨床で測れるのはLDLコレステロールまでです。Small dense LDLコレステロール(なんだか舌を噛みそう)なんてものは測れません。そう言うものが高くないと、リバロの効果は明確じゃ無いのか?じゃあ臨床で測っているLDLコレステロール価には意味があるのか?

如何にも歯切れが悪い論文であります。まあそれはそうとしても、心血管病変、つまり心筋梗塞や狭心症をやったことがある人にはリバロなどコレステロールを下げる薬は使います。一応データがありますから。しかし、そうではない人までLDLコレステロールを下げるべきかどうか、日本人のデータは無いのです。

では結論。高コレステロール血症が生活習慣に関係しようがしまいが、ただLDLコレステロールが高いと言うだけの日本人を治療するメリットは、証明されていません。以上でした。 https://www.ayumino-clinic.com

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