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1/7 生まれて、喜んで、躍って、尽きて

あああーああーああ。チョコレートの箱、開けたら何が見えるかな。

横浜で多少なのだが髪を切って思ったのだが、横浜にはほとんど雪は残っていなかった。まあこれは繁華街だからってのはあるんだろう。おそらくは渋谷も新宿も池袋にももう雪は無いはずだ。逆に言えば横浜でも住宅街に入れば雪は残っているのだろうね。


さ、遅めの帰宅だ。練習を終えて少し居酒屋で飲み、といっても店に入った時間が遅かったので僕は30分少々しかいなかったのだがね。もっとも騒がしい店は得意じゃなくて、だからこそ店を出た後の冬の街の沈黙が美しく聴こえるのかも知れない。煙草飲みならここで一服するのだろうが、生憎僕のポケットにはリップクリームしか入っていなかった。

電車に乗って家を目指す。終電はまだあったのだが、最寄駅は目指さずに少々離れた駅から自転車を借りて帰ることにした。総武線に乗り、秋葉原で山手線へ乗り換える。まばらな乗客と同じくしてシートの座っていると足元にスーパーボールが転がり込んできた。誰かの落とし物なのか、車両の揺れに合わせてスーパーボールは車内を駆け巡る。僕はその様子が面白くてずっと目で追っていた。金曜の夜、疲れ切った人々を嘲るようなそれが面白くて、かつ魅力的に見えた。やがて僕はそれが欲しくなる。転がるタイミングに合わせて踏みつけてやろうとするのだが、なかなか上手くいかない。僕の足元には来ないのに、他の乗客の元へは簡単に転がり込む。彼らはスーパーボールに見向きもしないのにね。求めれば追うほどに逃げていく寸法ということだ。

やがて僕はそれへの興味を失った。ただただ自堕落にiPadを眺めていた。気がつけば次が降りるべき駅だ。そう思っていた刹那、それはちょうど足元に流れ込んできた。僕はすかさず足をあげ踏みつける。それを手に入れることが出来たのだ。もうそれのことを忘れていた頃合いだった。欲望は追うほどに逃げていく寸法というのは、あながち嘘ではないのかも知れない。

車内を転げ回っていたそれは埃と砂に塗れていた。平たく言えば薄汚れていたと言うべきだろう。こんなのもを追い求めていたと思うと少しだけそれへの興味が引いてしまったが、同時に愛おしくも思えた。理由は分からない。改札を通りレンタルサイクルのポートを目指す。途中に川があったので、そこへ向かってそれを放り投げる。描かれるはずの放物線を暗闇が隠し、僕の手を離れたそれは一瞬で姿を消した。が、すぐに飛沫が上がる。わずかな時間だったが、それと過ごした時間は悪いものではなかった。

自転車を漕ぐ。漕ぐ。漕ぐ。雪が降った日の次の夜の風は冷たいが、不思議と寒さは感じなかった。寝静まった街は美しい。理由を説明するのは難しいが、とにかく美しいのだ。

気がつくとイヤホンから流れていたラジオが途切れていた。携帯が寒さでダウンしたのだろう。僕の携帯はの液晶は半壊していて、いよいよ壊れようとしているのかも知れない。ただまあ正直なところを言うと、文章を書いたり連絡をしたりはパソコンで事足りているので、携帯が壊れかけているのはなんら問題はないのだ。なのでまあ壊れて使い物にならなくなるまで使ってやろうと思っている次第だ。

イヤホンを外し夜の街を聴く。静かだ。駅前から移動して住宅街まで来ていたので、本当に静まり返っていた。誰もいない。誰も喋らない。そんな街。動いているのは僕一人。何かを呟きながらペダルを漕いだ。何を呟いていたのかは分からない。記憶に残らないような類のものだったのだろう。それでいい。その時の言葉はその時の僕の為だけの言葉で、過去にも未来にも存在しない言葉。それってすごく素敵なものだな。書いていて少しだけときめいてしまった。そう思えば記憶に残らないものというのは、その時の自分の為だけのものなのかも知れない。

ただ一つだけ覚えていることがある。それは”こう言う時に人は小説を書きたくなるんだろうな”ということだ。だから書いている。小説なんて呼べるほどの代物では無いが。しかしまあ指は勝手に動き出す。止まらず止まらず。だからこうして書いている。明日の為に早めに休息を取るべきなのだが、指が動くから仕方ない。衝動。


というわけでアウトヘッジ前日のインセイン日記でした。インセイン組零号ってことね。自分で自分を噛み砕いで紹介するのは恥ずかしいし、それに毎日の思日記が自己紹介の代わりになっている。それにまあ他のメンバーと比較すればインターネットには僕の情報も落ちている。だから僕にしか知り得ない経験の話をするのが一番いいのかなと。ま、とにかく明日は楽しみたいな。上手く行こうと行くまいと、全力でステージの上で喜びを浴びることが出来れば万々歳だ。そう、僕は喜びたい。ステージの上で肉体中をアドレナリンが駆け巡り、血液が沸騰する感覚。手足が震え喉が枯れていく感覚。苦しみに近いものが僕を昂らせ、変え難い喜びへと導く。

生まれて、喜んで、躍って、尽きて。さあ、愛を語ろうか。


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