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いつも胸にあの歌を抱いて

ポケットビスケッツをご存知でしょうか?
多分アラサー世代には懐かしいと感じる名前だと思います。

今から20年くらい前に放映されていた「ウッチャンナンチャンのウリナリ」という番組の企画から生まれたユニット。ライバル関係にあるブラックビスケッツも同じくらい人気を博していましたが、私はポケビが好きで、番組内で対決する時はいつもポケビを応援していたのを覚えています。

大人になった今でも、たまにポケビの曲を聴いて自分を元気づけていたりします。
どの曲もメロディーも歌詞も素敵で、有名な「YELLOW YELLOW HAPPY」や「POWER」は勿論、その時の気分によってはロック調の「Red Angel」やしっとりとした「Violet Moon」をよく聴いていたりします。

好きになった理由には、当時の幼かった私の好みどストライクなビジュアルの可愛らしさもありましたが、1番はその歌唱力に惹かれました。メロディーに合わせたポップな歌声が、サビになるにつれてパワフルになっていくところがとても格好良かったのです。



どうしてこんな話題を書いているのかというと、職場の同僚とジェネレーションギャップについて話していて、少しノスタルジーになったのです。
同じ20代でもミレニアル世代とZ世代の間には壁があることを知り、特にゴールデンタイム時に観ていた番組の違いに衝撃を受けました。

「名探偵コナン」や「犬夜叉」が夜7時に放映されていた月曜日。

「伊東家の食卓」や「学校へ行こう!」で取り上げられたゲームが翌日の学校で盛り上がっていた火曜日。

「はねトび」→「トリビアの泉」→「ワンナイ」→「ココリコミラクルタイプ」という神ラインナップで過ごした水曜日。

「ミリオネア」のハラハラドキドキと「うたばん」の緩い感じが好きだった木曜日。

「ぐるナイ」や「ウリナリ」が子どもたちの花金代わりだった金曜日。

土8は「めちゃイケ」か「USOジャパン」かでクラスが割れたけど、日テレのドラマや「エンタの神様」でまた1つに戻った土曜日。

「笑う犬」や「ブラバラ」で笑いながら明日が憂鬱になっていた日曜日。

「大好き5つ子」や「キッズ・ウォー」が夏休みの定番で。

風邪を引いて学校を休んだ時はNHKの教育番組や「いいとも!」、昼ドラとか観てちょっと贅沢な気分を味わったり。

私の世代の黄金期。これらのほとんどがもう若い世代の間では知られていない過去の存在になっていたのです。

確かに今の流行についていけていない自覚はあったのですが、反対に過去のものがもう伝わっていないことを認識し、もう私もそんな年齢なのかと実感させられました。歳をとるって怖い。



そんな話をした日の帰り道。
ふとポケビのことを思い出したのです。
記憶に残る中で一番最初に観たバラエティー番組。一番最初に応援していた歌手。今でも大好きなユニット。
私が初めて欲しいと思ったCDもポケビだったことを覚えています。


昔、住んでいた家の近くにTSUTAYAとレストランがありました。
当時、単身赴任していた父親が家に帰ってきた際は、レストランに行って好きな物を食べるという習慣がありました。父は帰ってくるペースがマチマチなので、あまり家族揃っての遠出ができない代わりに、この外食が家族サービスになっていたのだと思います。
その帰りには隣に建っていたTSUTAYAに寄って、気になるビデオやCDを借りて行くというのが外食の〆になっていました。

ある日その習慣に倣って、帰り道にTSUTAYAに寄りました。ちょうど入り口を入ってすぐ、8cmシングルがワゴンの中にギッシリと詰められて売られているのを見つけました。
ワゴン内のものはほとんどがあまり人気のなかったものや知られていなかったもの、流行りが過ぎてしまったものばかりで、当時の私は音楽に興味がなく、ワゴンセールは素通りすることが多かったです。
でもその日はなんと無しにワゴンの中を覗いてみました。するとその中に、ポケビの「POWER」があったのです。私は迷うことなくそのCDを手に取りました。もしかしたら他のシングルもあるかと思い探しましたが見つからなくて、でも、たった1枚のこの出会いが嬉しくて、親に買ってもらっていました。

すごく懐かしい幼少期の思い出。
昔のことを振り返ると肌がむず痒くなるくらい、思い出したくない過去の方が多いんですが、この時の記憶は私にとっての宝物。
ラジカセにCDをセットして、飽きるまで何度も繰り返し聴いていました。可愛い歌声とサビの大人びた高音。この声がたまらなく好きでした。
いつか千秋さんみたいになりたいなーと思ったこともありました。

そんな小さな頃から数年後。思春期を迎えていた時分。私はこの頃自分の声にコンプレックスを抱いていました。

私の声質はアニメ声に近く、その頃反抗期真っ只中でもあった私は母親譲りの高音がとても嫌いでした。中性的な声やハスキーな声に憧れるようになり、わざと喉を締め付けるように声を低くしていたこともありました。これも数多くある私の黒歴史の1つ。

でもそのコンプレックスを受け入れられるようになったのも、千秋さんの声のおかげ。
その時もたまたまポケビの曲を耳にすることがあって、艶めいた高音が格好良く聴こえたのです。そこからは元の声に戻すようにしました。幾年か後に両声類というジャンルに興味を持つのはまた別の話。
今思うと自分ってすごく単純だなーと思うのですが、やっぱり憧れとか好きであり続けているものの影響力ってすごいんだと思います。何年経っても自分の中でいつまでもキラキラと輝き続けているのだから。


今でも私はポケビが好き。

千秋さんの愛くるしい格好や声は勿論のこと、その天真爛漫な明るさがチャーミングで好きでした。時には嘘泣きしたり、核心をつくような歯に衣着せぬ発言をしたりしますが、そこもとても面白くて好きでした。
また、応援してくれるファンのためなら、解散やCD発売を賭けた勝負の時はいつだって身体を張って全力で立ち向かう。お蔵入りになってしまった歌を復活させるために署名運動を全国各地で展開する。その懸命に努力する姿に心から惹かれて、今もずっと千秋さんのことを応援しています。

そんながむしゃらに走る女の子を、芸人2人がその背中を押して支え合っていくところもとても素敵でした。
最初は楽器演奏なんてエアーでコーラスとダンスだけだったはずなのに、気付いたらピアノとかギターとかを覚え始めて、ソロパートも任されているようになっていたり、メインボーカルを務めていたり……。
番組の企画で誕生したユニットでも、一切手を抜かずにやり遂げるテルさんとウドさんが好き。チームを引っ張り続けるテルさんのリーダーシップやムードメーカーのウドさんの純朴さが千秋さんの支えになっていたんだと思います。

どんな時も一緒に笑って、一緒に泣いて、諦めずに全力で駆け抜けていく姿が好きでした。多分これからもずっと好きであり続けるんだと思います。



時の流れは早くて、今は鮮明に残っていても、いつかはぼやけて消えていってしまう。
たとえ思い出せても、その時の熱情に胸が焼け焦がされそうになる。もうあの頃に戻れないという痛みが怖くて、見て見ぬふりをしてしまうこともある。

これから先、好きなものがもっと増えていく。
失いたくないものがもっともっと増えていく。
色褪せる記憶に哀しくなることがたくさんある。

でも忘れないでいたい。
心の底から応援していた人たちがいたこと。
偶然から生まれた出会いがあったこと。
ずっと好きであり続けている歌があること。


今日はちょっとばかし強いお酒を飲もう。
この感傷に浸るには、まだ私には早すぎた。

好きなものはずっと好きでいたいねっていうお話でした。

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