これからの日本がインフレ経済になっていく構造的な理由
これからの日本経済は、インフレ経済になっていく見込みです。
政府・日銀もインフレ経済に誘導するような政策を次々に打っている状況ですし、今後も打ち続ける見込みです。
なぜ政府・日銀はデフレ経済ではなくインフレ経済が望ましいと考えているのでしょうか?
それは、日本社会で最も人口ボリュームが多いがゆえに政治力を持っている団塊の世代の高齢者がそれを望んでいるからです。
なぜ団塊の世代の高齢者はインフレ経済を好むのでしょうか?
それは団塊の世代の目下の関心は、年金制度の維持だからです。そしてそのためには、日本経済が成長をして税収を増やし、財源を確保する必要があるからです。
経済成長するためには、物価上昇2%程度のゆるやかなインフレが理想的な状態であるというのが経済学の通説です。
このインフレを維持していれば経済が成長し、税収が増えるというのが基本的な経済の考え方です。
団塊の世代の年金受給高齢者は、このゆるやかなインフレ状態を実現することによる経済成長により、自分たちの生活が豊かになることを望んでいます。
ここまで読むと団塊の世代の高齢者は、経済成長を望んでいるからインフレ経済を好むと理解できます。
ではなぜ、これまでの日本はインフレ経済ではなく、経済成長をしないデフレ経済だったのでしょうか?
経済成長をするのだからデフレ経済よりインフレ経済の方が良いに決まっていると普通は考えますよね?
その理由は、これまでの日本は団塊の世代が勤労者世代だったからです。そして、勤労者世代であった団塊の世代が最も関心があったのは自分たちの雇用の維持だったからです。別の言葉でいうと、自分たちの正社員特権の維持だったからです。
団塊の世代の正社員特権の維持のためには、インフレ経済よりデフレ経済がより適していました。
だから、団塊の世代が年金受給者世代になるまでは、政府・日銀は積極的にインフレ政策をとろうとしなかったのです。
デフレ経済だとなぜ正社員特権の維持に都合が良かったのでしょうか?
それは、デフレ経済だと企業は賃上げすることができないため雇用が流動化しないからです。「雇用が流動化しない=正社員としての雇用されている状態は安定」ということになります。
逆に、インフレ経済だと賃上げできる企業と賃上げできない企業が出てくるため、転職するインセンティブが強く働き、雇用は流動化します。すでに正社員の職を得ているからと言ってその職は安泰ではありません。もし賃上げできない企業に勤めている場合、インフレ経済だと物価は上がるため同じ額面でも相対的に給料の価値が下がってしまうからです。
このような形で、デフレ経済は団塊の世代の正社員特権維持に都合が良かったため、団塊の世代が勤労者世代だった時はデフレ経済が好まれたのです。
そして、団塊の世代が引退して年金受給者となると、もう正社員特権の維持には興味がありません。興味があるのは自分たちの年金制度維持です。
このため、デフレ経済からインフレ経済へと(団塊の世代の)世論は大きく傾くことになりました。
先日記事を書いた住宅ローン金利が今後は上がるであろう理由も、この文脈のなかから理解できます。
これまで団塊の世代が勤労者だった時は、住宅ローンの変動金利が上がることなどあり得ませんでした。
しかし今は団塊の世代はもはや勤労世代ではないため、変動金利住宅ローンが上がっても全く問題ありません。
自分たちの年金制度維持のためには、例え金利が上がろうともインフレ経済の方が好ましいからです。
以上のような構造的な理由により、これからの日本はインフレ経済になっていくでしょう。
これまでの30年間全く経験してこなかったインフレ経済において、どのように立ち振る舞うべきか、勤労者世代は真剣に考える必要に迫られていくでしょう。
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