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5分で分かる絵画・最後の晩餐!特徴やダ・ヴィンチの凄さを解説

レオナルド・ダ・ヴィンチの傑作『最後の晩餐』。
この記事では、その特徴や傑作と呼ばれる所以を、芸術学部出身ライターが分かりやすく解説していきます。

『最後の晩餐』とは

レオナルド・ダ・ヴィンチ作『最後の晩餐』
  • 作家:レオナルド・ダ・ヴィンチ

  • 制作年:1495-1948年

  • 種類:テンペラ、壁画

  • サイズ:420 cm × 910 cm

  • 所蔵:サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院

この絵画には、聖書に登場する「最後の晩餐」の場面が描かれています。
キリストが「この中に裏切り者がいる」と12人の使徒たちに告げたシーンであり、同時にそれを聞いた使徒たちが驚いているシーンでもあります。

『最後の晩餐』の特徴

最大の特徴・ユダの裏切りの予告を描く

前述した通り、この絵画はキリストがユダという裏切り者の予告をしたシーンを描いた作品です。

絵画の『最後の晩餐』と言ったら、このダ・ヴィンチの作品を思い起こす方がほとんどでしょう。
しかし、「最後の晩餐」はキリストの一生を描いた絵画の中でもよく描かれる作品です。
つまりこの作品以外にも『最後の晩餐』と銘打った作品は数えきれないほどあるのです。
ですがダ・ヴィンチが描くまでは、裏切りの予告がされる前の晩餐会のシーンとして描かれていました。
ダ・ヴィンチはその前例を破って、「裏切り者の予告」のシーンとして人間の心理面を巧みに描いてみせたのです。

ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』(1495-1948年)
カスターニョの『最後の晩餐』(1447年 - 1450年)

ダ・ヴィンチとカスターニョの『最後の晩餐』を比べてみると、一目瞭然ですよね。

まずダ・ヴィンチとカスターニョの『最後の晩餐』の違いは、裏切り者であるユダの位置です。

前方に描かれたユダ

ダ・ヴィンチの絵が完成される以前は、「最後の晩餐」を描いた絵画ではユダは他の使徒と大きく区別され、誰が裏切り者なのか分かりやすく描かれていました。
カスターニョの絵画のユダも同様に、テーブルの手前に配置されて、分かりやすくなっています。

聖人を意味する光輪

また、カスターニョの絵ではユダ以外の人物の頭の上に聖人を意味する光輪が存在していることが確認できますよね。
ですが、ダ・ヴィンチの絵画には頭上に光輪は存在していません。
つまりダ・ヴィンチの作品は、ユダが一発で分かるような構図ではないのです。

裏切り者・ユダの拡大

その代わりにダ・ヴィンチはユダの体だけテーブルに預け、同時に顔の部分に影をかけることで、極めて自然かつ、ユダが悪目立ちしない方法で裏切り者を区別したのでした。
これらの表現はまさに「最後の晩餐」をテーマにした作品の革命でもあったのです。

こういった点が、ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』の最大の特徴であり、傑作と呼ばれる所以の一つとされています。

調和のとれた全体の構図

ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』は、動きがありながら、調和の取れた構図となっています。

キリストの頭上の光輪のような線

まずキリストの後ろにある窓に注目してみてください。
窓から光が差し、まるで光輪のような円を描いていますよね。
この表現によって、作品の中心がはっきりと示されることになりました。
キリスト自体も遠近法の消失点となっており、鑑賞者に奥行きを感じさせる作品となっています。

キリストの正三角形の構図

また、キリストの体の構図は安定性のある正三角形で描かれていることが分かるでしょうか。
この表現は鑑賞者に静けさや落ち着いた印象をもたらします
そんな落ち着いた印象を持つキリストとは反対に、周囲の人々は思い思いの格好をしており、使徒たちの困惑や驚きといった騒がしさが上手く表現されていますね。

全体としてはシンメトリーに描かれ、安定感がある構図となっています。
作品自体とキリストに安定感があるからこそ、静と動の比較によって他の使徒たちのざわめきがより強調されることになりました。

三人一組の構成

そんな使徒たちは12人いますが、それぞれ三人一組で描かれ、バランスよく均等な幅で描かれています。
使徒たちの動きがバラバラでありながら、作品全体に安定感がある理由は、使徒たちの配置にこのようなバランスがあるからなのです。

描かれた場所を活かした遠近法

ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』には、遠近法の一種である一点透視図法が用いられています。

一点透視図法:一つの定められた点に平行線群を集める図法のこと

この絵画における一つの定められた点とは、中心にいるキリストです。
それによって作品に遠近感が生まれているのですが、実はこれはただの遠近法ではありません。

部屋と一体化した『最後の晩餐』(Amazing TRIPより引用)

この作品が飾られている場所は修道院の食堂です。
つまり絵画に描かれた部屋と、絵画が飾られた空間が上手く混ざりあうような描かれ方がされているのです。
そのため正面から作品を見ると、部屋全体がさらに奥に広がり、修道院の空間全体を広く見せる効果をもたらしてくれます。
まさにこの『最後の晩餐』は、上記の写真のように修道院の食堂の空間と一体となる作品として作られたのでした。

こだわりの技法

ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』には、テンペラと油絵の混合技法が使用されています。

壁画は通常、絵が損傷しないようにフレスコ画で描かれます。
ですがフレスコ画には重ね塗りができず、短い時間で完成させなければならないという制約がありました。
ダ・ヴィンチは遅筆であり、そのような制限を嫌ってフレスコ画技法を使用しなかったのです。

まとめ-ダ・ヴィンチの凄さ

ここまでレオナルド・ダ・ヴィンチの絵画『最後の晩餐』の大きな特徴を簡単に説明してきました。

ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』の凄さは、空間・場所を活かした完璧な遠近法を用い、同時にバランスのいい全体構図を作り上げたことです。
また、裏切り者の予告のシーンを描くことで、それまでの「最後の晩餐」をテーマに描かれた作品の常識を覆す、革新的な『最後の晩餐』を生み出したという点も、ダ・ヴィンチの発想の素晴らしさを教えてくれますよね。

以上のことから、レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』が傑作と呼ばれる所以が、少しは理解できたのではないでしょうか。

最後に、この記事が皆さんのアートを楽しむきっかけになれば幸いです。

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