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#1 どこで生きるか

20年暮らした東京を離れ、鳥取へ行くと言ったとき、家族や友人の反応は一様にして
「どうして鳥取なの?」だった。
それは、自分でも自身に何度も問いかけた言葉だった。

社会人になってからはじめて実家を出て
約3年の間に4回引っ越しをした。
ずっと自分には居場所がないと思っていて、
地元が嫌いなわけではないけれど、
目まぐるしく変化する周囲についていくことが
難しかった。
中学生の頃も高校生の頃も、
ほぼ家にはいなかったと思う。
それは大学生の頃も、家を出て社会人になってからも同じで毎日自分が住んでいる町には
寝るために帰るだけだった。

高校、大学、就職。東京を出るタイミングはいくらでもあったはずなのに
心のどこかでは東京から離れて生きていくことができるのか勇気が持てなかったのだろうと今では思う。
自分が好きになった場所で暮らしたい。
その気持ちはずっと胸にあった。
何をして生きるとか、
将来何になるかということよりも
「どこで生きるか」
がその頃は一番大切だった。

地方に住みたいと思ったきっかけは、幼少期に山口県の祖父母の家で毎年夏を過ごした記憶が影響していると思う。
大きめの地方都市なので、今では開発が進み、かつて歩いた田んぼの跡地には大きなショッピングモールが建っている。
変わらないものなどないのだとわかってはいても、あぜ道をみんなで歩いた記憶は大人になっても忘れることができなかった。
本当はそういう風景の中で大人になりたかったのだ、と
ある時すとんと腑に落ちた。