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連携のこと

連携って簡単にいう。すごく大切な価値観であると同時に非常に難しい。

連携しなさい。協働しなさい、協奏しなさい。あらゆる領域で使い古されてきた言葉だ。でも、実は連携って非常に難しい。そもそも連携とは、と定義をしろといわれても、実は非常に難しいのだ。友達とはなにか、を定義するのが難しいのと同じだ。

私にとって連携とは、水辺をよりよくするために必要な手段だ。わたしという個人が、水辺を管理する主体や地域のステークホルダーとよりよい関係を築いて、水辺に関わって行くために必要な手段である。それが、結果として地域を魅力的にして、未来に価値をつなぐことができる。そして、経済をまわし、意味をつくり、持続可能な状態をつくり、文化となり、将来の礎となる。
だから、水辺をどうにかしたいと十数年前に思い立った時から、連携については考えてきた。私にとって根源的な問いだ。

連携はいろんな言葉に言い換えることができる。

連携の必要性はいろんなところで叫ばれてきたので、いろんな言葉で流通している。
「連携」「協働」「協業」「協奏」「イノベーション」「オープンイノベーション」「アクセラレーター」「コレクティブインパクト」「官民連携」「パートナーシップ」「コーポラティブ」「コワーキング」「アドホック」etc

市民参加の分野では、「ボランティア」もその言葉の本来の意味を差し置いて実は官と民の連携の一種だったし、「市民協働センター」みたいな協働も、そのなんとなく「ダサい」感じを除けば、連携をしたいという行政の意思表明ではあったのだろう。でも、その目的はなんだったのか?連携そのものが目的になっていたり、連携という状態をつくることが目的になって、本来達成すべき共通のゴールが見いだせていないことがほとんどではなかったか?

連携の真の目的

手段が目的化する、というのは世の常だ。目的をタイトルにした本がうれず、手段をタイトルにした本が売れるのと同じく、手段には人々を惹きつける何かがある。連携もそんなお題目だ。地方都市に行くと、あてもない迷宮に迷い込んだ市民ボランティアサロンをたくさんみかけるが、「連携という手段を実現する」というよくわからない目的を達成しようとしているだけではないか、と思う。

連携はあくまで目的を達成するための手段だ。その目的を達成するためには、それを達成するための意思が必要だ。意思は個人やチーム(組織)にやどるが、連携しているだけではチーム(組織)にはならない。

同じ人数を集めたところで、ルールや戦術、あるいはプレーする楽しさなどを共有しなければ、チームスポーツが戦えないのと同じだ。

目的が共有されていない連携がいかに多いことか。あるいはビジョンをつくったとしてもそのビジョンを実現して行くためのマネジメントができていない連携がいかに多いことか。

「連携という手段を実現する」という目的では、本来の目的にぜったい到達できない。

連携の意味が共有できない問題

連携を難しくしているのは、連携そのものの難しさではなく、連携する主体の意思決定の問題である。

どういうことか。連携するAとBがいたとして、AはAの目的を達成しようとし、BはBの目的を達成しようとする。そのなかでもA-B共通の目的を達成しようとした時に連携が本来生まれるはずである。
ところがその過程で必ず妥協が発生し、妥協の度合いで連携のオブリゲーションがうまれ、どっちがえらいのどっちがつらいのはじまるのだ。
妥協が発生した時にその妥協と発生するベネフィットを同じものさしで測れればまだいいが、一方でわかりやすい、例えばコスト、みたいな妥協点で、一方が社会的意義、みたいなベネフィットだったとして、ちがうものを天秤にかけなければならない問題が発生し、それを「意思決定する」人の裁量が試される。

ワンマン社長なら常にそういう裁量をしているが、多くの組織人はそういう裁量権を与えられたことがない。

そこで、連携にヒビが入る。連携の意味は、連携によるあらたなベネフィットを追求することのはずだが、ベネフィットだけではなく妥協も発生することに想像がつかないのかもしれない。妥協を超えた意味が共有されにくいのだろうか。

ここは、組織の昭和の高度成長期や生産性向上の成功体験が邪魔をしていると思うのだが、そのあたりはまた別の機会に。

目的を整理

連携の目的を整理することと、どのような手段で連携するかを整理すること。前者は連携する組織のリーダーがするべきこと。どのような手段で、は実務者がすべきこと。リーダー同士で目的を整理できれば、連携は優秀な部下が手段を構築できる。しかし、多くの連携の現場で、リーダーが手段を叫び、目的なき連携が構築されるのを見てきた。目的なき連携も、正しくフィードバックされていれば、目的が見えてくることもあるのだが、そこにもリーダーの意思決定とリーダーに正しい情報をもたらすチームの存在が不可欠だ。連携は、マネジメントが前提なのだと痛感する。マネジメントがうまくいっていない組織との連携ははっきり言って難しい。

そして、「連携推進チーム」としてのマネジメントが動き出してはじめて、はじめて連携が達成される。ミズベリング・フィードバックサイクルはそういう「連携推進チーム」のマネジメント手法として描いた。

18ミズベリングビジョンブックから、ミズベリングフィードバックサイクルの図



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