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オカッテ

古民家で暮らしていた。家賃一万円。数年間の先取りセミリタイア生活。薪ストーブにスコッチ。満点の星空の下で焚火。山の湧き水のお風呂、そんなものに憧れていて自然の中で暮らした。

時々ふと思い出す光景がある。

山の上の知人の家。
オシャレに言うと、古民家のキッチンスタジオ。普通の人から見ると、ただ貧乏なだけ。移住者はほぼ訳アリ。
土間にキッチンの光景。玄関入ってすぐ簡易のお勝手がある。こじゃれた感じになっている。貧乏とセンスは比例している。
油、塩、酒、中華鍋で何でも作る。焼き芋を焼いただけなのに感動するおいしさ。素朴で細胞が喜ぶ味。遠赤だから更に美味しい。お湯でさえ、おいしい。ロケットストーブは年中稼働している。休み間なく働き続ける。ガスを引いてないから。キッチンにPCを置けば、たちまち、DJブースになる。Wi-Fi完備の山の上の古民家。ガスは引かないのに、Wi-Fiは引いている。わらっちゃう。台所がDJブースになる光景。センスの光るBGM。初めて聞く音楽。感性がそもそもいいのか。って思う。売れる音楽と感性の高い音楽は比例していない。
至福の時間。この世の楽園、僕らの秘密基地。自分たちの城。


自然は語りかけてくることを知った
自然は心のままに生きるものに近づいてくる


自然の何かをまだ私は掴んでいない
掴む前に街に帰ってきた
掴まないでおこうと決断したのかもしれない
掴まなくてもいい領域を知ったのかもしれない


いつも台所にいた友人
彼は今この時も台所にいるのだろうか



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