大阪万博と社会的合意形成
大阪万博がやってくる。2025年だ。もうあと3年を切った。
テーマは、「いのち輝く未来社会のデザイン」で、「未来社会の実験場」になるんだという。
様々な技術がアピールされ、きっかけをつくるんだといいいます。
2025の大阪万博では、「IoT(物のインターネット)、AI(人工知能)、ロボティクス、ビッグデータ、バイオテクノロジーといった技術により様々な地球規模の課題が解決される社会」がSDGsにも合致しているとし、これらの技術のアピールの場だと定義しています。
きっと、ロボット技術やAR、AIなどを実感できる展示が人々の関心を高めることはまちがいありません。
大阪パビリオンの「未来の医療」の展示室
技術と実装の競争
一方、先日バーミアンにいってびっくりしたことがある。普通に配膳ロボットがそこらじゅうを闊歩しているではないか?
2021年夏の実証実験を経て、続々と「入社」しているんだという。
大阪万博を経て実装されるのかとおもっていた技術が意外なはやさで社会実装されている。
技術が社会を変えるのではなく、社会が人材不足、人件費削減という課題解決の必要性から、技術を積極的に導入しているという事象だ。
じゃ、大阪万博が必要ないのか、というとそういうわけでもない。
万博は人々のやる気を引き出す
私の会社水辺総研は自動運転船プロジェクト「海床ロボットプロジェクト」のコンソーシアムの一員として、リスクテークパートナーとなっている。
海床ロボットとは、都市型自動運転船で運河や河川、池、湖などで使われることを想定した。
https://umidokorobot.com/about.html
このプロジェクトは2017年からスタートしているが、2019年に大阪商工会議所の「2025年大阪・関西万博の会場である夢洲における実証実験の公募」で採択されたことをきっかけに、飛躍を遂げた。
正確に言うと、これは万博での出展を約束されたものではない。あくまで、夢洲での実証実験に参加できる(それが万博の会場だった)というだけで、万博そのものとの関係は希薄であるが、万博と書いてあるし、大阪商工会議所が万博を盛り立ててきたこともあり、関係ないとも言い切れない。
その万博という打ち上げ花火が、多くの人々の気持ちにひびき、海床ロボットの取り組みを推進する起爆剤になったことはまちがいないのである。
海床ロボットの社会実装のみちのり
海床ロボットの社会実装のストラテジーは、既存の法体系、規制のなかでできる範囲でなるべく多くの実験や技術実証を行い、あわよくば事業化することで、次の時代の規制緩和を見据え、事業化の確度をたかめていく、ということである。
そもそも、社会実装をするためには、2つのポイントがある。事業環境を整えることと、サービスとしての実装である。
既存の事業環境では採算があわない、安全性が担保できないとしても、未来の事業環境下では事業として飛躍できる可能性がある場合、事業環境を整えることが、社会課題解決に意味があることをロビーしたり、社会的合意をはかることは重要である。
そのための事業環境を整えるための努力には、当然多くの人たちの賛同が必要不可欠である。
図中の矢印の飛躍のためには、小さな実験を繰り返したり推進側として努力をし、エビデンスを整えることはもちろん必要だが、合意はそれだけで図られるわけではない。そこに「大阪万博」のような未来をテーマにした発表機会はとてつもない効果を発揮するのではないかと思えるようになったのである。
私はもともと万博を小馬鹿にしていた。前世紀、前々世紀ならいざしらず、この時代に必要なのだろうかとすらおもっていた。しかし、万博がこれだけ多くの人々の合意をしやくすし、未来になにかことを起こすことの必要性の説明を不要とする出来事であるならば、その機会は最大につかったほうがいい。
わたしたちの未来は、常にこれまで合意ができてこなかった隙間の領域から発生するものだとすれば、万博はすばらしい合意形成チャンスである。
流域治水やグリーンインフラなども万博において社会合意が図られるならば、やったほうがいいし、世の中のあらゆる「総合的」で「分野横断的な」社会課題解決をはかるテーマは、万博でこそアピールがひつようではないだろうか?
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